《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。
7-2.クレーマー扱い、しないでください!
全快とはいかぬものの、どうにか動けるぐらいまでには、デコポンは回復していた。
ついでにマグロの腹痛も治っていた。
そっちは回復しなくても良かったのに……。
人の快癒にケチをつけるなんて、なんて人情のないヤツだ、と思われるかもしれない。しかし、今朝の食欲を見ても、そんなことが言えるというのか! えぇ!
トーストとベーコンをオードブルに、鳥肉の香草焼きから、ホウレンソウとマッシュルームのクリーム煮。そして締めくくりに、ボウル山盛の豚ブロックの角煮を平らげていた。
腹に穴でも空いてるんじゃなかろうか。オレはその隣でつつましく、トーストとハーブティをいただいた。
オレのほうが可愛いお腹してるんじゃないかな。
デコポンを連れて行き、ギルドで純度の高い魔結晶と交換してもらった。
魔結晶とは、この世界であらゆるものを動かすエネルギーになっている。たとえば時計塔とか、機関車もそうだ。
飛空艇も魔結晶のチカラを利用して空を飛んでいる。馬車にも生かそうという試みがあったようだが、何やら色々とあったらしく、それはいまだ実行されていない。
まぁ、つまり何が言いたいかというと、より純度の高い魔結晶ほど、大きなエネルギー源になり、それ相応に価値もあがるのである。
「どうぞ」
と、ギルドの受付嬢が、純度の高い魔結晶を持ってきた。
魔結晶ゴーレムの残骸と交換してもらったものである。手のひらにおさまるぐらいの大きさしかなかったが、虹色に輝いていた。
「ホントに、これがあの魔結晶ゴーレムの量に相当するんですかね」
昨日、追い返された恨みもあって、オレはそうケチをつけてやった。
「あっ。クレームなら別の者が対応しますので」 と、受付嬢はひきつった笑みを浮かべていた。
「クレーマー扱いしないでください!」
「魔結晶ゴーレムの残骸は、おおよそ1000万ポロムほどの価値になりました。魔法をかけて軽量化していますが、魔法をとけばその重みがわかると思います。手で持って確認してみますか?」
「けっこうです」
腕が潰れる。
そもそもケチをつけたかっただけで、ギルドを疑っているわけではない。じゃあやっぱりクレーマーである。
「この魔結晶を持って、私の故郷に行きたいのじゃ。これで私の故郷を買い取ることが出来るのじゃ」
と、デコポンが言った。
「まぁ、仕方あるまい」
その魔結晶があれば今後、一生遊んで暮らせる程度にはなる。どうにか独り占めしたいのだが、さすがに強奪するような度胸はない。
「マグロにも異論はありません」
ネニは立ったまま、鼻チョウチンをふくらませていたので、意見は無視しておくとしよう。
「それじゃあ、デコポンの故郷とやらに行くとしようか」
「ナナシィは良いのか?」
「何がだい。デコポン?」
「勇者に、別れの挨拶ぐらいしておいたらどうじゃ?」
「はぁ? 必要ねェよ。ンなもん。ヤツはオレを追放したんだからな。もう赤の他人だよ。まぁ、向こうが『パーティに戻って来て欲しい』って言うのなら、話は別だがな」
「もし、勇者パーティに戻って来て欲しいと言われたら、ナナシィはどうするんじゃ?」
「もちろんそのときは、『今さら戻って来てくれと言われても、もう遅い』と傲然と言い放ってやるわけだが?」
「ふむ。そうか」
と、デコポンはその広い額を人差し指でナでて、曖昧に笑って見せた。
「えっと、それはどういう笑い?」
「いや。この魔結晶ゴーレムを倒したときにわかったんじゃが、ナナシィは強い男じゃと思うてな。《炊き立て新米》パーティには、是非とも必要な人材じゃからな。他へ行ってもらわねば困るというか、なんというか……」
たしかに、それはマグロも思うのであります――と、マグロがうなずいていた。
トクン。
心臓が興奮で小さく跳ねあがった。
ようやっと、このオレの有益さを理解できる者が現われたのだ。
この世界も捨てたものではない。
ようやっとオレのもとにも、無双系の神が舞い降りたというわけだ。
きっとこれを皮切りに、オレは崇めたたえられることになるのだ。
そして、女の子たちが次から次へと言い寄ってきて、袖が触れ合うだけで目をハートにしていくに違いない。
「そうだろう。そうだろうオレの強化術は、ギルドで評価されていないだけで、わかるヤツにはわかるんだよ。むしろ理解できないヤツのほうが、どうかしてるってもんだぜ。ヤッパリ君たちには見る目がある。ならどうだろう? そのゴーレムの魔結晶を、オレに預けるというのは。まぁ、魔結晶ゴーレムを倒せたのも、オレのおかげなわけだし? オレが受け取っても良いんじゃないかなーっと」
ははぁ。ナナシさま。献上いたします。
そういう展開を期待していた。
が。
白い目で見られた。
マグロまで、呆れたような顔を向けてくる。
「調子に乗りすぎなのじゃ。はぁ。こんな性格をしておるから、勇者パーティから追放されるんじゃろうが。私たちは先に行くから、ナナシィはいっしょに来たかったら来るが良いぞ」
と、デコポンはそう言って、肩をすくめていた。
「あ、ちょっと待ってくれよ。オレも行くって」
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