《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。
10-1.タイトル文字ズレてますが、なにか?
「クズだとは思っていましたが、まさか捕えられるとはマグロは思っていませんでした。何をやったのでありますか? 強姦ですか? それとも痴漢ですか? 公然わいせつ?」
「なんで、全部そっち系の罪状なんだよ!」
面会室。
オレは鉄格子をはさんで、マグロと話をしていた。
石造りの立方体の部屋だ。
デコポンも来てくれている。
「ナナシィなら、やりそうな事件だと思いましたので。んぐんぐ。それで、いつぐらいに出られそうなのです? もぐもぐ」
都市スバレイ名物の肉まんじゅうを、マグロは頬張っていた。
あのー、なんですかね? オレに見せつけてるんですかね? 臭い飯しかもらえないオレにたいする厭味なんですかね?
「ナナシィが出てくるまでは、すこしこの都市で待ってみるのです。ナナシィは重要な戦力でありますから」
「うん。うん。よくわかってくれてるじゃないか。オレは重要な最強の戦力だからな」
「ネニも捕えられてしまいました」
「ネニは無事か?」
「はい。今のところで別に酷い扱いを受けている様子ではありませんでした。事情を聞かれているぐらいです。ネニは惨殺事件のことを拒否していますし」
まぁ、酷い扱いを受けていないのなら良い。
「ってか、惨殺事件の疑いがネニにかけられていることを知ってンなら、オレの罪状も知ってるだろ」
「いえ。ナナシィが何をしたのかまでは、マグロは聞いていないのでありますよ」
「痴漢じゃろう。いつかはやらかすと思っておったのじゃ」
と、デコポンが言う。
こいつら、いったいオレをどういう目で見ているのか。
「ネニの共犯ってことにされてるんだよ」
「そうでありましたか」
「ああ」
「しかしマグロは、仲間を信じているのでありますよ。ネニが無実ならば、同時にナナシィも無実ということになるのです。もう少し待てば、きっとすぐに出られるのですよ」
「だと良いがな」
詳しく調べてもらえれば、ネニが惨殺事件の犯人ではないとわかるはずだ。
「そう言えば、勇者さんの話を小耳にはさんだのですが」
「勇者がどうかしたのか? オレが女に誑かされたとか、言いふらしたりしてるんじゃないだろうな」
質実剛健、清廉潔白なオレは、女性の色香にまどわされたことなど、一度だってないのだ。
「なにやら冒険者を辞めるかもしれないと、聞いたのでありますよ」
は?
すぐには意味を理解できなかった。
勇者が、冒険者を辞める?
そんなことをされたら、オレが『いまさら戻って来いと言われても、もう遅い』と言えなくなるではないか。
「いやいや。そりゃないだろ。あいつに限って、冒険者を辞めるだなんて」
「何か理由があるのでありますか?」
「勇者には、冒険者をつづける動機があるんだよ」
勇者の父は、オレたちの故郷でゆいいつの冒険者だった。
当時は、世界最強の冒険者とうたわれたほどの男である。
その男があるとき、故郷に帰って来なくなった。当時は、世界最強の冒険者とまで、うたわれた男だ。それほどの男が姿をくらましたのは、いったいどういう理由か。
さまざまなウワサが飛び交った。
ダンジョンでモンスターにやられたのだという者がいた。とんでもない強さのモンスターと出会ってから、修行の旅に出ているという者がいた。はたまた、ダンジョンで野垂れ死んでいるという者もいたし、いまだダンジョンを彷徨いつづけているという者もいた。
まぁ、オレはどこかよその女と駆け落ちでもしたんだろうと睨んでいる。
原因は判然としないが、勇者はその父を探すために冒険者になった。
流れでオレも冒険者に誘われたのだ。
勇者は、その父を見つけ出すまでは冒険者を辞めるはずがない。
「結婚するとか聞いたのですよ。だから冒険者を辞める――と」
「結婚だぁ? 勇者に言い寄ってくる男がいるのかよ。どんな豪胆な男なのか、見てみたいものだな」
あの勇者の手綱をにぎれるような男がいるなら、顔を拝んでみたいものだ。
「強化術師のゴルドだと聞いたのであります。あくまでウワサでありますが」
「げッ」
あの男か。
ゴルドのほうから言い寄ったのだろうか。それにしたって、よくあの勇者が了承したものだ。
勇者のことなんて、べつに何とも思っていないのに、無性に胸の奥がイガイガする。
あの勇者なら、もっと良い男を選べるだろうに――。
「あ、嫉妬しました?」
と、なぜか嬉しそうにマグロが尋ねてきた。
「してねぇよ」
と、オレは短く返した。
「なんで、全部そっち系の罪状なんだよ!」
面会室。
オレは鉄格子をはさんで、マグロと話をしていた。
石造りの立方体の部屋だ。
デコポンも来てくれている。
「ナナシィなら、やりそうな事件だと思いましたので。んぐんぐ。それで、いつぐらいに出られそうなのです? もぐもぐ」
都市スバレイ名物の肉まんじゅうを、マグロは頬張っていた。
あのー、なんですかね? オレに見せつけてるんですかね? 臭い飯しかもらえないオレにたいする厭味なんですかね?
「ナナシィが出てくるまでは、すこしこの都市で待ってみるのです。ナナシィは重要な戦力でありますから」
「うん。うん。よくわかってくれてるじゃないか。オレは重要な最強の戦力だからな」
「ネニも捕えられてしまいました」
「ネニは無事か?」
「はい。今のところで別に酷い扱いを受けている様子ではありませんでした。事情を聞かれているぐらいです。ネニは惨殺事件のことを拒否していますし」
まぁ、酷い扱いを受けていないのなら良い。
「ってか、惨殺事件の疑いがネニにかけられていることを知ってンなら、オレの罪状も知ってるだろ」
「いえ。ナナシィが何をしたのかまでは、マグロは聞いていないのでありますよ」
「痴漢じゃろう。いつかはやらかすと思っておったのじゃ」
と、デコポンが言う。
こいつら、いったいオレをどういう目で見ているのか。
「ネニの共犯ってことにされてるんだよ」
「そうでありましたか」
「ああ」
「しかしマグロは、仲間を信じているのでありますよ。ネニが無実ならば、同時にナナシィも無実ということになるのです。もう少し待てば、きっとすぐに出られるのですよ」
「だと良いがな」
詳しく調べてもらえれば、ネニが惨殺事件の犯人ではないとわかるはずだ。
「そう言えば、勇者さんの話を小耳にはさんだのですが」
「勇者がどうかしたのか? オレが女に誑かされたとか、言いふらしたりしてるんじゃないだろうな」
質実剛健、清廉潔白なオレは、女性の色香にまどわされたことなど、一度だってないのだ。
「なにやら冒険者を辞めるかもしれないと、聞いたのでありますよ」
は?
すぐには意味を理解できなかった。
勇者が、冒険者を辞める?
そんなことをされたら、オレが『いまさら戻って来いと言われても、もう遅い』と言えなくなるではないか。
「いやいや。そりゃないだろ。あいつに限って、冒険者を辞めるだなんて」
「何か理由があるのでありますか?」
「勇者には、冒険者をつづける動機があるんだよ」
勇者の父は、オレたちの故郷でゆいいつの冒険者だった。
当時は、世界最強の冒険者とうたわれたほどの男である。
その男があるとき、故郷に帰って来なくなった。当時は、世界最強の冒険者とまで、うたわれた男だ。それほどの男が姿をくらましたのは、いったいどういう理由か。
さまざまなウワサが飛び交った。
ダンジョンでモンスターにやられたのだという者がいた。とんでもない強さのモンスターと出会ってから、修行の旅に出ているという者がいた。はたまた、ダンジョンで野垂れ死んでいるという者もいたし、いまだダンジョンを彷徨いつづけているという者もいた。
まぁ、オレはどこかよその女と駆け落ちでもしたんだろうと睨んでいる。
原因は判然としないが、勇者はその父を探すために冒険者になった。
流れでオレも冒険者に誘われたのだ。
勇者は、その父を見つけ出すまでは冒険者を辞めるはずがない。
「結婚するとか聞いたのですよ。だから冒険者を辞める――と」
「結婚だぁ? 勇者に言い寄ってくる男がいるのかよ。どんな豪胆な男なのか、見てみたいものだな」
あの勇者の手綱をにぎれるような男がいるなら、顔を拝んでみたいものだ。
「強化術師のゴルドだと聞いたのであります。あくまでウワサでありますが」
「げッ」
あの男か。
ゴルドのほうから言い寄ったのだろうか。それにしたって、よくあの勇者が了承したものだ。
勇者のことなんて、べつに何とも思っていないのに、無性に胸の奥がイガイガする。
あの勇者なら、もっと良い男を選べるだろうに――。
「あ、嫉妬しました?」
と、なぜか嬉しそうにマグロが尋ねてきた。
「してねぇよ」
と、オレは短く返した。
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