魔王様、復活のお時間です‼︎
【6時間目】魔王様、誘拐のお時間です‼︎
名門進学校(本当か?)の生徒会長様(本当か?)の名スピーチ(これは嘘)からはや1時間、僕たち生徒は入学式を終え午後からは自由時間だとそれぞれの担任から通達された。
かく言う僕もその自由時間、とどのつまり入学して最初の放課後を思う存分謳歌しようとここ、私立黒瀬川学園の中庭に来ていた。
聖良は何やら用事があるらしく、入学式が終わるやいなやどこかへ去っていった。
いやしかし、さすが(再三言っていて申し訳ないが)名門私立校だけあって中庭も形容し難いほどのバカデカさだ。
おまけにこの学園の創立者かなんかは知らないが2人の男女の銅像すらそれはもう立派にでっかく、そしてそれとなく豪華絢爛に立ってある。
この学園を建てた人間は限度というのもを知らないのだろうか。
「────おまたせしました。逢魔様。さて、これからどうしましょうか。能力奪還の条件として能力持ちの女性を口説いてオトす───これほど逢魔さm……男性にはかなり難しいと思われますが」
「ん?ちょっと待って!?今僕のこと言ったよね!?今完全に僕の名前言ってたよね!?いやなめんなよマジで!僕魔王だぜ!?そりゃ女の子の一人や二人オトしたことあるしぃっ!!」
「逢魔様。私は逢魔様と同じ日、同じ時に生まれ今の今まで共に、一時も離れず生きてきました。その時間の中で───」
「すみませんでした」
用事を終えたのか聖良が僕のところへ戻ってきた────そういえば聖良とはもう長い付き合いになる。
もはや竹馬の友などという言葉では表せないほど親密な間柄なので、隠し事などは到底できそうもない。
てか今の聖良の言葉めちゃくちゃ桃園の誓いみてぇだな。
春風が僕らの間を抜けていく。
その清涼感に僕はどこかセンチメンタルな気分をおぼえる。
そんなエモい雰囲気の中、空気をぶち壊す一因が─────
「ところで聖良さん?聖良さんの後ろにあるさっきからモゴモゴと動くだいたい小柄な女性が入ってそうな麻袋はなんなのです?」
「ああ、これですか」と聖良はぼそっと呟くとその麻袋に目配せするとそいっとかけ声を一言、一気に麻袋を開放した。
すると中から先ほど僕らと一悶着《ひともんちゃく》あった少女、種田 冬火が青ざめた顔でどさっと出てきた。
「ちょっと待ってください。まだ6話(+番外編1話)しか書いてないのに女児誘拐で連載終わりですか?このラノベ」
「いえ逢魔様、これは誘拐ではなく妖怪の仕業ですよ」
「それじゃあ聖良が妖怪になっちゃうのでは!?妖怪女児さらいですか!?いやとんでもねぇバケモノだよおい!」
と、僕らが会話をヒートアップさせているとやっと青ざめた顔を回復させた(てか青ざめるほど酸素無くしてたのかこの人!?)種田さんが慌てた、かつ涙ぐんだ様子で声を荒げた。
「お、お前たち!わ、私をどうするつもりだ……!?まさか私を煮て食べようという計画か!?うわぁああぁぁぁん!!」
「あ、すみませんでした。種田 冬火さん。私としても手荒な真似で連れてこようとは思ってもなかったのですが……」
ふぅと聖良が一息つく。
どうやらこうなったのには何かしら原因があるらしい。
「ただ、種田 冬火さんとお話をしようと声をおかけしてもすぐ逃げ出してしまい挙げ句の果てには掃除ロッカーに籠ってしまわれたので仕方なく……」
「壁山○吾郎かな?」
「そ、そうだったのか……!」
聖良の言《げん》を聞くと種田さんは今度は少し顔を赤らめ、身体をくねらせるともじもじし始めた。
どうやら種田さんの方も何か原因があるらしい。
「わ、私も、その……声をかけてくれたの嬉しいのだが………その………」
余裕を無くしたのか、厨二病口調と言葉尻が段々と薄くなっていく。
あ〜〜なんだか最初に会った時といい、さっき逃げ出したといい、この子はアレだな、アレ。
「種田 冬火さんはコミュ障で厨二病な上、ぼっちなんですね」
「っておいいいいいいい!!!!言っちゃあかんでしょそれ!!せっかく僕がちょっと言葉濁して聞こうと思ってたのに!!」
聖良の鋭い(てか容赦ない)口撃を受けると種田さんはぴゃあと泣き出してしまった。
そりゃ、そうだ。今朝出会ったばっかりの人間にここまでくそみそに言われてショックを受けない人間はいない(なんなら僕も今朝の仕打ちに泣いてもいいよね?)。
「ほ、ほら聖良。そんな事言っちゃダメっしょ。謝らなきゃ」
「ああ、すみません種田 冬火さん。───でも事実ですしお寿司」
「いや謝る気0じゃねぇか!!!どうすんだよこの状況!?てか思ったけど今回の話のタイトルひでぇなおい!他に無かったんかい!!」
「寿司だけにネタ切れですね………」
いや上手くねぇからぁっ!!!
どうすんだよこれ。種田さんはめちゃくちゃ泣いてるし、聖良はナチュラルサイコだし、オチつかないだろこれ……。
とりあえず種田さんには泣き止んで貰わなければ(絵面的にも)やばいよね。
「種田さん。ごめんなさいっ!こいつちょっと口が悪いとこあって……あ、でも多分悪気は無いんだと思うんだ!だからその、この通り!」
僕はそう言うと両手を合わし種田さんに必死になって謝罪した。
種田さんはぐすぐすと鼻を鳴らすと落ち着いたのか制服の袖でずびびっと鼻水を拭《ぬぐ》うと腫れて赤くなった目で僕を見つめてこう言った。
「う、うん……じゃあ……あの………代わりに一つ、お願い事聞いてもっても……いいですか……?」
「うんいいよ!なんでも言ってよ!できる範囲でだけど……」
「じゃあ私と……友達になって、ほしい……です……!」
予想外のお願いに僕は驚いた。
てっきりキャラ的に肝臓でも欲しがるのかと思ったけど、本当に欲しかったのは邪眼でも、疼く右手でもなく友達だったのだ。
てか健気すぎるだろ。
なんでその健気さで友達いないのよ。厨二病だからなんて思うけどそんなん可愛く見えるレベルでいい子だよこの子。
「もちろんだよ!僕は躑躅森 逢魔!こっちは妹の聖良、これからよろしくね種田さん!!」
僕が景気良く承諾すると種田さんは顔をぱぁっと綻ばせて周囲をぴょんぴょんと跳ねて喜んだ。
「私途中から空気でしたね……そういえば設定では私は逢魔様のお嫁さんではありませんでしたか?」
「いやそれ3話目の自己紹介の時の聖良の勝手な妄想だろそれ。嫁だって言う前に空気読めよ。空気嫁よ。僕ら一応兄妹設定なんだから。てか設定設定言ってるとちょっとメタ発言に見えるからやめよ?ここでいう設定は僕らが現世界においての設定だからね」
説明乙と聖良にぼそっと言われると今度は喜びの舞を終えた種田さんが駆け寄ってきて嬉々として僕に話しかけてきた。
「そういえば我が盟友は伴侶が今生一度も居なかったと聞いたが真実か?」
前言撤回。
厨二病とかじゃなくてこの無神経さがぼっちの原因だわ。これ僕泣いていいか?
すると聖良がずいっと僕の腕にしがみついてきた。
「いえ私が彼女です」
「もうこの際聖良でいいよ…………」
種田さんはそれを聞くと今度は口をあわあわし始め、分かりやすく頭をかかえた。
あ、これ嫌な予感。
「き、近親○姦……!?」
「やめてええええええええええ!!!!リライトしてええええええええ!!!!!」
☆ア○カンのリラ○トは神曲、異論は認めない────────
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【登場人物紹介】
○躑躅森 逢魔
魔王の息子で主人公。
最近、本編のあまりの話の進まなさと相変わらずツッコミ役不足に怒り心頭の様子らしい。
だが残念ながら今後もグダグダなのは変わらないらしい(作者談)。
○躑躅森 聖良
逢魔の幼馴染でお付きのメイドさん。
一応、現世界では逢魔の妹設定であるのだが作者がそれを3話目で明記するのを忘れていたために本話で急遽説明が足された。
だが本人的にはそれで良かったとのこと。
○種田 冬火
ホオズキ組にいる4人の能力持ちのうちの1人目。
小柄で童顔、小動物のような可愛らしい雰囲気を持つ少女だがその実、厨二病でぼっちで小心者でコミュ障な少女。
今までの人付き合いがほぼ皆無なため、割と無神経な発言をしちゃう健気な子。かわいい。
○ア○カン
神バンド。説明不要。作者はそのうちア○カンのトリビュートアルバムに参加するのが夢。
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