第7特区
第4話 少女と剥奪
あの裁判から2日が経った。私は、軍の候補生の称号はもちろん、民間の人権を剥奪された。つまるところこの国の国民ではなくなってしまったのだ。マイクロチップを取り除かれて、私は国外追放と言う名の刑罰に処される。
今日、私はこの国を出ていかなければならないのだ。
せめてもの許しで、最後の最後にお世話になったカラム学院の門の前に来ています。
「ハアア、ため息が出るよ。だからあれだけ言ったのに。でもそこがナギ君らしいというか。君らしいよ。」
「あー、まあ。私ぐらいいなくたって、この国は変わらないし、正直地下で暮らすとかさ、私は海を見たいかなあ。」
「”ウミ”って何ですの?ナギちゃん?」
あっそうか、シンリ君もナオミちゃんも知らないのか、
「んーそうだなあ。一言で言うとキラキラしてて、青くてしょっぱい。」
伝え方、下手か私!
「ナギちゃんはそんな私達が知らないようなことも知っていらっしゃるのですね。
最初は編入生だと言うから、貴族の出かと思いましたが、、でもこうやってお別れが来てしまうのですねえ。。。」
ううう、ナオミたん。いい子だったよなあ。私たち、候補生になって、ナオミたんが私と一緒の班だったら、どんなによかったか。
「ナオミちゃーん!!私、絶対に忘れないから!」
最後に彼女の胸を堪能しておこう。これはすごい、また育っている。
「私もナギちゃんの事は一生忘れませんわ!!」
それにこんな私のためにこんな124期の皆が!
「正直、初日でシチューやらかしたときはやべえやつだと思ったけど、今思い出せば伝説だよ!!ナギ!」
うう、これは素直に受け取っていいのだろうか。
「あっ、ありがとうゾローグ。」
「俺も、選定試験の時はお前を不意打ちしてごめんなあ。俺、後悔してんだよ。あの時のこと。」
うん。お前の顔は覚えてるぞサビ。絶対許さないからな。
「うっうん。ハハハっ、ぜっんぜん気にしてないから!」
他にもみんな、こんなに!!でも今思い返せば学校が一番マシで楽しかったかもなあ。最後に
レインに会いたい。
「ねえ、レインちゃんは、誰か知らない?」
「レイン?」
「レイン?」
「レインって誰だよ?」
「えっ?ちょっみんな、何言ってんのさレインちゃん!シルバーブルーのショートカットで、ヘアピンをしてるの。小柄で、いつも本を読んでて、ちょっと無愛想だけどそこがまた可愛いって言うか、ねえ。」
何これ、みんな忘れちゃってるの。とんだ、劇だったってわけ? もういいわよ。
「あっうん。なんでもないの。とにかくみんなありがとう。私、もう行かないと。」
「じゃあ僕が4層まで、送っていくよ。」
そうシンリ君に言われて、エレベーターに乗り込み、4層の奥まで来た。会話は無かった。
「もう大丈夫。ひとりで行くから。」
「わかった。ナギ。じゃあ僕はこれで。」
そう言うと、シンリ君は帰って行った。心なしか、彼が笑っていた気がする。
いやーしかし、これは私の物語の第2幕って感じかしら?
天才エリート美少女は国を追放されましたが、異世界の新たな土地で逞しく生き抜きますよっと。そう言うことでしょ?これは私の物語だ。
大きい門を開ける。任務の時以外には来ない門。内側から開けるのは簡単。でも外側から、開けるのは困難を極める。だから。私たちが守ってたんだっけ。あっ、私とレインだけか。
「本当に行くのかよ?」
「当たり前でしょ〜、もうこの国に私の居場所はないのよ。」
「お前、いつか言ったよな。また、私の後を追って、追いつけばいいって。」
「そんな遠い昔のこと忘れちゃったわよ。今更、何よ。お別れをわざわざ言いに来てくれたの?」
「なんつーか、俺まだ英雄には程遠いんだよ。ってかお前にも差をつけられたままだし、だから。」
「もういいわ、私。行くから。」
「お前に追いつけるように!着いていくんだよ!!」
私はこの少年を知っている。もしあの時の男の子なら、前歯が欠けている。
でも素直に嬉しかった。少しホッとした自分がいる。ただ、
「ストーカーかよ!!!」
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