異世界に転生したって『あたし、お天気キャスターになるの!』

なつきコイン

第34話 大熊と戦うの。

「先生、あっちの方から何か大きな魔力を近付いてくるの」
 レイニィはエルダから言われた通り、常に受動探索の練習をしていた。それに何か引っ掛かったのである。

「何ですって。・・・。本当だ。かなりでかい。これは大熊(グレートベアー)か」
「何だって、大熊だ。こんな街道沿いにいるわけないだろう」
「さっきのレイニィの探索魔法で、縄張りを荒らされたと思ったのかもしれない。向こうの森からこちらに向かって来ている」
「あんな遠くの森からか」
 アイスは遠くに見える森に目を凝らす。
「何も見えんが、ん。おー。森から何か出て来たぞ。でかいな」
「アイス、大丈夫なの。倒せる」
 スノウィが心配そうにアイスに確認する。
「いや、この人数では無理だ。逃げるぞ。お前達は馬車を守りつつ急げ」
 アイスは前後の騎乗した護衛に命令すると、御者にも全力で逃げる様に命令した。

「逃げきれそうか」
「どうだろう。相手の方が速そうだ」
「なら迎撃の準備をしよう。レイニィ。あんたも手伝いなさい」
「おい、お嬢様にそんなことさせられないぞ」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろう。それに、レイニィなら十分戦力になれる」
「元はと言えば、あたしのせいなの。大丈夫。頑張るの」
「お嬢様」
「お嬢様は絶対に守る」
「そうと決まれば、早速やるぞ。私の最大魔法を打ち込んでやるから、奴との距離を詰められないようにしてくれ。この魔法には時間がかかる。レイニィは奴の足止めを頼む。倒そうとしなくていいからな。無理はするなよ」
「はいなの」

(足止めと言われても、あんなでかいのどうするのよ。鎌倉の大仏位あるじゃない。
 取り敢えずやれる事をやるしかないか。
 発火だと動いている相手に狙いを定めるのは難しいし、竜巻受けても怯みそうにないわね。それならこれでどうだ)

「猛吹雪(ブリザード)!」

(クマだもの、冬眠するわよね。寒くなれば動きが鈍くなる筈)

「これは。もう夏だというのに雪だと。効いてるのか。少し距離が離れて来たぞ」
「お嬢様、効いてる様ですよ」
「畳み掛けるの。凍りつくの」
 レイニィはこれでもかと、魔法を重ね掛けした。

「樹氷(アイスモンスター)!」

 見る見るうちに大熊から氷が生えて来て、全身を覆う。全身を氷に覆われた大熊は動きを止めた。
 暫く動き出す様子がない。

「やったか」
「アイス。お決まりのセリフを言ったら駄目なの」

「グオー」

 大熊は大声で吠え、氷を砕いて再び動き出した。

「アイスのせいなの」
「え、何で、俺」
「駄目ですね。全く」
「スノウィ、何だと」
「そんなこと言ってる場合じゃないの」
「また、追いかけて来ましたね」
「くそ、こうなったら俺が囮に」

「お待たせ。もう大丈夫だよ」
「大丈夫って、どうするんです」
「ほら、あれ」
 エルダは空の上を指す。

「あれ?」
「何か光ってるの。って、こっちに落ちてくるの」
「何だあれ」
「私の最大魔法、メテオインパクト。みんな伏せて」

 ヒューーーー。ドッカーン。

 エルダの放ったメテオインパクトは、みごとに大熊に命中した。大熊は四散し、そこにはみごとなクレーターが出来ていた。

「無事倒せたみたいだな。よかったよ。
 この魔法、威力は絶大なんだけど、隕石の軌道を変えて、落ちて来るまでに時間が掛かるんだ。
 無事倒せたのも、レイニィが時間稼ぎをしてくれたおかげだな」
「そんな事ないの。先生凄いの」
 レイニィは喜んで、エルダを褒め称える。

「助かりましたし、凄いには凄かったですが。あの大穴どうするんですか」
 スノウィが冷静に突っ込んだ。

「私、もう魔力の使い過ぎで、動けそうにないから。もう寝る。
 後のことは、レイニィに任せた。魔法で埋めといて」
「え、先生、そんな」
 余程疲れたのだろう。レイニィが言い返そうと思った時には、既にエルダは眠り込んでいた。

 ともあれ、レイニィ達は無事大熊を撃退したのだった。


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