第7特区
第32話 少女と夕暮れ
「ねえ、元気だしなよ。マシュー。」
「あっ、ああ。」
それから数日間。マシューは体調不良という理由で学校に来なかった。今日やっと来たと思ったら、死人のような顔をしている。
「レインちゃんもなんか言ってあげてよ!っていうか私の順位なんかレインちゃんのおかげだし、あれがなかったら、絶対最下位だったんだから!ねえ!レインちゃん。」
「確かに、貴方らしくもないですね。ですが、あいにく死体に話しかける言葉はありません。私も忙しいので、では。」
「ちょっ、レインちゃん!あー行っちゃった。マシュー実はね、私、チップ足りなくて、、
最後の最後にレインちゃんの辞書型フレームの鏡の能力で増やしてみたの。
そしたら、それを運がいいのか、ちゃんとスキャンしてくれて、離脱できたんだよ。もー、レインちゃんったら、そんなところ盲点だったって!!真面目だよね!でさあ、本当にすごいのは、」
「****、め、めて。」
「えっ、何?」
「やめてくれ。もういいんだ。もういい。俺は降りる。」
「何言ってんの??あんた、ばかでしょ!ここまで、がんばってきたんでしょ!見てよ、この学校の時計塔から見えるあの夕焼けを!!いいえ、凄まじくひかる淡い電球の光を!!あんぐらいあんたの心は燃えてた!今も、燃えてるじゃない!!」
「ああ、そうだな。もういいんだ。俺にはダメだった。知ったんだよ。」
「だから、何があったのよ!!あーもう、そう言う男子って本当ーになんかこう、」
「痛っ。」
私はマシューの頬を思い切りビンタした。威力を放ったそれのせいで、彼の歯がかけてしまったらしい。
「あっ、ごめん。歯が、いや。そんなつもりは。」
「いいんだ。まあ、そうだな。ナギには話しとくよ。俺は山岳地帯がスタート地点だった。」
時計塔でマシューの話を聞くことになった。
***
「はあっ、はあっ。何だあれ、チクショう!あの時のアンドロイドか!こっちはもうそろそろ限界なんだよ!」
(奴が間合いに入った瞬間に斬る。後、1m、70cm、50cm。きた!!)
「斬った!真正面!いくら、硬くてもちゃんとした手応え!それに、」
(なっ、何だと!?切られたところの枝が再生してる?いや、違う?核に届いてなかったのか?くそ、剣が!)
「けどな、不意打ちは得意だよ、俺は!!」
(上からの一線。相手の視界と意識はこっちに完全に集中している。絶対に外せない!!ゼロ距離からの降剣!!)
「グギャアア!!」
「さすがに破壊したな。けど。俺もリンク限界が近い。さっさと、後1枚チップを集めて離脱する。」
(!!なっ、何で、お前が正面にいるんだ?)
「なっ、何が。さっきそこで斬った。消滅しただろ。お前は!!」
「グギ??」
(くそ、まずい。腕を掴まれて、ぐうう痛い!握り潰される。)
「そんなっ、この距離からの爆発!?」
(この距離から!死ぬ、回避できない!)
***
「その後、俺は意識を失っていた。気づいたら、病院のベッドで寝てたよ。」
マシューの方にも出てたのか。あの植物め。
「うーん、でもそれで最下位っていうのはあ、」
「コルネロから聞いたんだ。あいつは、気絶した俺を見つけて助けようとしてくれたらしい。」
「で、コルネロ君に助け出されたの?」
「いや、シンリだよ。コルネロから聞いた話だから正確にはわからないが、シンリがそのまま、爆発を止めて、そいつを切り刻んだ。一瞬でな。その後、
”コルネロくん。これは君がやった事にしていいよ。後は僕が全部やっとくから。じゃあ。” とか言って、山の奥へと消えていったらしい。」
シンリ君って私、一度もあった事ないかも?選定試験の時にもそんなこいたかなあ?
「ねえねえ、シンリ君ってどんな人?」
「どんな人って、うーん。髪が白くて、目が赤い目をしているような?不思議な奴だよ。俺もほとんど学校では見かけない。でも、実力は確からしい。」
「へえーそんな子がいたら、否応でも私の目に付くはずなんだけどなあ。うん。」
「そんなところで。俺はもう諦めた。」
「何で!?まだ本試験が残ってるでしょうが!!」
「無理だ。最下位の序列になっちまった。例え万が一、次のテストで最高点を取れても上位7名には入れない。それに、俺の片方の剣型フレームが反応しなくなっちまったんだ。失態だよ。」
「でも、軍には入れるんでしょう?ここを卒業したら。」
「ああ、でもやる仕事は街の警備と巡回、もしくは学校の教官とかだよ。任務にはつけない。簡単に死ぬからな。」
「そんな。。。」
マシューにのしかかった現実は相当なものだろう。私は、でも自分の地位を譲る気はない。
「まあ、バカマシューはさあ。上がってきなよ。」
「はっ?」
「だから、また、1から私に追いつけばいいのよ!!その為なら、あんたの訓練とか手伝ってあげてもいいのよ!!この、ナギ様がね!」
「何言ってんだよ、もしお前が候補生として軍に入隊したら、役職は完全に違う。俺らはもうほとんど合わなくなるだろうが。」
コイツねちっこいなああ!!こー言うところあるんだ。ちょっと、見損なったわよ。
「諦めるの?だから、それで。諦めるの?あんた、英雄になるんでしょ?アンタの中の英雄ってそんなもんなの?あの時のあんたは、もっと違った。こんな、、こんなところで、、もっと勝負しろよ!! マシュー!!」
「ナギ。お前 は 本当に、、、クソバカで変な奴だよ。」
マシューに、一喝を入れてやった私たちを天井の太陽が照らし続けてくれてた。
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