《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。
16-1.幼馴染みなんだし、信用してほしい!
「冗談はさておき、マジメに推理しようじゃないか。オレが犯人じゃないことは、わかってるんだろ」
依然――ダンジョンの中である。
いったい、いつまで、こんな薄暗くて、ジメジメしていて、血なまぐさい場所にいなくてはならないのか。
べつにモンスターを倒すでもないのに、こんなダンジョンに長居してる冒険者なんて、そうそういないだろう、と思う。
まぁ、冒険者ってのは、トンチンカンなヤツが多いから、他にもいるかもしれんが。
モンスターを倒すためでもなくせに、ダンジョンの中に居続けた時間の記録とかで、何か受賞できないかしら。不名誉でしかないな!
いやいや。あわてて頭をふる。
今は余計なことを考えている場合ではないのだ。
「でも、ここで起きてるのは私と、あんたの2人しかいないじゃない」
「マジでオレが犯人だと思ってるわけじゃないだろ」
「そっちこそ、どうなのよ」
「勇者が犯人だとは思ってねェよ」
そして誰もいなくなるような状況にはならない。
非常に残念なことに、勇者がどういう人間か、オレはよく知っている。こんなことをするヤツではない。
勇者に殺意があるなら、もっと正々堂々とボコボコにしていくことだろう。
そして逆もしかり、勇者もまたオレを信用してくれているのだ。
幼馴染の腐れ縁というヤツである。
「じゃあ、あんたが犯人じゃない」
「え? マジで言ってんの?」
「なんで冗談を言う必要があるのよ」
あれれー。
幼馴染の腐れ縁は、どうしちゃったのかなー。
オレと勇者は、「追放されし者と、追放した者」。やはり理解しあえぬ者同士だというのか。
ならば良かろう。
オレの灰色の脳細胞が覚醒するときである。容姿端麗、世界最強だけでなく、このオレが頭脳明晰であることも見せなければならないとは。
あぁ……。ハーレム無双系の星のもとに生まれてきてしまった者の宿命である。
「オレにひとつ推理があるんだが」
「なによ」
「次々、冒険者が眠らされているわけだが、ひとりだけ奇妙な眠り方をしたヤツがいた」
「あんた?」
と、勇者は首をかしげた。
「いや、オレは起きてるが」
「奇妙だって言うから」
うん。
オレは奇妙じゃないけどね。すっごく正常だけどね。
「いいか。よく考えてみろ。みんな眠らされたわけだが、眠らされた瞬間を目撃したことはあるか?」
「眠らされた瞬間って、睡魔の魔法が使われた瞬間ってこと?」
「ああ」
「見てないわよ。見てたら、いまごろ犯人だってわかるでしょ」
「そうなんだよ。みんな誰も目撃していないときに、眠らされてるんだ」
「それがなに?」
「このなかに1人だけ、オレたちの見てる前で寝たヤツがいた。あたかも睡魔の魔法にかけられたかのように、周りに見せてな」
こういう場合、被害者のなかに犯人がまぎれ込んでいるパターンが多いのだ。手垢にまみれた手法である。
「誰よ」
「あいつだよ」
オレが指さした先――クロコである。
たった1人、オレたちの目の前で睡魔にかけられたかのように見せて、眠りに落ちたヤツである。
「よくわかりましたね」
と、クロコは目を閉ざしたまま、くすくすと笑ってそう言った。
あ、あれ?
もしかして、当たっちゃったんですかね。
「お前が、犯人だったのか」
「ええ。最後は、勇者とナナシさんで殺し合ってくれるかと思ったんですけどね」
と、クロコは立ち上がった。
「なんで、こんなことを?」
「ボクは、『魔物教』のひとりなんですよ。今回の祭典で優れた冒険者たちを、一掃してやろうと目論んだんですがね」
『魔物教』……
どこかで聞いた名だなぁ。あ、思い出した。そう言えば、ブルベのパンツを盗んだ、あの騒動に関わっていたとか聞いている。
たしかモンスターの保護のため、冒険者を敵視してるとかいう、変な宗教団体だ。
「祭典を中止にしようとしてた連中だな」
「ええ。ブルベリア王女を脅迫して、祭典を注意に追い込むことは失敗しました。だから、冒険者たちをここで抹殺する計画に移行したんですよ」
「強化術師じゃなかったのかよ」
「多少は強化術も使えますが、それは偽りです。こうなれば仕方ありませんね。ボクのチカラをお見せしますよ」
クロコはそう言うと、魔法をとなえた。するとクロコの全身が黒々とした鎧に覆われたのだった。
カッコウ良い。
二足歩行のカブトムシみたいだ。
「その材質……」
階段をふさいでいる箱と、おそらくは同じ材質である。
「そう。これがボクの極めた魔法のチカラですよ。暗黒鉱石を生み出し、自在にそのチカラを変化させることが出来る。階段をふさいだのもボクですよ」
ずいぶんといい能力である。
ってか――。
「なんで《勇者パーティ》に新規参入するヤツは、いつも悪役なんだよ。お前、人を見る目なさすぎんだろッ」
ゴルドに続いて、これで2回目である。
「まだ2回目じゃない! 毎回毎回、変なヤツを入れてるみたいに、言わないでちょーだい」
「いや。2回も変なヤツ入れてたら、もう充分、人を見る目がないかと思うがッ」
「私に言われても仕方ないでしょーがッ。そんなこと言ったら、《勇者パーティ》に空き枠を作った、あんたが悪いんでしょーがッ」
無視しないでもらえますかね――と、クロコがつづける。
「おふたりは、ずいぶんと仲が良いみたいですが、ここで死んでもらうことにしますよ」
「はぁ? 誰が仲が良いって?」
と、オレ。
「勘違いもはなはだしいわ」
と、勇者。
声が重なった。
「『魔物教』の教義にかけて、冒険者である、あなたがたには死んでいただきますよ」
前傾姿勢となったクロコが、疾駆してきた。
「ナナシィ」
「承知」
勇者は大きく踏み込んで、クロコと衝突するように疾駆した。オレは後ろに回る。
獰猛なる精神。破壊の筋力。金剛鎧。聖女の祝福。神々の抱擁。駿馬の奇跡。駿馬の馬蹄。死神の接吻、蛇蝎の匍匐……。
強化術を付与していく。
七色の輝きが薄く膜を張るようにして勇者に付与された。
勇者とクロコが衝突する。一方でクロコは、その暗黒鉱石とやらを剣の形に変化させていた。
勇者のロングソードと、クロコの暗黒剣がツバぜりあった。
「天ッ!」
と、勇者が裂帛の声を発する。
これは勇者とオレの相言葉みたいなもんだ。勇者の合図に合わせて、強化術をさらに付与する。
「天使の飛翔」
勇者の背中から白い翼が生えてくる。翼をはためかせて、クロコの頭上へと浮かび上がった。
「なにッ。まだこれほどの強化術を隠していたなんてッ」
と、クロコがあからさまに狼狽していた。
「ふふふっ。強化術のみを極めし、このオレを侮ってもらっては困る。隠してたわけじゃないのさ」
オレの強化術に耐えうるだけの強靭な肉体を持つ者なんて、そうそういないのだ。
筋肉だけの話ではない。その精神力や、相性の問題もある。チョット強化術を付与しただけで、ふつうの人間は筋肉痛を起こすことになる。
しかし、オレとの強化術に最高の相性を持った者が、ひとりだけいる。
それが――。
「天空割りッ」
勇者である。
大上段からの一閃。
依然――ダンジョンの中である。
いったい、いつまで、こんな薄暗くて、ジメジメしていて、血なまぐさい場所にいなくてはならないのか。
べつにモンスターを倒すでもないのに、こんなダンジョンに長居してる冒険者なんて、そうそういないだろう、と思う。
まぁ、冒険者ってのは、トンチンカンなヤツが多いから、他にもいるかもしれんが。
モンスターを倒すためでもなくせに、ダンジョンの中に居続けた時間の記録とかで、何か受賞できないかしら。不名誉でしかないな!
いやいや。あわてて頭をふる。
今は余計なことを考えている場合ではないのだ。
「でも、ここで起きてるのは私と、あんたの2人しかいないじゃない」
「マジでオレが犯人だと思ってるわけじゃないだろ」
「そっちこそ、どうなのよ」
「勇者が犯人だとは思ってねェよ」
そして誰もいなくなるような状況にはならない。
非常に残念なことに、勇者がどういう人間か、オレはよく知っている。こんなことをするヤツではない。
勇者に殺意があるなら、もっと正々堂々とボコボコにしていくことだろう。
そして逆もしかり、勇者もまたオレを信用してくれているのだ。
幼馴染の腐れ縁というヤツである。
「じゃあ、あんたが犯人じゃない」
「え? マジで言ってんの?」
「なんで冗談を言う必要があるのよ」
あれれー。
幼馴染の腐れ縁は、どうしちゃったのかなー。
オレと勇者は、「追放されし者と、追放した者」。やはり理解しあえぬ者同士だというのか。
ならば良かろう。
オレの灰色の脳細胞が覚醒するときである。容姿端麗、世界最強だけでなく、このオレが頭脳明晰であることも見せなければならないとは。
あぁ……。ハーレム無双系の星のもとに生まれてきてしまった者の宿命である。
「オレにひとつ推理があるんだが」
「なによ」
「次々、冒険者が眠らされているわけだが、ひとりだけ奇妙な眠り方をしたヤツがいた」
「あんた?」
と、勇者は首をかしげた。
「いや、オレは起きてるが」
「奇妙だって言うから」
うん。
オレは奇妙じゃないけどね。すっごく正常だけどね。
「いいか。よく考えてみろ。みんな眠らされたわけだが、眠らされた瞬間を目撃したことはあるか?」
「眠らされた瞬間って、睡魔の魔法が使われた瞬間ってこと?」
「ああ」
「見てないわよ。見てたら、いまごろ犯人だってわかるでしょ」
「そうなんだよ。みんな誰も目撃していないときに、眠らされてるんだ」
「それがなに?」
「このなかに1人だけ、オレたちの見てる前で寝たヤツがいた。あたかも睡魔の魔法にかけられたかのように、周りに見せてな」
こういう場合、被害者のなかに犯人がまぎれ込んでいるパターンが多いのだ。手垢にまみれた手法である。
「誰よ」
「あいつだよ」
オレが指さした先――クロコである。
たった1人、オレたちの目の前で睡魔にかけられたかのように見せて、眠りに落ちたヤツである。
「よくわかりましたね」
と、クロコは目を閉ざしたまま、くすくすと笑ってそう言った。
あ、あれ?
もしかして、当たっちゃったんですかね。
「お前が、犯人だったのか」
「ええ。最後は、勇者とナナシさんで殺し合ってくれるかと思ったんですけどね」
と、クロコは立ち上がった。
「なんで、こんなことを?」
「ボクは、『魔物教』のひとりなんですよ。今回の祭典で優れた冒険者たちを、一掃してやろうと目論んだんですがね」
『魔物教』……
どこかで聞いた名だなぁ。あ、思い出した。そう言えば、ブルベのパンツを盗んだ、あの騒動に関わっていたとか聞いている。
たしかモンスターの保護のため、冒険者を敵視してるとかいう、変な宗教団体だ。
「祭典を中止にしようとしてた連中だな」
「ええ。ブルベリア王女を脅迫して、祭典を注意に追い込むことは失敗しました。だから、冒険者たちをここで抹殺する計画に移行したんですよ」
「強化術師じゃなかったのかよ」
「多少は強化術も使えますが、それは偽りです。こうなれば仕方ありませんね。ボクのチカラをお見せしますよ」
クロコはそう言うと、魔法をとなえた。するとクロコの全身が黒々とした鎧に覆われたのだった。
カッコウ良い。
二足歩行のカブトムシみたいだ。
「その材質……」
階段をふさいでいる箱と、おそらくは同じ材質である。
「そう。これがボクの極めた魔法のチカラですよ。暗黒鉱石を生み出し、自在にそのチカラを変化させることが出来る。階段をふさいだのもボクですよ」
ずいぶんといい能力である。
ってか――。
「なんで《勇者パーティ》に新規参入するヤツは、いつも悪役なんだよ。お前、人を見る目なさすぎんだろッ」
ゴルドに続いて、これで2回目である。
「まだ2回目じゃない! 毎回毎回、変なヤツを入れてるみたいに、言わないでちょーだい」
「いや。2回も変なヤツ入れてたら、もう充分、人を見る目がないかと思うがッ」
「私に言われても仕方ないでしょーがッ。そんなこと言ったら、《勇者パーティ》に空き枠を作った、あんたが悪いんでしょーがッ」
無視しないでもらえますかね――と、クロコがつづける。
「おふたりは、ずいぶんと仲が良いみたいですが、ここで死んでもらうことにしますよ」
「はぁ? 誰が仲が良いって?」
と、オレ。
「勘違いもはなはだしいわ」
と、勇者。
声が重なった。
「『魔物教』の教義にかけて、冒険者である、あなたがたには死んでいただきますよ」
前傾姿勢となったクロコが、疾駆してきた。
「ナナシィ」
「承知」
勇者は大きく踏み込んで、クロコと衝突するように疾駆した。オレは後ろに回る。
獰猛なる精神。破壊の筋力。金剛鎧。聖女の祝福。神々の抱擁。駿馬の奇跡。駿馬の馬蹄。死神の接吻、蛇蝎の匍匐……。
強化術を付与していく。
七色の輝きが薄く膜を張るようにして勇者に付与された。
勇者とクロコが衝突する。一方でクロコは、その暗黒鉱石とやらを剣の形に変化させていた。
勇者のロングソードと、クロコの暗黒剣がツバぜりあった。
「天ッ!」
と、勇者が裂帛の声を発する。
これは勇者とオレの相言葉みたいなもんだ。勇者の合図に合わせて、強化術をさらに付与する。
「天使の飛翔」
勇者の背中から白い翼が生えてくる。翼をはためかせて、クロコの頭上へと浮かび上がった。
「なにッ。まだこれほどの強化術を隠していたなんてッ」
と、クロコがあからさまに狼狽していた。
「ふふふっ。強化術のみを極めし、このオレを侮ってもらっては困る。隠してたわけじゃないのさ」
オレの強化術に耐えうるだけの強靭な肉体を持つ者なんて、そうそういないのだ。
筋肉だけの話ではない。その精神力や、相性の問題もある。チョット強化術を付与しただけで、ふつうの人間は筋肉痛を起こすことになる。
しかし、オレとの強化術に最高の相性を持った者が、ひとりだけいる。
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