ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜
45話 救出作戦
「さて…お次はどうするのじゃ?」
ウォタの帰還を喜ぶメンバーに、再び問いかけるゼウス。
確かに彼の言うとおり、やることはまだある。そう考えてイノチは立ち上がると、ゼウスに向かってこう告げた。
「あと1人、仲間がまだ捕まったままだからな。もちろん、助けに行く。」
「そうか…だが、急がねばクロノスたちがまた来るやもしれんぞ?」
ゼウスはひげをさすりながらそう告げたが、イノチはそれを鼻で笑った。
「それは大丈夫じゃないかな…ログアウトする時に、奴らのアクセ権限を削除しといたから。当分はこの世界には来れないんじゃね?それにさ、ヘルメスさんはこっち側なんだろ?だったら、時間を稼いでくれるんじゃないの?」
「ふむ、そこまでちゃんと考えておったか。さすがじゃな。」
「はっ…どうせ知ってたくせに…白々しいな。」
感心するゼウスの言葉に肩をすくめるイノチ。それから仲間たちの方を見てこう告げた。
「さてと…作戦続行と行きますかね。その前に、みんなには伝えとくけど、俺のハンドコントローラーはまだ万能ってわけじゃないから。戦いが苦手なのは変わらないから、その辺は理解しといてね。」
「あれで苦手…?よく言うですわ!」
「ほんとほんと♪BOSS、カッコよかったよぉ♪」
皮肉っぽく告げるフレデリカと嬉しそうに笑うアレックスに、イノチは苦笑いを浮かべる。
「確かに、このハンドコントローラーはなんでもできるんだけど…それには"コード"が必要なわけ。その事象を発生させるためのコードを知らないと、何もできないんだよ。」
「なんだかよくわからんが…我との戦いで時間を操ったのがそれか?」
ウォタの言葉にイノチは「ご名答。」と指を差す。
「あれは空間把握と時間操作のコードを書き換えて、俺とウォタの間に時間的なズレを起こしたわけ。」
「でもさ、時間を操れるとか最強じゃない?それを使えば、エレナさんも簡単に助けられるんじゃ…」
今度はミコトがそう問いかけるが、イノチは首を横に振る。
「残念ながら、空間把握も限定的にしか使えないから、狭い範囲でしか時間操作も使えないんだ。あれはウォタが操られていて、動きが単純だったからできたことなんだよ。」
「ならば、クロノスたちのように、どこかへ飛ばしてしまうのはどうじゃ?」
「なんであんたが質問する側にいんだよ!」
ゼウスの言葉を聞いてツッコミを入れるイノチだが、ゼウスは笑って誤魔化している。それを見て、イノチはあきれたように大きくため息をつくと、再び説明を再開した。
「クロノスたちからはアクセス権を剥奪しただけで、俺が直接的にどこかへ飛ばしたわけじゃないからな。」
「アクセス権を…?剥奪…?もう少しわかりやすく説明してほしいですわ。」
そう腕を組むフレデリカの横で、アレックスや他のメンバーも頷いている。
「う〜ん…そうだなぁ。この説明は少し長くなるから、今は簡単に説明するとだな…わかりやすく…わかりやすくねぇ…」
イノチは頭を掻きながらこう告げた。
「このゼウスのおっさんもクロノスって奴らも別の世界の人間で、この世界に来るためには"通行証"みたいなものを持っている。それを奪い取って元の世界へ強制送還してやったのさ。だけど、アルスたちはそれを持ってないから、同じことをするのは無理…こんなんでわかるかな?」
アレックスはちょっと理解が追いついていないようだが、フレデリカは納得したように頷いていた。だが、疑問は残っているようだ。
「別の世界…それがいったい何なのかが気になりますが…今は我慢いたします、ですわ。」
「助かるよ、フレデリカ…」
イノチはそう小さく呟くと、再び話し始める。
「という事で、アルスたちが襲ってきたら、みんなに対応してもらわないといけないってこと。情報によると、エレナの父ちゃんもいるし、ランドール家の執事やメイドもけっこう強いらしいからな。どうやってエレナの元へ行くか…なにか作戦を考えないと…」
そう悩むイノチを見て、ウォタが口を開いた。
「単純に陽動で良かろう。」
「陽動…?」
「そうだ。我らがグループに分かれて屋敷へ侵入し、周りの注意を逸らしているうちに、本命はエレナの元へ向かう…そういうことだな。」
「でもさ、そんな単純な作戦でうまくいくかなぁ…」
「いくと思うぞ。」
「それ…お前の感覚で言ってないよな?ウォタの強さを基準に考えられても困るんだが…」
イノチは不安が拭えないのか、ウォタへその理由を問いかけるが、ウォタは自身ありげにこう告げた。
「我が何も考えとらんみたいに言うでないわ!奴らは、今回のことを与する神たちに任せきりにしとる。まさか、神が敗北するとは思っとらんだろうから、対策なんて立てとらんはずだ。だから、陽動程度の作戦で十分なのだ。」
その言葉にイノチはなるほどといった表情を浮かべた。ウォタも誇ったように腕を組み、鼻を高くしている。
「それなら作戦はそれで行こう。アキンドさん、屋敷の地図を見せてもらえますか?」
それを聞くや否や、待ってましたとばかりに一瞬で地図を広げるアキンド。そして、すぐさま説明を始める。
「このまま向かうと、屋敷の西側に着きます。エレナさまのお部屋は、おそらく東側のこの辺りと思われますので、陽動であれば、屋敷の西側と正面の二方向から仕掛けるのが良いでしょうな!」
「なら、救出部隊は屋敷の裏側を通って、この東の塔に向かう。それでいいかな?」
アキンドは「それが妥当でしょう。」とうなずいた。すると、今度はフレデリカが質問を投げかける。
「グループ分けはどういたします?エレナの父やアルスがどこにいるかで変わってくると思いますが…」
それについても、アキンドが嬉しそうに頷いて応えた。
「あくまで推測ですがね…エレナさまのお父上であるクリスさまは、西側に書斎を構えております。ですから、西側か正面側に向かわれるかと…ただし、どちらかに確定させるのは難しい。ですが、あの方も元はフェーデを名乗られていた方…戦局を見極める目はお持ちです。」
「なるほどですわ…」
アキンドの答えにフレデリカは少し悩んだが、ミコトをチラリと見て、何かを決心したかのように口を開く。
「ならば、こうしましょう。私とアレックスは正面から、ミコトとゼンさま、メイは西側から仕掛けます。」
「なら、我とイノチが救出部隊であるな。」
作戦の中核だと知り、ウォタは嬉しそうな顔を浮かべた。だが、イノチがフレデリカに理由を問いかける。
「フレデリカの考えを否定するわけじゃないけどさ…一応、グループ分けの理由だけ聞いてもいいか?」
フレデリカは小さく頷いてそれに答え始めた。
「まずは東側、ここにはアルスがいる可能性が高い。ですから、ウォタさまをぶつけます。現状では、ウォタさま以外に彼に勝てる者はいませんので…。」
「それは確かにな…」
イノチもそれには納得した模様に首を縦に振り、それを確認したフレデリカは、なおも説明を続けていく。
「次に正面…作戦の始まりはここです。初めに私とアレックスで大きく暴れます。そうすればクリスの目はこちらに向くでしょう。そして、頃合いを見て西側にミコトたちが突撃します。クリスは冷静に戦況を見極めようとするはずですが、ミコトとゼンさまには初め、スキル無しでいてもらいますので、おそらくはわたくしたちを重要視するはずです。」
「なるほど…突然、西側に脅威が現れるわけか!いいね!そういうの大好き!!」
イノチは作戦の全容を把握して面白そうに笑った。ミコトもメイもアレックスも、皆理解したと頷いている。
すると、アキンドがテンションを高くして大きく叫んだ。
「燃えてきましたなぁ!!それでは、エレナさま救出作戦、開始と行きましょうぞ!!」
その声に全員が拳をかざして声を合わせる中、ゼウスは一人、小さく笑みを浮かべていた。
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