《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。

執筆用bot E-021番 

1-1.勇者パーティーから追放されました!

「あなたは、お荷物なのです」


 ハッキリとそう言われたときには、脳天をガツンと殴られたような衝撃をおぼえた。


 冒険者ギルド。
 受付嬢の言葉である。


 えげつない言葉とはウラハラに、愛らしくネコ耳が頭上にてヒョコヒョコと動いている。


「いや、しかしですね……」
 と、オレは冷や汗が吹き出るのを覚えた。
 みずからの汗が、したたり落ちて、カウンターテーブルの上にシミをつくった。


「しかしも何もありません。勇者パーティは冒険者たちのなかでも、もっとも優れた者たちの集まりです」


「ええ」


「成果を出せない者が、勇者パーティにとどまることは許されません」


 そうしてオレは、勇者パーティから追い出される運びとなったのである。


 ☆


 これからどうするかなぁ……。


 とりあえずモンスターを倒さないことには、今日の収入がない。しかしモンスターを倒すことは、オレひとりのチカラでは成し遂げられない。


 なにせオレは強化術師エンハンサーである。


 仲間を強くして、仲間に戦ってもらうという、なんとも人任せな職業である。――なんて、いやいや、そんなことはない。


 ときに颯爽と仲間を強化して、ときに鮮やかに仲間を強化したり、そしてときには華麗に仲間を強化したりするのだ。……まぁ、仲間を強化するほかにすることはないんだが、決して無下にされて良い職業ではない。いわゆるまぁ、あれである。縁の下のなんとやらである。


「えい、くそっ」


 いまごろオレを追放した勇者パーティも、えんえんと泣きわめいていることだろう。いなくなって、はじめて実感するありがたみというヤツである。


『影ながら、あんなに活躍していたのか』『こりゃ参った』『ヤッパリ戻って来てもらおう』『うん、それが良い』……なんてことになって、そろそろ『戻って来てくれないか?』と、声をかけられるはずである。そしてオレは、鼻息を荒げて言い放ってやるのだ。


「いまさら戻って来てくれと言われても、もう遅い」
 と。


 なんて華麗なるザマァだろうか。


 しかし、待てよ。
 いまの自分の境遇を考えてもみよ。


 受付嬢から追放宣告をされて、ギルドの前の石段に座り込んでいる。さながら浮浪者である。今日の食費にも困っているありさまである。さながら――っていうか、ガチの浮浪者である。


 こんな状態で、「今さら戻って来てくれと言われても、もう遅い」とか言っても、それはただの強がりにしか見えないことだろう。逆にミジメである。


 華麗なるザマァ達成のためには、自分が相手より良い立場になっている必要があることが理想だ。


 そのためには、どうすれば良いか。


 オレは冒険者だ。モンスターを倒して名をあげる。これがイチバンの近道だ。でもオレは、モンスターを倒せない。だって強化術師だし。


「はっ」


 堂々巡りである。
 あやうく無限ループに陥るところであった。


「よし」
 掛け声とともに立ち上がった。


 とりあえずいっしょに戦ってくれる仲間が必要である。「オレは強化術師だから、君が戦ってね」という条件を呑んでくれる、都合の良い駒――ゲフン、ゲフン、仲間が必要なのである。


 まぁ、大丈夫だろう。


 なにせ元勇者パーティだ。追放されたとはいえ、そのブランドはなかなかのものがあるはずだ。


 オレのほうから勧誘する間でもない。むしろ、「うちのパーティに来てくれませんか」「いいや、オレのパーティに来てくれ」と引く手あまたとなるはずである。ほら。後ろを振り向いてみれば、いまにも勧誘がかかる……。


 ヒュゥゥゥ……――。
 むなしさを演出するような、一陣の風が木の葉をさらってゆく。


「なんだよォ、なんなんだよッ。オレは元勇者パーティだぞ。勧誘してくれても良いじゃねェか」


 怒鳴った。
 メッチャ小さい声で、誰にも聞こえないぐらいの大きさで怒鳴った。そんな鬱憤を大声で発する度胸は、いかんせんオレは持ち合わせていない。オレは、慎ましいのだ。


 こうなれば恥を忍んで、こちらから頭を下げるしかない。


「あ、あの。すみません。パーティの空枠とかありませんかね」


 冒険者ギルドに入ろうとしている、女性2人に声をかけた。パーティなら誰でも良いわけではない。美人だったから、声をかけた。つつましいオレにしては、なかなかの勇気である。


「はぁ? キモ。お荷物くんじゃん」
「ほら、行こ、行こ」
 と、オレの奮起など露しらず、女性2人はすたこらさっさとギルドに入って行ってしまった。


 嗚呼……無情……。


「ウォォォッ!」


 心臓破壊ハートブレイクと言えば、何かの技名みたいでカッコウ良いかもしれないが、要するにめっちゃショックである。傷つく。そんなことを言われたら、二度と立ち直れない。


 わかっていた。
 オレのお荷物っぷりは、勇者パーティのみならず、ほかの冒険者たちからも有名なのだ。


 こればかりは、マジメに言わせてもらうが、ギルドの制度が悪いのだ。オレは世界で最強の強化術師だ。1番目じゃなくても、2番目か3番目――まぁ、10番以内には入っていることだろう。


 しかし、強化術師というのは単独では評価されない。なにせギルドでは、「モンスターの討伐数」によって評価される。
 討伐数である。


 ンなもん、強化術師が不遇になるに決まってるだろ、ハゲ。そんな制度を決めたヤツに、まっこうからそう言ってやりたいね。まぁ、もちろん、イザそんなことを言う度胸は、オレにはないんだけどね。


「討伐数」が多いほど、世間も評価するわけで、強化術師も魔術師との二足のワラジという場合パターンが多い。


 じゃあお前も、魔術師やれば良いじゃん。誰もがそう思うことだろう。
 ふはは。残念である。
 オレは、強化術エンハンス全振り男なのだ。
 強化術のみを極めし男なのだ。ふはは。
 ……笑いごとじゃねェ

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