《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。
14-1.この祭典終わったら、完結するんで!
「さあ。今年もやってまいりました。年に1度の冒険者たちの祭典。『魔塔祭典』。はたして今年はどんな猛者たちが集うのか。そして今年もヤッパリ勇者パーティが優勝してしまうのか!」
魔法によって音量アップした実況の声が、場内に響きわたっていた。
中央に巨大な塔がそびえ立っている。灰色にくすんだ塔である。冒険者たちがその塔を取り囲んでいる。さらにその周囲には観衆が押しかけていた。
「すごい盛り上がりでありますね」
と、マグロが言った。
周囲の熱気に気圧されたのか、マグロはすこしカラダが強張っているようだった。
「そりゃ1年に1度の祭典だからな」
「ですが、ダンジョン攻略の様子は、観衆から見えるのでありますか?」
「各パーティに、戦ってる様子を映し出される装置がわたされる。直接見れるわけじゃないが、観衆にも見える映像が流れるようになってる」
「おぉ。ずいぶんと都合の好い装置があるものですね」
「都合が良いとか言うな。それがないと盛り上がらないだろ! みんなで塔を見つめようの会になっちまうだろうが!」
周囲には冒険者たちがひしめいているが、みんな装備を整えている。武具のカチャンコチャンという音が、観衆のドヨめきと一緒に、たえず聞こえていた。
「うぅぅ」
と、デコポンが身を縮こまらせていた。
冒険者は体格のガッチリとした者が多い。そんな連中が集まっているのだから、気圧される理由もわからなくはない。
とは言っても、オレみたいな後衛役のなかには、ヒョロッとした者もいる。
「いいか。オレたちの目的は、この『魔塔祭典』で優勝することだ。そうすれば《炊き立て新米》は、冒険者として名をはせることになる。活躍しだいでは、ランク昇格ということだってありうるわけだ」
「するとマグロたちは、Dランクになれる、いうわけですか。あ、ナナシィはまだFランクでしたね」
「いちいち言わなくても良いよッ」
「プレートを持たなくても良いので、それはそれで、メリットもあるのですよ」
とマグロは、腰に携えている銅のプレートを持ち上げて見せた。
「慰めになってねェよ! どう聞いても煽ってるように聞こえるんだが!」
いまだFランクのオレには、プレートが贈与されていないのである。こんなに活躍してるのに、この世界オレに冷たくない?
「これは失敬」
と、マグロはプレートをしまっていた。
「ともかく――だ。この祭典で活躍すれば、強化術師だって評価されるはずだ。なによりこの戦いには、憎い因縁の相手、勇者が参戦してる」
この群衆のどこかに、ヤツもいるはずだ。
「それは頼もしいのじゃー」
と、デコポンが言う。
「頼もしいとか言うな! 今日はあの勇者パーティに勝利するのが目的なんだからな」
「具体的にどうやって勝敗が決まるのじゃ?」
と、デコポンは首をかしげた。
「持ち帰った魔結晶の量によって変わってくる。より多くの魔結晶を持ち帰ったヤツの勝利となる」
「一度に持ち帰るのは、難しいじゃろう?」
「ああ。だから、何度かダンジョンを出入りすることになるな」
「そしたら、入口近くでモンスターを倒したほうが、効率良さそうじゃな」
「ところが、これだけの冒険者がいるからな。入口付近は冒険者でイッパイになってしまうし、たいして強いモンスターも出ないし、それ相応の魔結晶しか出ない。さりとてあまり奥地に進むと、魔結晶を持ちだすのに苦労する。その中間あたりに陣取るのが吉だろうな」
これだけ背の高い塔だ。
上層では、よほど強いモンスターが出るのだろう。オレがついているとはいえ、マグロたちに無茶はさせられない。
この祭典で命を落とす冒険者も、すくなくないのだ。
「ふぁぁー。なんか、そういう説明聞いてると、眠くなるんだよなぁ」
と、ネニがあくびをしている。
「なんでこの状況で眠たくなるんだよ! すげぇ、盛り上がってるじゃないか!」
「今日のナナシィは、ずいぶんとハイテンションなのですよ」
「お前らの突っ込みで忙しいんだよ!」
常識人が、オレひとりしかいないというのも疲れるものだ。
主催者である冒険者の代表者と、王国側の代表者が長々と口上を述べていた。ブルベも第一王女として簡単な挨拶をしていた。
そのあいだに、戦っている様子を映し出す『魔結晶カメラ』というものが、各パーティに配布されることになった。大きな箱である。箱から棒が伸びており、先端には人の目玉のようなものがついていた。
「これが、戦っている様子を映し出してくれるわけだが、誰が背負う? デコポンとマグロは前衛として動き回ることになるだろうから、ここはネニが背負うべきだと思うんだが」
「いや、どう考えてもナナシィが背負うべきだろ」
「え? なんでオレが?」
「私だって魔法で援護するしさ」
「そんなこと言ったら、オレだって強化術で援護するだろ。むしろ強化術でスタミナと筋力を上げてやれるから、ネニが背負うほうが理にかなってるって」
けっこう重たいのだ。
ずっと背負い続けるのは、体力の消耗になる。
強化術は自分には使えないから、ネニに背負ってもらうのが正解だと思う。
「じゃあ、ジャンケンで決めるか」
「いや。オレの話を聞いてましたかね? 合理的に考えてネニが背負うべきだと……」
「じゃんけーん」
ポイ。
グーとパー。
負けた。
ホイッスルの音が開始の合図となった。冒険者たちは、我さきにとダンジョンへと突入したのだった。
魔法によって音量アップした実況の声が、場内に響きわたっていた。
中央に巨大な塔がそびえ立っている。灰色にくすんだ塔である。冒険者たちがその塔を取り囲んでいる。さらにその周囲には観衆が押しかけていた。
「すごい盛り上がりでありますね」
と、マグロが言った。
周囲の熱気に気圧されたのか、マグロはすこしカラダが強張っているようだった。
「そりゃ1年に1度の祭典だからな」
「ですが、ダンジョン攻略の様子は、観衆から見えるのでありますか?」
「各パーティに、戦ってる様子を映し出される装置がわたされる。直接見れるわけじゃないが、観衆にも見える映像が流れるようになってる」
「おぉ。ずいぶんと都合の好い装置があるものですね」
「都合が良いとか言うな。それがないと盛り上がらないだろ! みんなで塔を見つめようの会になっちまうだろうが!」
周囲には冒険者たちがひしめいているが、みんな装備を整えている。武具のカチャンコチャンという音が、観衆のドヨめきと一緒に、たえず聞こえていた。
「うぅぅ」
と、デコポンが身を縮こまらせていた。
冒険者は体格のガッチリとした者が多い。そんな連中が集まっているのだから、気圧される理由もわからなくはない。
とは言っても、オレみたいな後衛役のなかには、ヒョロッとした者もいる。
「いいか。オレたちの目的は、この『魔塔祭典』で優勝することだ。そうすれば《炊き立て新米》は、冒険者として名をはせることになる。活躍しだいでは、ランク昇格ということだってありうるわけだ」
「するとマグロたちは、Dランクになれる、いうわけですか。あ、ナナシィはまだFランクでしたね」
「いちいち言わなくても良いよッ」
「プレートを持たなくても良いので、それはそれで、メリットもあるのですよ」
とマグロは、腰に携えている銅のプレートを持ち上げて見せた。
「慰めになってねェよ! どう聞いても煽ってるように聞こえるんだが!」
いまだFランクのオレには、プレートが贈与されていないのである。こんなに活躍してるのに、この世界オレに冷たくない?
「これは失敬」
と、マグロはプレートをしまっていた。
「ともかく――だ。この祭典で活躍すれば、強化術師だって評価されるはずだ。なによりこの戦いには、憎い因縁の相手、勇者が参戦してる」
この群衆のどこかに、ヤツもいるはずだ。
「それは頼もしいのじゃー」
と、デコポンが言う。
「頼もしいとか言うな! 今日はあの勇者パーティに勝利するのが目的なんだからな」
「具体的にどうやって勝敗が決まるのじゃ?」
と、デコポンは首をかしげた。
「持ち帰った魔結晶の量によって変わってくる。より多くの魔結晶を持ち帰ったヤツの勝利となる」
「一度に持ち帰るのは、難しいじゃろう?」
「ああ。だから、何度かダンジョンを出入りすることになるな」
「そしたら、入口近くでモンスターを倒したほうが、効率良さそうじゃな」
「ところが、これだけの冒険者がいるからな。入口付近は冒険者でイッパイになってしまうし、たいして強いモンスターも出ないし、それ相応の魔結晶しか出ない。さりとてあまり奥地に進むと、魔結晶を持ちだすのに苦労する。その中間あたりに陣取るのが吉だろうな」
これだけ背の高い塔だ。
上層では、よほど強いモンスターが出るのだろう。オレがついているとはいえ、マグロたちに無茶はさせられない。
この祭典で命を落とす冒険者も、すくなくないのだ。
「ふぁぁー。なんか、そういう説明聞いてると、眠くなるんだよなぁ」
と、ネニがあくびをしている。
「なんでこの状況で眠たくなるんだよ! すげぇ、盛り上がってるじゃないか!」
「今日のナナシィは、ずいぶんとハイテンションなのですよ」
「お前らの突っ込みで忙しいんだよ!」
常識人が、オレひとりしかいないというのも疲れるものだ。
主催者である冒険者の代表者と、王国側の代表者が長々と口上を述べていた。ブルベも第一王女として簡単な挨拶をしていた。
そのあいだに、戦っている様子を映し出す『魔結晶カメラ』というものが、各パーティに配布されることになった。大きな箱である。箱から棒が伸びており、先端には人の目玉のようなものがついていた。
「これが、戦っている様子を映し出してくれるわけだが、誰が背負う? デコポンとマグロは前衛として動き回ることになるだろうから、ここはネニが背負うべきだと思うんだが」
「いや、どう考えてもナナシィが背負うべきだろ」
「え? なんでオレが?」
「私だって魔法で援護するしさ」
「そんなこと言ったら、オレだって強化術で援護するだろ。むしろ強化術でスタミナと筋力を上げてやれるから、ネニが背負うほうが理にかなってるって」
けっこう重たいのだ。
ずっと背負い続けるのは、体力の消耗になる。
強化術は自分には使えないから、ネニに背負ってもらうのが正解だと思う。
「じゃあ、ジャンケンで決めるか」
「いや。オレの話を聞いてましたかね? 合理的に考えてネニが背負うべきだと……」
「じゃんけーん」
ポイ。
グーとパー。
負けた。
ホイッスルの音が開始の合図となった。冒険者たちは、我さきにとダンジョンへと突入したのだった。
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