《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。
8-4.女子がウンコなんて言うんじゃない!
お前のほうが助手だっただろ――と言われてしまいそうだが、心の中ではどう思っていようと自由である。
ギルドに行ってみれば、すぐに惨殺事件の詳細を知ることが出来た。なにせ、犯人を討伐した賞金が「魔結晶10万ポロム」である。
魔結晶ゴーレムのときに比べれば少額であるが、それでも充分、魅力的だ。
「10万ポロム!」
「10万ポロム!」
と、オレとネニは、コブシを突きあげて、声を張り上げたほどだ。
で。
ギルド裏の路地に来ていた。
昼日中だというのに人どおりは少ない。木箱が積み上げられていた。
オレたちが足を踏み入れると、ネズミが逃げ去って行った。
ジメジメとしていて厭な空気だった。魚の骨やら、肉の食べ残しなどが捨てられていた。
マグロならもう少しキレイに食べる。あいつは魚の骨も、鳥の骨もだいたい噛み砕いている。
「肺にカビでも生えそうな感じだな」
惨殺されたヤツは、全員で6人。そのうちの1人が、ここで殺されたということだ。
10万ポロムのために現場に訪れてみたのだが、こうして実際に来てみると、薄気味が悪い。どこからともなくゴブリンでも跳びかかって来そうな場所である。
「しかし冒険者ギルドの、すぐ裏手の路地で惨殺事件とは、大胆なことしやがるぜ」
と、ネニは人差し指の先に火をともした。
そう言えばネニは魔術師なのだ。カッコウ良い。
今度やり方を教えてもらおう。
「事件の現場なんか来ても、なにもわからないよ。さっさと引き返そうぜ」
「ンだよ。ビビってんのか? キンタマ縮こまってンだろ」
「女の子が、そんなこと言うもんじゃありません!」
「10万ポロムあったら、ナナシィはどうすんだよ」
「10万ポロムかぁ……」
3ヶ月ないし5ヶ月は、何もしなくても贅沢できる。それぐらいの魔結晶だ。
夢を見るには小さすぎる。けれど、現実ではそうそう手に入らない金額である。しかしまぁ、マグロに見つかれば食費として溶けていくことだろうから、秘密裡に費やす必要がある。
「ネニは?」
「私は、孤児院に寄付かな」
「オレの前で良い娘ぶっても、なんにもならないよ?」
「良い娘ぶってるわけじゃねェよ。私はもともと孤児だからな。教会で育てられたんだよ。だから恩返しっていうか、しておきたくてさ」
「へぇ。そうだったのか」
「まぁ、教会から私は追い出されちまったんだけどな」
へへっ、とネニは気まずそうに笑った。
「なにしたんだよ」
「まぁ、いろいろあってな」
と、ネニは肩をすくめた。
これは相当、悪いことをしてるに違いないな。
追い出された教会に寄付とは、物好きなヤツである。
しかし10万ポロムは先着1名様限定。孤児院に寄付される前に、オレが使ってしまおう。巨乳なお姉さんを5人ぐらい金で釣って、遊んでもらおうかしら。うん。悪くない使い道だ。
「ってか、ネニはなんで《炊き立て新米》パーティに入ったんだ?」
あんまり冒険者に乗り気なようには見えない。乗り気だとしても、四六時中眠ってるのだから、冒険者に向いているとも思えない。
まぁ、四六時中眠ってるヤツが向いてる職業なんて、そうそうありはしないと思うが。
「冒険者って楽そうじゃん? 自分のペースで稼げるわけだし、誰からも指図されないし」
「まぁ、ミスったら死ぬけどな」
「デコポンもマグロも、1人前とは言えないヤツらだからよ。なんつぅか、緩い感じが私に合ってるっていうか」
なるほど。
なんとなく、理解できなくもない。
ネニみたいに寝てばっかりで働かないヤツや、デコポンみたいにビビってばかりのヤツ、マグロみたいに大剣振ったらすぐ疲れるようなヤツ。
たぶん他のパーティでは、やっていけないメンバーである。
《炊き立て新米》は、いわばハキダメだ。まあ、オレが入ったおかげでハキダメとは言えないわけだが。
「悪い、チョット待っててくれ」
と、ネニはその場からあわてた様子で立ち去ろうとした。
「え? なに?」
「ウンコ」
もしやオレのことを罵倒しているのだろうか。そうではなくて便意をもよおした旨を伝えているのだと気づいた。
「せめてトイレって言え!」
「漏れる、漏れるっ」
と、立ち去って行った。
銀髪に白銀の目をした、魔女っ娘の口から「ウンコ」の3文字が跳び出してくるとは思わなかった。
女の子はウンコなんかしないと思っていたオレの夢を返して欲しい。
冒険者ギルドにトイレがあるから、すぐに戻ってくるだろう。しかし、こんな陰惨な場所で待たされるのはゴメンだ。表通りで待っていようか。
キビスを返そうとした。その時である。
「グラァァァ――ッ」
と、荒々しい咆哮が聞こえた。
なんだ? 見上げる。建物の屋上に大柄な影があった。よりにもよってオレの前に跳び下りてきた。
「ひぇ」
オレ史上、上位を争う情けない悲鳴が漏れた。
近くに誰もいなくて良かった……なんて安堵している暇はない。その巨体を見定めた。全身が白銀の毛でおおわれている。二足歩行の狼。
これは――人狼である。
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