魔王様、復活のお時間です‼︎

二葉 夏雨

【21時間目】魔王様、吸精しちゃうぞ❤︎のお時間です‼︎


「夏が旬の魚か……?」


「それはきす


「なんの成果も……得られませんでしたぁ〜。ふふっ」


「それはキ◯ス・シャーディス。いやノリ軽いし、いつまで進撃の◯人引きずってるのよ」


「昨日の夜に逢魔様に付けられました」


「それはキスマーク……ってええ!?そんな事してないよね!?あらぬ誤解生むからやめてよ!!」


さて、なぜ我々がマク◯ナルドでしょうもないコントを繰り広げていると言うと、

(ええ。みなさんと恋仲になってキスすることです)

───ついに聖良がなぜ僕たちが種田さんをはじめとする私立黒瀬川学園のホオズキクラスの少女たちに執着《しゅうちゃく》しているなんかこう書くと犯罪っぽく聞こえるよね、いや決してそういう意図がある訳じゃないよ。……ほんとだよ?ワケを話したから───なのだが。


「ちょちょちょ、それで私たちからその固有魔法を取り戻さなければならないって聞いたけどキス!?恋仲!?いろいろと知らない情報……というかえ!?頭回んないんだけど!!」


あのオールウェイズ冷静沈着れいせいちんちゃくな水原さんですらこんな状態である。
なおさら僕の固有魔法を取り戻すと、その前情報すら知らなかった奈賀井さんと坂口さんは驚天動地きょうてんどうち面持おももちで───いや普通にハ◯ピーセットで遊んでるわ。これノーダメだわ。いやノーダメどころかほぼ聞いてないわ。
てかそのうちはサ◯ケが印組んでるおもちゃチ◯クラ宙返りじゃねぇか!!一時Amaz◯nとかオークションとかで4000円上下する値段で(ある意味)一世を風靡ふうびしたおもちゃじゃねぇか!!なんで今持ってんだよ!?てかどっから手に入れたんだよ!!


「わっはっはっ。快活かいかつで充分充分!!ところで、逢魔君。その君の力を取り戻すために恋仲になってキスしなければならない、という訳は分かったがならば今すぐにでも君とキスをすれば能力が戻るのではないか?」


「そっそうよ!!だったら今すぐキスをすれば解決じゃない!!今すぐディープなやつすればいいのよ!!えぇ!!」


いや大の高校生がハ◯ピーセットで遊ぶのを快活っていうのこれ?
それと水原さんおかしくなっちゃったよ。混乱が行きすぎてもはやただのキス魔みたいなキャラになってるよ。
まあ、それはさておきその理由ってやつが、ね……。

僕がその理由を話すことを少し躊躇ためらっていると聖良が助け舟を出してきた。


「はい。確かに『なら今すぐ付き合ってちゅっちゅっすれば解決じゃね?』と思うとは思いますがそんな簡単にいかないのです。なぜならば……」


「なぜならば……?」


みんなの視線が自然と聖良に向く(あ、自然と視線をかけたギャグじゃないよ。たまたま!たまたま良い漢字に…あっ、違うからね!もうっ!)。

そう。言うならばここから本当の本当の本題なのだ───────


「恋仲になってキスをする……それは上っ面だけに体裁ていさいを保った関係ではげられないものなのです」


そう。
ただ体裁をつくろった関係で力が取り戻せない理由とは。

吸精エナジードレイン
おそらく聖良が今の今まで話してきたキスの下り(僕も父上の力がうばわれたと聞いた時は僕の知らない高等魔法か、はたまた違う世のことわりによって働く摩訶不思議まかふしぎな術かと思ってたけどね)はこの技の特性が"そう"であるからだろう。

元よりこの技はサキュバスやインキュバスといった淫魔系魔族《いんまけいまぞく》の得意とする魔法で僕も子どもの頃彼らによくからかわれたものだがその名の通り対象の相手にキスをする事によって相手の精気、ひいては魔力を奪うものなのだが───問題はここ。吸精の発動条件だ。つまり、とどのつまりは、相手が"自分を好きであらねばならない"という事だ。
そのためにインキュバスやサキュバスといった魔族は催淫さいいんをしてから吸精を行う。
故に淫魔系魔族ではない僕ら(催淫魔法はだいたい淫魔系魔族の固有魔法である事が多い)にとって吸精という技は発動するにも一苦労──発動しても僕みたいな魔力を無尽蔵むじんぞう貯蓄ちょちくする魔族にメリットは薄いためほぼ淫魔系魔族以外の魔族は使うことがない。

それに────問題はまだある。
それは相手の"固有魔法を奪う"特性のことだ。これは吸精の中でもさらに上級魔法に位置するものであり──否、秘伝、奥義、隠し技──と言われるほどの技であり、インキュバスやサキュバスの王族の固有魔法だ。
無論、聖良のことなので父上が力を奪われた当日に彼らを詰問きつもんしにいっているであろう。だがそれで『はい解決!』となっているならば僕らはここには居ない。つまりは───能力を奪った犯人は僕らが認知するメイベルの者ではないのだ。いや、あくまで僕らが認知している範囲での話なのでもしかしたら僕らが知らないだけでメイベルにこれほどの技が使える魔族、あるいは人族が居るのかもしれない。
未だにメイベルでは犯人探しに魔王軍の大半が費やされているらしいが見つからない当たり、聖良の予想はおそらく当たっているだろう。

犯人はこの世界にいる───聖良がこの世界に来る前に僕に言った事だ。

能力が奪われた当日、奪った犯人は父上にキスをしてすぐ自らが開けた時空の壁に消え去ったと言う。
その後、聖良たちがその時空壁の残滓ざんし辿たどったところ、この世界に繋がっていたらしい。
もしメイベルの人間が犯人であれば、わざわざ時空間移動魔法を用いていったんこの世界を訪れ、ここを経由してメイベルの僕らの城にアクセスしたと考えられる。
まあ不可能ではないしやろうと思えばやれるのだが───ここまで周りくどいやり方をすることはないだろう。それに例えメイベルの人間で"足がつかない"ように立ち回ったとすれば、こんな残滓などは残さないしわざわざ勇者がいるタイミングで仕掛けはしないだろう(なぜなら勇者には──否、勇者一族には強力で特殊な固有魔法があるからだ)。

感じられるはこの事件、やけに突貫とっかん性があること。
高等魔法を使い、魔王を催淫し、吸精で固有魔法を奪う。ここまで高度な事を成し遂げた割にはその作戦にどうしても生じるあらぬぐいきれない。
ここからは聖良の推測なのだが───その訳とはつまり、犯人がメイベルの人間ではなく、違う世界の人間、とどのつまり時空壁に残る残滓を辿った先である"この世界の人間"である、という訳だ。

でもまあ、奪った割にはその力を扱い切れなかったのか全くもって無関係な少女たちに渡ってしまったし、未だ僕らがこの世界に来てもなんらアクションを取らないあたり見失った固有魔法の行方を探している途中なのだろう。

犯人が僕らを見つけ出す前に能力を取り戻したいのだが──────


「なるほど……。我が盟友とちゃんと恋仲になってキ……ちゅーしなきゃならないのか」


「わ、私、今まで誰かと、その…付き合いとか……まったく……いや、その……」


「う〜〜ん。それは難しいね……。友達くん、今からちょっと私たちにアピールしてみてよ」


「わっはっは!私は私より強い人間が好きだ!だから逢魔君は私より強くならねばな!!」


───この4人と恋仲になるのはかなり骨が折れそうだ。


「それに生徒会長と残りの2人もいますしね」


「いやすっかり忘れてたわ」


☆迫る魔の手より前にオレたちの日常を取り戻せ!!──────


───────────────────────

【登場人物紹介】

●躑躅森 逢魔

魔王の息子で主人公。
今回は思った以上に地の文が多かったので語り多めになってしまったことに引け目を感じている。
それに語りの内容自体だいたい聖良の考えなのも気持ちがブルー。


●躑躅森 聖良

逢魔の幼馴染でお付きのメイドさん。
意外とクレバーな推理をしているもののその全てを逢魔に取られてしまった。
が、聖良自体は対して気にしてない。


●種田 冬火

1人目の能力持ち厨二コミュ障ぼっち少女。

Q.今回の話を聞いてどう思いましたか?
A.キ…ちゅーはした事ないからどきどきするぞ…!


●水原 さくら子

2人目のツンデレ貧相クラス委員少女。

Q.今回の話を聞いてどう思いましたか?
A.キ、キスとか私には早いっていうか……なんでもない!!


●奈賀井 風花

3人目の能力持ち奇想天外奇々怪界魑魅魍魎少女。

Q.今回の話を聞いてどう思いましたか?
A.どう思ったか?そりゃもちろん天ぷらが一番っしょ。


●坂口 杏子

4人目の能力持ち筋トレマッスル少女。

Q.今回の話を聞いてどう思いましたか?
A.私より強いやつに逢いに行く!それだけだ!わっはっは!


● キ◯ス・シャーディス

進撃の◯人に出てくる教官。ハゲ。

Q.今回の話を聞いてどう思いましたか?
A.(この作品に出演してないので未回答)


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