血の雨
5話
「あの子が気になるのかい?」
俺が一人でいる女の子を見ていると、シゲさんにそう聞かれた。
「やめときなー。 近付くと噛まれるよー」
「噛むって… 野良猫じゃないんだから…」
「そういう比喩ですー! もしかして冗談とか通じないタイプ?」
「港くんは冗談とかわかんないよ! ねー?」
「馬鹿にしてんだろ?」
詩音と茜と他愛のない話をしていると、いい匂いがしてきた。
「はーいみんなー! できたよー!」
そう言って大柄な女性が、給食の時によく見た入れ物を持ってきた。 すると、あの女の子が動き出した。
「手伝う」
「あらあら、いつもありがとね! すーちゃん! いつもの所に食器があるから持ってきてくれるかい?」
「わかった」
すーちゃんと呼ばれた女の子は、そのまま調理室の方へ行った。
あの子はすーちゃんと言うのかと思っていると、中本さんがこちらへ来た。
「君がもしかして雫の従姉弟かい? 凄く似てるから姉弟みたいだね! あっごめんね! おばちゃんったら自己紹介もせずに話しちゃって。 おばちゃんの名前は中本 恵(なかもと めぐみ)だから好きに呼んでおくれ!」
そう言って中本さんが挨拶の印に握手をしようと手を差し出してきたのだが、その手はシゲさんぐらい大きかった。
「ん? もしかしてアタシの手が大きくて驚いたかい? あはは! 皆同じような反応するからわかるようになっちまったよ!」
中本さんが面白そうに笑っていると、すーちゃんが食器を持ってきた。
「なぁすーちゃん、俺も手伝おうか?」
「「「「「!!!!????」」」」」
「…」
「「あははは!」」
何気なくそう聞いてみると、雫と中本さんは大笑いし、他のメンバーは驚いており、すーちゃんも目を見開いて驚いていた。
「…すーちゃんって呼ばないで」
「ん? じゃあ名前を教えてくれ」
「…」
「教えてくれなかったら何て呼べばいいか分からないから、すーちゃんって呼ぶことになるぞ」
「…」
すーちゃんは黙り込み、何かを考えてから口を開いた。
「…夜刀神 涼華(やとがみ すずか)」
「よろしくな、涼菓」
そう言うと涼華は顔を赤くし、食器を机に置き、自分の分だけ持って先程まで座っていた場所に戻ってしまった。
「おいおい、湊って天然たらしなのか?」
「なんだよそれ…」
「あの子の名前初めて聞いたかも… ていうか何さっきの反応!? 超可愛かったんですけど! あーし今日はあの子とごはん食べてくる!」
「あらあら、じゃあ私も混ぜてもらおうかしら」
「あ! 私も行く!」
「はっはっは! それなら今日は男3人で食べないかい?」
「それなら雫はアタシとだね」
「そうだな。 久しぶりに二人で食べるか」
各々が一緒に食べる相手を見つけ、好きな席に座ってご飯を食べ始めた。
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