ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

20話 想い、想い、おもい…


「うひぃぃぃ〜生き返るなぁ〜」


温泉に肩まで浸かって、イノチはそう大きくこぼした。

サザナミまで戻ってきたイノチたち一行は、アキナイの計らいにより彼が経営する宿屋に一泊する事となった。

ジパン行きの船はすでに出港してしまったが、アキナイの商船に乗せてもらえる事となり、今日一晩はゆっくりさせてもらうことにしたのだ。


「やっぱり温泉は日本人の心だよなぁ〜」


そうつぶやきつつ、口まで浸かって気持ちよさそうにブクブクと泡を吹くイノチ。


「エレナたちはモエさんに別の温泉に案内されてるから、今日は邪魔されることもなく、安心して温泉に浸かれる…まさに至極恐悦だな。」


モエというのは、アキナイの元でメイドを務める従者で、メイの母親でもある。

アキナイの元へと帰ってきたイノチたちをすぐに部屋へと案内してくれて、そのまま温泉で疲れを癒すことを提案してくれたのだが…

素晴らしい気遣いを見せるところは、さすがはメイの母親と言ったところか。


「いや…逆だな。あの母にしてメイさんあり…うん、これが正しい!」


イノチはそう言って大きく笑った。
ちなみにセイドも誘ったが、素顔を見せることが嫌なようで後で一人で入ると言って聞かなかった。

イケメンのくせに、顔がコンプレックスとか贅沢すぎる。

そんなことを考えながら空を見上げれば、満点の星空がキラキラと輝いている。


「とりあえず、リシアの件はひと段落だ。不安要素はたくさんあるけど…次はジプトだな。」


イノチはそうつぶやき、静かに目をつむった。

浮かび上がるウォタの顔…彼と過ごした時間は決して長いわけではない。

しかし、彼と過ごした日々は楽しく、イノチの中ではかけがえのないものとなったことは間違いない。


「待ってろ…ウォタ。必ず生き返らせてやるからな。」


そうつぶやくイノチ。
その想いに反応するように星空に一筋の流れ星が落ちて…消えた。





「この温泉、まっじで最高だわ!!」


湯船に浸かって偉そうにエレナがつぶやいた。
その隣では、フレデリカとアレックスもゆったりと温泉の味を堪能している。


「そう言っていただけて嬉しいです。湯加減はいかがです?」


少し離れたところで同様に温泉に浸かるモエの問いかけには、フレデリカが答えた。


「完璧ですわ!」

「ほんとほんとぉ♪とっても気持ちいいよぉ♪」


とろけそうに答えるアレックスも、まるでハムスターみたいにフニャフニャになって笑っている。

そんなアレックスの姿を見たモエはクスリと笑った。


「ここは『癒しの湯』と呼ばれていて、サザナミで唯一、天然の温泉が使われています。この街は海に隣接していますが、付近の海域は海底火山が活発で、その熱に温められた海水が地上に湧き上がるんです。」

「自然から産み出される賜物の恩恵に授かる…実に素晴らしいですわね。」

「本当よねぇ!だから温泉はやめられないのよね!!」


エレナはそう言って立ち上がると、眼下に広がる景色に目を向けた。

そこには、暗闇に広がるサザナミの夜景が広がっている。

山の中腹に位置するここ『癒しの湯』は、アキナイが経営する温浴施設でもある。

エレナがその街をじっと見つめていると、横にフレデリカが立ってつぶやいた。


「ここでの戦いも終わりましたですわ。」

「そうね…次はジプトかしら。」

「……ですわね。」

「あんたも思うところはあるんでしょうけど…」

「そんなことないですわ。ウォタ様を生き返らせたいというBOSSの想いは尊重しませんと…」

「そうね…」


いつのまにか横にアレックスも来て小さくうなずく。
そのまま、三人は静かに夜を営むサザナミの街を見つめていたのだった。





「アヌビス…元気だしてよ。」


守護女神であるウェネトが、アヌビスにそう声をかけた。
本を読んでいたアヌビスは兎顔を悲しげに歪ませるウェネトの言葉に振り向くと、小さくため息をついて本を閉じる。


「はぁ…大丈夫だよ、ウェネト。僕は落ち込んでなんかいない。」

「嘘だよ。だって最近ず〜っと表情が悲しそうなんだもん。」


その言葉を聞いたアヌビスは、いっそう大きなため息をついた。

ウェネトは相手の感情の変化にとても敏感だ。
彼女に隠し事ができないことはよくわかっている。

わかっているが、認めたくないのだ。

ゼウス…いや、正確にはロキに嵌められて、ランク戦の参加資格を剥奪された。

その事については特には問題ない…自分はランク戦などというくだらない遊びには興味なんてないからだ。

だが、ほかの神たちは違った。
皆、ランク戦を楽しみにしていたようで、会う度に口々に文句を浴びせられたのだ。

アヌビスはその事が我慢ならなかった。

管理する国を守るために動いた事が間違いなのか…否、そんなことはあり得ない。

どの世界であっても、管理を任された国に対して責任を負うべきてまあることは当たり前だ。

ーーー自分は間違ったことはしていない!

そう声を大にして言いたかったが…冥界の神としてのプライドがそれを許さなかった。


「くそ…」

「気にしちゃダメだよ…アヌビス。私は貴方の味方だからね!」

「…うん、ありがとう。」


ウェネトの優しさのおかげで、ぐちゃぐちゃにかき回されていた心が少し落ち着いた。


ふぅっと息をつき、アヌビスはウェネトは視線を向ける。


「ところでウェネト。一つお願いがあるんだけど…」

「なになに?アヌビスのお願いならなんでも聞くよ。」


頼られた事が嬉しいのだろうか、胸を張って鼻を高くするウェネトを見て、アヌビスは小さく笑った。


「助かるよ…君の得意なことだから、簡単だと思う。」

「私の得意なこと…?」

「あぁ、そうだ。ゼウスたちを探ってくれる?奴らの狙いとこれからの動きが知りたい。」

「なるほどね!そういうことなら任せてよ!」


拳を突き上げるウェネトの横で、アヌビスは笑いながらいくつかの青く燃える魂を手元に並べた。


「僕の手札は…これ。君には少し働いてもらうおうか。死者を利用するのは好きじゃないが…君は奴らの仲間だしね。」


青白く燃える炎。
その中には静かに眠る青き竜の姿があった。

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