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異世界に転生したって『あたし、お天気キャスターになるの!』

なつきコイン

第54話 熱気球なの。

「お嬢様、今度は何を作られたのですか」
 スノウィがお茶を入れながらレイニィに聞いた。

「これは紙風船よ」
 レイニィは自分で作った紙風船をポンポンと叩いて打ち上げて遊んでいた。

「前回の反省を踏まえて、考えたのよ。矢張り飛んでいって龍の近くに行かないと話にならないと」
「ですが、魔法で飛ぶことは、エルダ様から禁止されていますよ」
「それは魔力が切れたら、落ちて危ないからでしょ。それなら、魔力が切れても落ちない様にすればいいのよ」
「そんなことできるんですか」
「見ててね。まず、この紙風船に魔力を込めて中の空気を温める。すると。この様に浮きます」
「流石に魔法は凄いですね」
「肝心なのはこの後よ。浮いたところで魔力を込めるのをやめます」
「浮いたままですが、魔力は使っていないのですか」
「そうよ。紙風船の中の空気が温かいうちは浮いたままなの」
 紙風船は段々と降りてくる。
「こんな風に、中の空気が冷えると段々と降りてくるのよ。これなら上空で魔力が切れても危なくないでしょ」
「確かにそうですね。でも、これに人が乗れますか」
「大きな風船を作って、それに人が乗れる様な籠を吊り下げるのよ。魔法を使わなくても、火を燃やしてやれば同じことができるけど、魔法を使えば構造が簡単にできるわ。その分軽くなるから、大きさも抑えられるわ」

「どのくらいの大きさが必要でしょう」
「そうね。この部屋の倍位の大きさでいいかしら。材質は軽くて丈夫で燃えにくい物がいいわ」
「それだけの大きさとなりましと、人を頼むことになりますが」

 スノウィも前回の反省を踏まえている様だ。自分たちだけでやろうとは言い出さない。流石に千枚の連凧作りは応えたらしい。
「それで構わないわ。アントを売った中から出しておいて」
「畏まりました」

 それから二週間後、熱気球が完成した。

「このでかいのが本当に飛ぶのか」
 エルダが熱気球の大きさに驚いている。
「大きいからこそ人を乗せて飛べるの」
「本当に大丈夫でしょうか」
 スノウィも心配そうだ。
「心配ないの。いざとなれば魔法で浮けるの」

「最初にレイニィだけで飛ぶなんて心配だわ。私も一緒に乗ろうか」
「試すには軽い方がいいの。お姉ちゃんが乗るとその分重くなるの」
「そう。私は重いのね・・・」
「お姉ちゃんは軽いの。重くないの」
「いいのよ気を使わなくても。重い私は地上で見守っているわ」
 ミスティは重いと言われて拗ねてしまった。

「それじゃあいくの」
 レイニィは、まず熱気球に風を送り込み膨らませる。次にその空気を温めていく。すると、ふわっと気球が浮いた。そしてどんどん高度を上げていく。

「やったの。成功なの」
「おー」
「凄いわ」
「大丈夫なのか」
「お嬢様、気を抜かないでください」
「大丈夫なの。少し空の散歩を楽しんでくるの」

 レイニィは高度を上げつつ、風魔法を使って気球の進路を変えていく。
「これは便利だわ。風魔法で行きたい方向に行けるし。速度も馬車より速いわ。これからは遠出の時はこれを使いましょう。
 そうなると目的地を見つけるのに望遠鏡が欲しいかしら。探索魔法があるからいらないか。でも、あれば便利よね。
 あ、地上の人がまるでアリのようだわ。
 高く上がり過ぎたかしら。そろそろ戻ろう」

 レイニィは大空の散歩を満喫し地上に戻った。

 その後、地上で待っていた四人を乗せて飛ぼうとしたが、ミスティが「私は重いから」となかなか乗ろうとせず、一悶着あったが、ミスティも含めて、五人でも問題なく飛ぶことができた。
 空の散歩は概ね好評で、特にミスティは「私は空が飛べる程軽いわ」と一転、上機嫌になった。

 熱気球は巷でも噂になり、連日、空が飛びたいという人の対応でレイニィは大忙しとなった。
 そして、それが一段落ついた頃には、秋も深まり、冬の足音が聞こえ始めていた。

 木枯らしに吹かれて、レイニィは思い出す。

「あれ?暴風龍は」

 その年の台風シーズンはすでに終わっていた。


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