《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。
3-2.強化術にはデメリットがあるんです?
マグロはひたすらスライムを倒して、たちまち1000ポロム相当の粘液を集めることが出来た。
自分が働きたくないので、他人に働いてもらおうという、オレの思惑通りに動いてくれた。
「そう言えば、ナナシィはどうして勇者パーティから離脱したのです?」
床に散らばっている粘液を採取しながら、マグロがそう尋ねてきた。
「急に、オレのトラウマをえぐって来るな」
「言いたくないのなら、ムリして言わなくても構いませんよ。これから何度も質問するとは思いますが」
「質問はするのかよ!」
「気になりますから」
「オレもマグロと同じだよ。パーティから追放されたんだ。強化術師ってのは、自分じゃモンスターの討伐記録を伸ばせないからな。役立たずってことで。酷いだろ。オレと勇者は幼馴染なのにさ」
素直にそう打ち明けることが出来たのは、マグロも同じ境遇だからだろう。
――って。
「マグロちゃん。聞いてますかねーっ」
床に散っているスライムの粘液に回収に熱中しているようだ。
「あ、大丈夫ですよ。続けてください」
手に付着しているスライムを、ビンに詰めながらそう言った。
「なんか、義務的に聞いてないか? べつに聞きたくないんなら、オレ言わないよ? 質問してきたのは、マグロだよね?」
「作業しながら聞いたほうが、効率が良いと思いましたので」
「まあ、そうなんだけどね」
そうなんだけど、もうチョット興味ある感じで聞いて欲しい。なんか感動的な雰囲気になってたのがバカみたいだ。
「それで、ナナシィは追い出されて、どうしたいのですか?」
と、マグロは作業の手を止めて、オレのほうを見てきた。もしかして気を使わせてしまったのかもしれない。
「もちろん、見返してやりたいさ。いまごろオレのいないパーティは、壊滅状態に違いない。あとで泣きついてきても、今さら戻ってきてくれと言われても、もう遅い――と言ってやるわけだ」
「へえ」
「マグロちゃんも、似たようなもんだろ。あのコケコッコー野郎を見返してやりたいんだろ」
「いえ。マグロはそうは思いません」
「じゃあ、どうしたいんだ?」
マグロはうつむくと、なんだか寂しそうに笑った。
「《羽毛より羊毛》パーティにいるのは、みんなマグロの幼馴染です。友人であり、家族のようなものです」
「でも、追い出されたんだろ」
オレだって、勇者とは幼馴染だ。
「はい。ですから、追いつきたいのです。マグロだけ置いてきぼりにされたくなくて、もう一度、みんなと一緒になれたらいいな――って」
「戻りたいのか。《羽毛より羊毛》パーティに」
「はい。もう一度、仲間だって認めて欲しいのです。ですからマグロは置いて行かれないようにガンバるのです」
「そっか」
なんだかザマァを狙っているオレが、腹黒いヤツみたいになって、チョット厭だ。
健気にスライムの粘液を回収しているマグロを見つめた。
刹那。
「逃げろォ」
という声が聞こえてきた。
正面から、逃げて来る一団がいた。先頭を走っているのは、ニワトリ男である。
ニワトリ男たちの後ろには、巨大なスケルトンがいた。
あれはスケルトン・デスロードと呼ばれるモンスターだ。スケルトン・ナイトよりもはるかに強力なモンスターだ。
初心者の塔でも奥地に入れば、ああいった強力なのが出てくる。
「げッ。厄介なヤツが来やがったぜ。逃げるぞ。マグロ」
「あ、すこし待ってください。まだ粘液の回収が終わってません」
「それぐらいで良い。逃げるのが先決だ」
マグロはあわてたのか、立ち上がるさいにビンを落としていた。セッカク集めていたスライムの粘液がコボれ落ちた。
スケルトン・デスロードが接近してくる。
ニワトリ男が叫んだ。
「なにしてやがるんだ。このノロマッ」
ニワトリ男はそう言うと、剣を抜いて、マグロを守るようにして、スケルトン・デスロードの前に立ちはだかった。
しかし軽く払い飛ばされていた。ニワトリ男は壁に背中を打ちつけていた。
デスロードは、その手の平だけで、人をつかめるほどの大きさがあるのだ。
「マグロ。動けるか?」
オレは倒れているマグロを立ち上がらせた。
「はい。ですが、コケコルが」
あのニワトリ男。コケコルというのか。はじめて知った。
「オレが強化術でマグロを強化する。あのスケルトン・デスロードは、マグロが倒すんだ」
「マグロが?」
不安そうな顔で、オレを見てきた。
「心配するな。ただ思ったよりに剣を振れば良い」
「しかしスケルトン・デスロードは、C級相当のモンスターでありますよ」
「ならオレはそれ以上だ。あのニワトリ男の前で見せてやれよ。自分が役立たずなんかじゃないってところを。置いて行かれたくないんだろ」
「……わかりました」
と、マグロは意を決したように、うなずいた。
「お見せしよう。強化術の神髄を」
獰猛なる精神。破壊の筋力。金剛鎧。聖女の祝福。神々の抱擁。駿馬の馬蹄。死神の接吻……あらゆる強化術をマグロに付与した。魔法陣がマグロのカラダに刻まれてゆく。
「うおおぉぉッ」
と、マグロが吠えた。
スケルトン・デスロードが、マグロのカラダをつかもうと手を伸ばした。マグロは姿をくらまして、それをかわした。
瞬間移動するかのように、マグロは姿を消す。そして明滅するかのように姿を現す。現れたマグロにつかみかかろうとしても、同じことの繰り返しだ。
マグロは跳躍した。スケルトン・デスロードの頭蓋骨の位置にまで跳んでいた。剣を大上段に構えている。
スケルトン・デスロードは口を開けた。口先にて魔法陣が展開される。火球が射出された。マグロに直撃する。が、強化されたマグロは、その程度の魔法など受け付けない。
「行け。そのまま振り下ろせ」
「せやぁぁぁッ」
と、大剣が振り下ろされた。
スケルトン・デスロードは危機感をおぼえたのだろう。両手を交差させるようにして頭部を守っていた。
が。
無意味。
一閃。
その手ごと、一刀両断にしていた。
スケルトン・デスロードのカラダが砕け散って、魔結晶をあふれさせた。
「ふーっ」
と、マグロはそのクチから、獣のごとき白いケムリを吐きだした。
「見事だ」
「これほどの強化術……なんてチカラ……」
とマグロは自分手のひらを見つめて、それからオレのほうに視線を向けてきた。
「あ、言うの忘れてたけど、あんまりムリして動き過ぎたら、筋肉痛になるからね」
「え? あ、痛たたたっ」
と、マグロもその場に倒れていた。
自分が働きたくないので、他人に働いてもらおうという、オレの思惑通りに動いてくれた。
「そう言えば、ナナシィはどうして勇者パーティから離脱したのです?」
床に散らばっている粘液を採取しながら、マグロがそう尋ねてきた。
「急に、オレのトラウマをえぐって来るな」
「言いたくないのなら、ムリして言わなくても構いませんよ。これから何度も質問するとは思いますが」
「質問はするのかよ!」
「気になりますから」
「オレもマグロと同じだよ。パーティから追放されたんだ。強化術師ってのは、自分じゃモンスターの討伐記録を伸ばせないからな。役立たずってことで。酷いだろ。オレと勇者は幼馴染なのにさ」
素直にそう打ち明けることが出来たのは、マグロも同じ境遇だからだろう。
――って。
「マグロちゃん。聞いてますかねーっ」
床に散っているスライムの粘液に回収に熱中しているようだ。
「あ、大丈夫ですよ。続けてください」
手に付着しているスライムを、ビンに詰めながらそう言った。
「なんか、義務的に聞いてないか? べつに聞きたくないんなら、オレ言わないよ? 質問してきたのは、マグロだよね?」
「作業しながら聞いたほうが、効率が良いと思いましたので」
「まあ、そうなんだけどね」
そうなんだけど、もうチョット興味ある感じで聞いて欲しい。なんか感動的な雰囲気になってたのがバカみたいだ。
「それで、ナナシィは追い出されて、どうしたいのですか?」
と、マグロは作業の手を止めて、オレのほうを見てきた。もしかして気を使わせてしまったのかもしれない。
「もちろん、見返してやりたいさ。いまごろオレのいないパーティは、壊滅状態に違いない。あとで泣きついてきても、今さら戻ってきてくれと言われても、もう遅い――と言ってやるわけだ」
「へえ」
「マグロちゃんも、似たようなもんだろ。あのコケコッコー野郎を見返してやりたいんだろ」
「いえ。マグロはそうは思いません」
「じゃあ、どうしたいんだ?」
マグロはうつむくと、なんだか寂しそうに笑った。
「《羽毛より羊毛》パーティにいるのは、みんなマグロの幼馴染です。友人であり、家族のようなものです」
「でも、追い出されたんだろ」
オレだって、勇者とは幼馴染だ。
「はい。ですから、追いつきたいのです。マグロだけ置いてきぼりにされたくなくて、もう一度、みんなと一緒になれたらいいな――って」
「戻りたいのか。《羽毛より羊毛》パーティに」
「はい。もう一度、仲間だって認めて欲しいのです。ですからマグロは置いて行かれないようにガンバるのです」
「そっか」
なんだかザマァを狙っているオレが、腹黒いヤツみたいになって、チョット厭だ。
健気にスライムの粘液を回収しているマグロを見つめた。
刹那。
「逃げろォ」
という声が聞こえてきた。
正面から、逃げて来る一団がいた。先頭を走っているのは、ニワトリ男である。
ニワトリ男たちの後ろには、巨大なスケルトンがいた。
あれはスケルトン・デスロードと呼ばれるモンスターだ。スケルトン・ナイトよりもはるかに強力なモンスターだ。
初心者の塔でも奥地に入れば、ああいった強力なのが出てくる。
「げッ。厄介なヤツが来やがったぜ。逃げるぞ。マグロ」
「あ、すこし待ってください。まだ粘液の回収が終わってません」
「それぐらいで良い。逃げるのが先決だ」
マグロはあわてたのか、立ち上がるさいにビンを落としていた。セッカク集めていたスライムの粘液がコボれ落ちた。
スケルトン・デスロードが接近してくる。
ニワトリ男が叫んだ。
「なにしてやがるんだ。このノロマッ」
ニワトリ男はそう言うと、剣を抜いて、マグロを守るようにして、スケルトン・デスロードの前に立ちはだかった。
しかし軽く払い飛ばされていた。ニワトリ男は壁に背中を打ちつけていた。
デスロードは、その手の平だけで、人をつかめるほどの大きさがあるのだ。
「マグロ。動けるか?」
オレは倒れているマグロを立ち上がらせた。
「はい。ですが、コケコルが」
あのニワトリ男。コケコルというのか。はじめて知った。
「オレが強化術でマグロを強化する。あのスケルトン・デスロードは、マグロが倒すんだ」
「マグロが?」
不安そうな顔で、オレを見てきた。
「心配するな。ただ思ったよりに剣を振れば良い」
「しかしスケルトン・デスロードは、C級相当のモンスターでありますよ」
「ならオレはそれ以上だ。あのニワトリ男の前で見せてやれよ。自分が役立たずなんかじゃないってところを。置いて行かれたくないんだろ」
「……わかりました」
と、マグロは意を決したように、うなずいた。
「お見せしよう。強化術の神髄を」
獰猛なる精神。破壊の筋力。金剛鎧。聖女の祝福。神々の抱擁。駿馬の馬蹄。死神の接吻……あらゆる強化術をマグロに付与した。魔法陣がマグロのカラダに刻まれてゆく。
「うおおぉぉッ」
と、マグロが吠えた。
スケルトン・デスロードが、マグロのカラダをつかもうと手を伸ばした。マグロは姿をくらまして、それをかわした。
瞬間移動するかのように、マグロは姿を消す。そして明滅するかのように姿を現す。現れたマグロにつかみかかろうとしても、同じことの繰り返しだ。
マグロは跳躍した。スケルトン・デスロードの頭蓋骨の位置にまで跳んでいた。剣を大上段に構えている。
スケルトン・デスロードは口を開けた。口先にて魔法陣が展開される。火球が射出された。マグロに直撃する。が、強化されたマグロは、その程度の魔法など受け付けない。
「行け。そのまま振り下ろせ」
「せやぁぁぁッ」
と、大剣が振り下ろされた。
スケルトン・デスロードは危機感をおぼえたのだろう。両手を交差させるようにして頭部を守っていた。
が。
無意味。
一閃。
その手ごと、一刀両断にしていた。
スケルトン・デスロードのカラダが砕け散って、魔結晶をあふれさせた。
「ふーっ」
と、マグロはそのクチから、獣のごとき白いケムリを吐きだした。
「見事だ」
「これほどの強化術……なんてチカラ……」
とマグロは自分手のひらを見つめて、それからオレのほうに視線を向けてきた。
「あ、言うの忘れてたけど、あんまりムリして動き過ぎたら、筋肉痛になるからね」
「え? あ、痛たたたっ」
と、マグロもその場に倒れていた。
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