《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。
4-1.無理にのじゃらなくても良いんだよ?
なんでオレが、わざわざ勇者を追いかけるかって? そりゃ、「戻ってきてくれ」と言われるときには、オレ自身が近くにいたほうが良いからだ。
遠くにいたら、言いに来るのも手間だろう。『今さら戻ってきてくれと言われてももう遅い』という決めゼリフを放つために待ち構えておこうという腹だ。
「今さら戻ってきてくれと言われても、もう遅いんだよ。いや違うな。はッ、今さらだなッ。いや、これも違うか」
「なにをしておるのじゃ?」
と、デコポンが尋ねてきた。
「練習だよ。練習。たぶんもうじき勇者パーティが、オレに『戻ってきてくれ』と言いに来るはずだ。なので、オレは『今さら戻ってきてくれと言われても遅いんだよォ』と、ともかくそういう旨を伝えるための練習」
「努力家なのじゃな」
「そうとも。オレは努力家なのだよ」
「この先がトラシュの森なのじゃ」
と、デコポンが森のなかへと案内してくれる。
急に世界が暗くなる。容赦なく照りつける陽光も、背の高い木々の茂みにふさがれて、潜り込むことが出来ないようだ。ザマァ見ろ、太陽め。急に、空気が涼しい。汗ばんだカラダに心地が良い。
「そもそも勇者パーティはホントウに、ナナシィに戻って来て欲しいと思っているんじゃろうか?」
低木を踏み分けてすすむデコポンが、振り返ってそう尋ねてきた。
「え? なんで? 思ってるよ?」
オレという重要な戦力が欠けたことを、いまごろ勇者たちは身を持って痛感しているはずである。
「思っているのならば、向こうから会いに来ると思うんじゃが」
「それは大人の事情というものだよ。向こうも追放した身だからさ。簡単には頭を下げれないんだよ。プライドってもんがあるだろ。だからわざわざ、こうしてオレのほうから近くに行ってやろうというわけだよ」
「なるほどなのじゃー」
「うん。ムリして語尾に、のじゃ、ってつけなくても良いからね」
「のじゃ! これは別にムリをしてつけているわけではないのじゃ」
「いや。これは失敬。まさか、のじゃキャラだったとは思わず、つい失礼なことを。デコポンは歳はいくつ?」
「ひゃくよ……じゃなくて、14」
「ンなバカな! 語尾に、のじゃ、をつけるのは、ロリババァって相場は決まってるんだよッ」
「わ、私はババァではないのじゃ。決してサバとか読んでないのじゃ」
と、デコポンは碧眼に涙を浮かべていた。
「泣いたってムダだよ。のじゃのじゃ言ってるんだから、ホントウは500歳ぐらいなんだろ。え? お兄さんは怒らないから正直に言ってごらん?」
「びえぇぇー」
デコポンは怪鳥のような鳴き声をあげると、大盾のなかにふさぎ込んでしまった。大盾はデコポンのカラダを完全に覆っている。
その姿たるや、まるで亀だ。
その背中を覆う大盾――正確に言えば、漆黒のカイトシールドこそデコポンの得物である。デコポンはその盾を持ってして、《炊き立て新米》パーティの盾役をこなしているのである。いや。こなしているのだそうだ。
いかんせん、実際に盾役として活躍した場面を、オレはまだ一度も見たことがない。
「こらっ。デコポンをイジめてはダメなのですよ。マグロは注意するのであります」
「イジめたつもりはないんだけどなぁ。……って、お前、なにを食ってンだ?」
「キノコであります。そこいらに光るキノコが生えていたので、オロロロロ……」
マグロ、嘔吐。
「いや、マグロは食い意地を張りすぎなんだよッ。どう見ても、これを食べようとは思わないだろーっ」
ピンクに発光するキノコだ。
吐しゃ物までキラキラである。
「おい、ネニ? このキノコって食っても大丈夫なヤツなのか? 何か知らないか?」
「くぅぅッ」
「って、寝ンなーッ」
デコポンは盾に閉じこもり、マグロはゲロ真っ最中、ネニはぐっすり熟睡モード。
底辺パーティをオレの強化術で使えるヤツらにしてやろうと思っていたのだが、その意気込みを不安にさせる光景である。
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