《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。

執筆用bot E-021番 

2-3.支払いの良いクエストが、必要です!

 誤算である。


 マグロ率いる《炊き立て新米》パーティは、「ド」がつくほどの底辺パーティだったのだ。


 自分のことを棚にあげて、人のことを底辺とか言うんじゃねェ、このタコ――と、そこいらの聖人さまは言うかもしれない。


 そんな聖人さまでも、渋面をつくるような事実が発覚したのである。


 マグロとネニとデコポンの3人は、Fランク冒険者と言われる底辺冒険者だ。オマケに、ぜんぜん働かない。その上、食い逃げ、無賃宿泊、いわんや恐喝の常習犯だと言うのだ。


「クズじゃねェか!」
 ダンジョンへ行く前に、冒険者ギルドに立ち寄った。そこでウワサ話を耳にしてしまったのだ。


「あのお荷物くんには、ピッタリの移籍先ね」という声まで、聞こえてしまった。チクショウ。言いたい放題言いやがって。


 《炊き立て新米》をディスるのは良いが、オレをディスるのはやめていただきたい。


「人聞きの悪いことを言わないでください」
 と、マグロが言った。


「人聞きの悪いことを言ってンのはオレじゃなくて、周りの連中だ。いったいどういうことか説明してもらおうか」
 と、オレは詰め寄った。


 暗黒ギルドというのがある。悪党が悪党のために結成したギルドだ。盗賊やら暗殺者の所属する場所だ。


 聞こえてくるウワサは、暗黒ギルドの者と大差ない。
 可愛い顔してるからって、何しても許されると思うなよ。場合によっては破局である。属して1日で、パーティ離脱の危機である。


「なにから説明すればよろしいでしょうか」


「食い逃げとは、どういうことだ」


「つい夢中になって、持っている魔結晶以上の食事を注文してしまったのです。謝っても許してくれなかったので、逃げることにいたしました」


「無賃宿泊は?」


「つい誤って、食事を食べすぎてしまい、宿泊先の魔結晶を払う手持ちがなくなってしまいました」


「恐喝したとも聞いたが」


「あまりにお腹が空いていたので、道行く人の魔結晶を恵んでもらおうとしただけです。恐喝したような覚えはありません」


 申し訳なさそうにシュンとうつむいて、マグロは説明して見せた。


 こんな可愛い娘が悄気ショゲていると、それはもういたく反省しているように見えてくる。問い詰めているオレのほうが悪い気がしてくる。


「まぁ、なんだ。つまり腹が減っていたというわけか」


「はい」


 マグロの言葉を全面的に信じて良いものかは、わからない。が、まぁ、人に迷惑をかけることを生甲斐としているような人物ではないだろう。


「反省してるのか?」


「もちろん。反省しております」


 そう言ったやさき、
 ギュゥゥゥ。
 腹が減ったと不満を訴えるかのように、マグロの腹が鳴っていた。


「昨晩、あれだけ食べたのに、まだお腹が空いているのか」


「朝食を食べていませんから。誰かの魔結晶を恵んでもらい、朝食にありつくのでありますよ」


「反省したって言ったよね! それが恐喝と間違えられてるんだろッ」


「しかし、腹を満たさなければチカラも出ないというものです。これからダンジョンへ行くのに腹ごしらえをしなければなりません」


「我慢しろ。心配するな。1日ぐらい何も食べなくてもやっていける」


「ガビーン」
 マグロは親の死を聞かされたような表情をしていた。 


「ガビーンじゃねェよ。ダンジョンに行って魔結晶をシッカリ稼げて、夕食にはありつけるだろうからな」


「では、すぐにダンジョンへ参りましょう」


「待て待て待て。ダンジョンへ行く前に、この冒険者ギルドで支払いの良いクエストを探しに来たんだよ」


 ギルドは木造建築のエリンギみたいな建物だが、その内側の壁面にはビッシリと羊皮紙が貼りつけられている。


 それが、クエスト、だ。


「あれを持ってきてくれ」「これを持ってきてくれ」といった、一般市民の注文が書かれている。それを叶えてやれば、普段よりいっそうの報酬が期待できる。


 とにかくこの《炊き立て新米》パーティの、空腹を満たすためには、支払いの良いクエストが必要である。


「おう。ちょうど良さげなのがある」
 と、オレは今までの経験則で、良いクエストを見つけ出した。


「どういうクエストでありますか」


「スライムの粘液を、1000ポロム集めて欲しいらしい。孤児院からの注文だ」


「1000ポロムというと……」
 と、マグロは首をかしげた。


「だいたいコブシ大ぐらいのが10個分ってところだな」


 オレがそう説明すると、マグロは自分で握りこぶしをつくって確認してみた。


「このクエスト受けるぞ。支払いも同じ重量の魔結晶を提供すると書いてある。つまり、1000ポロムはくれるというわけだ」


「1000ポロムあれば、夕食がたくさん食べられるのであります」


「加減はしろよ。難易度にたいして支払いが良いってだけで、1000ポロムなんてアッという間になくなるんだからな」


 クエストを受け取ろうとした。が、同じく手を伸ばしてくる者があった。


 このオレが目をつけたクエストを横取りしようとするとは、いい度胸をしてるじゃないか。いったいどこの誰がだろうか。


 目を向ける。


「あ」


 出た。
 昨日ダンジョンで見かけたニワトリ男である。

コメント

コメントを書く

「コメディー」の人気作品

書籍化作品