異世界に転生したって『あたし、お天気キャスターになるの!』

なつきコイン

第20話 魔術の先生なの。

 レイニィとエルダは場所を屋敷の応接室に移して、母親のウインディを交えて懇談をしていた。
 スノウィがお茶とお茶菓子の用意をする。

「エルダさんには、遠いところ、わざわざ来ていただいてありがとうございます。北の森から来たのですよね。随分と到着が早かった様ですが」
 北の森には、首都シャイン経由で徒歩なら二週間。街道を使わず、山道を行けば近道になり、徒歩で十日といったところだ。但し、山道はクマやオオカミなど危険な獣に遭遇する確率が高い。

「大魔術師の仮職(プレジョブ)を得たと聞いて、大急ぎで来ましたから」
「娘のためにありがとうございます」
「いえ、娘さんのためというよりは、自分の興味によるところが大きいですから、お気になさらず」
「そうですか」
「はい、大変興味深いお子さんですね、レイニィは」
「それは褒め言葉なのでしょうか」
「私にとっては最高の賛辞です」

「ねえ、お母さんとエルダ先生はどんな関係なの」
 どちらも言葉が堅いからレイニィは気になって聞いてみた。特にエルフは見た目で年齢がわからない。
「えーと確か祖母の大叔母でしたっけ」
「いや、私の姉の孫の従姉妹の娘ではなかったか」
「あー。遠い親戚なの」
 エルダは見た目少女だが、かなりの年配であることはわかった。
「まあ、そうね」

「先程魔法を見せてもらったが、魔力は操作できるのだな」
「いえ、魔法ができたのは二週間で、二回目なの」
「そうか、だが、魔力を集めることはできていたし、後は先ほどと同じように魔力を放出するだけだろ。ほら、こんな感じだ」

 バチバチ。
 エルダは両掌を肩幅に開いてその間に魔力を通した。
 魔力が静電気のように両掌の間で瞬く。

「え、それ、魔力なの。あたしがさっき放ったのも魔力?雷ではないの」
「雷も魔力だろ」
「雷も魔力なの。なら、魔力は電気なの」
「電気?何だそれは」
 エルダの答えにレイニィは考え込む。

(電気という言葉がないだけで、魔力は電気のことだろうか。雷が魔力だというならそうだろう。
 いや、待て、お姉ちゃんが前に鉄は魔力を通さないと言っていた。
 となると、魔力と電気つまり電子は別物。電気(電子)の代わりに魔力(魔子?)がある感じで、この世界に電気(電子)はない。
 それなら、私がいくら雷魔法として、電気(電子)を放とうとしても出来るわけがない。電気(電子)は存在しないのだから。
 逆に、魔力だと意識すれば簡単に出来るのではないだろうか)

 レイニィはエルダの疑問に答えもせず。両掌を開いて間に魔力を流す。

 バッチン。
 両掌が弾かれる。
「あいたたた」
「魔力を込めすぎだ。でも出来るじゃないか」
「さっきの話を聞いてコツがわかったの」
「さっきの話でコツがわかったのか。まあいいが。
 これからは力加減の訓練だな。何度もやって感覚で覚えるしかない。
 それが出来るようになったら、四属性魔法の勉強をするとしよう」
「四属性魔法?」
「火、水、土、風の四属性を操る魔法のことだ」
「ああ、炎の矢。とかいうやつなの」
 レイニィは左手を伸ばし右手を耳元に持っていき、弓を射るポーズをとる。
「レイニィは案外物騒だな。
 火魔法は火種を作ったり、ローソクに火を着けたり、生活に役立つものから覚えるものだぞ」
「はーいなの」

「それじゃあ、エルダさんも着いたばかりだから、今日はゆっくり休んでもらって、訓練は明日以降からにしましょうね。
 スノウィ。お部屋に案内して」
「畏まりました」
「それじゃあ、レイニィまた明日な」
「エルダ先生、また明日なの」
 エルダはスノウィに連れられ、応接室を出ていった。

 エルダが出ていくと、ウインディは思わず呟いてしまった。
「エルダさんが、もう一日早く着いていてくれればね」
「どうしたの、お母さま」
「いえ、何でもないのよ。レイニィは、エルダさんに魔法の力加減をよく教えてもらいなさい」

 レイニィは、母親の言葉で気付いてしまった。商人達の前でやり過ぎてしまった事に。
 そして、エルダがあと一日早く着いていれば、やり過ぎる事はなかったかもしれない事に。
 だからこそ、素直に頭を下げるのであった。

「はい、そうするの」


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