魔王様、復活のお時間です‼︎
【5時間目】魔王様、入学式のお時間です‼︎
一人目の少女──種田 冬火と名乗る少女(自称神託の勇者)と出会い、早くも僕らは固有魔法奪還の目処が立った。
それはまったくもって喜ばしい事なのだが僕はその成果を素直に喜べはしない、何故なら─────
「おい…お漏らししたやつがいるぞ……!」
「やだあの人あの歳にもなって……」
「肛門括約筋が弱いのかな?」
「草」
と、この様にあられもない陰口をいまだ名前も知らない同級生達から言われる顛末である。
「仕方ありませんよ逢魔様。アレはそもそも不可抗力でしたし、なおかつ一話目とあってインパクトが必要でしたから……」
まあ言うならばギャグコメのスケープゴートですよ、と聖良がフォローを入れてくる。
てか普通にメタ的な発言するの控えてくださらないでしょうかね…。後僕の独白にさも当たり前のようにツッコんで来るけどエスパーなのかな?
罵詈雑言《ばりぞうごん》の嵐の中、やっと入学式が行われる体育館に到着した。
やはり名門進学校と銘打つだけはあってとても立派な体育館だ。
かるくバスケットゴール20個ぐらいあるけどこれ発注個数間違えてませんよね?あれかな?スラ◯ンの安◯先生に絆されたミ◯チーみたいな選手が大量に居るのかな?
ホオズキ組と書かれたプラカードが立つ席に寄ると先ほどクラスで顔合わせた面々が早くも席を埋め尽くしており、ここが僕らの席だと確信する。
やたら広い体育館の一角、およそ3割だろうか、その区画に僕らはぎゅうっと、ではなくかなり余裕を持って座れている。
「さすが、名門進学校だけはありますね。あ、逢魔様。恐らく生徒会長であろう人が出てきましたよ」
隣との間隔《かんかく》はかなりあるくせに聖良は僕のほぼ真横に座り、腕を組みながら壇上のその先を指す。
そこにはおよそ生徒会長が、その腹心であろう二人の人間を連れ緊張した、否、何か今からしでかそうなそんな面持ちで教壇を見つめている。
「逢魔様。どうやらこの学校の生徒会長は代々入学式や卒業式といった晴れ舞台では名スピーチをする事で世間に名を馳せているらしいですよ」
なるほど。
僕は聖良の言に相槌を打ちながら事のいきさつを完全に理解した。
つまりは今からこの名門進学校様の生徒会長様が僕らの度肝をぶちぬくスピーチをするというのだ。
ならば今から300人近い新入生の前でスピーチをしなければならない生徒会長のあのちょっとドヤ顔混じりの顔は理解がいく。
なんだかオラワクワクしてくっぞ〜!
生徒会長が登壇する。
いよいよ聴けるぞ、そのスピーチが─────
「一般生徒のみなさん、こんにちわ────」
ん?一般生徒!?
「生徒会長の黒瀬川 咲葉です。まずはこの私立黒瀬川学園に入学した新たな仲間たちに祝言を────」
いや気のせいか、まさか生徒会長がやらかす訳ないよな。多分緊張で言い間違えちゃったんだろう。うん。
「お遊びはここまでだ」
「いや待てやおい!それドッキリGPの全校生徒800人の前で生徒会長と教頭先生どっちがウケるかの企画でインパ◯ス◯倉さんが考えた独裁者スピーチじゃねぇかっっっっ!!!!」
「逢魔様。声が大きいですよ。あと細かすぎて伝わらないモノマネみたいなツッコミになってますよ」
「いや実際そうだよね!?何やっちゃってくれてんのよ!?多分テレビ入ってないと思うから自主的なやつだよねこれ!?ああ、あれか!ちょっと入学式だからって面白爆笑スピーチしてやろうと思ってやってるやつだよねこれ!?悪いこと言わないからもうやめてくれやぁ!!」
突如僕の死角から大型分度器が飛んできた。
ずこがんつっ!軽快な音とともに僕は席に臥せた。
いってぇぇぇぇっっ!?何事!?これ僕の頭凹んでないよね!?目の錯覚で胚芽が取られた米粒みたいな頭に見える児ポで捕まった人みたいになってないよね!?
大型分度器が飛んできた方向を見ると案の定、僕らのクラスの(イカれた)担任である本庶先生がその眼を光らせながらこちらを睨みつけていた。
「逢魔様。つまりは黙って聴いてろやボケナス、って事ですね」
(たしかにそうだけどそこまで言ってないよね!?ちょっと聖良さんの私情入ってません!?)
と、アイコンタクトで聖良に送る。
どうせ僕の独白読んでんだから伝わるっしょ…。
そんな僕らをお構いなしに生徒会長は独裁者スピーチを続ける。
「────私が生徒会長になった理由は一つ、それはこの学園生活で友達を100人作ることです」
(いや原作に比べてだいぶマイルドになっちゃってるよおい!多分インパ◯ス板◯さんが考えたんじゃなくてジミー◯西さんが考えたスピーチなのかな!?)
「100人作れたら富士山の上でおにぎりを食べたいです─────」
(小学生かな?)
「でも毎回私はそこで思うのです────友達100人できたと言ってるくせに富士頂上では合わせて100人、つまり一人はおにぎりの具材にされてしまったと─────」
(いやそれ表現上の語弊だから!別に意味が分かると怖い話的な事じゃないからぁ!!てかなんのスピーチだよこれ!!)
「───そして私はその犠牲となった一人の友達のために、世界を滅ぼすのです、以上」
(いやちょっと待って!?最後急な転落よ!?フリーフォール並みの高低差だよこれ!?てかこんなスピーチ誰がマジメに聴いて───……)
僕は驚愕した。
こんな(クソみたいなパクリ劣化)スピーチで他の新入生たちが涙を流している事実に────。
ある者は頭を垂れ、ある者は涙で水たまりを作り、またある者は失神していた。
いやこのスピーチのどこにそんな感動性あった?
てかこのオチ3話でもやったよね?こんなに早くネタ切れることある?
「まあこの学園は共学ですし落ちなかったから入学出来た訳なんですよ逢魔様」
☆いや上手くねぇからぁっ!!────────
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【登場人物紹介】
○躑躅森 逢魔
魔王の息子で主人公。
誰がどう見てもツッコミ役。貴重なツッコミ役でなおかつ主人公なので非常に動かしやすい。ただそれ故に色んな不幸に見舞われるハメに。
頑張れ魔王、お前の明日は明るい(希望)。
○躑躅森 聖良
逢魔にお付きの幼馴染属性メイドさん。
基本逢魔にべったりで普通に恋愛感情旺盛。
の、はずだがどう見ても当たりは強い。本人曰くツンデレ。
○本庶 拓実
私立黒瀬川学園に勤める女教師でホオズキ組の担任。
一見ただのモブかと思いきや担任という美味い地位を使いありとあらゆる工作を経て、出番をもぎ取ってくる。そのバイオレンス性と手段の選ばなさで誰が呼んだか(自主規制)工作員と呼ばれている。
○生徒会長
私立黒瀬川学園の栄えある生徒会長様様。
生徒会長であるがゆえに人望を得たい一心で面白爆笑スピーチを考え(パクっ)てきたが実際ダダ滑りしている。
みんなが泣き喚いていたのは生徒会長のお人形さんみたいな顔立ちとその気品に感動していただけ。
ならそう説明しろやというツッコミはNG。
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