ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

39話 負けたら即クビ


「ここだな。」


アカニシは大きく口の開いた洞窟を見上げた。


「ここっすかぁ!これが『ラビリスの大空洞』ですか!でっけぇなぁ!!」


横では、一緒についてきたセイドがそれを見上げて感嘆の声を漏らしている。


「遊びにきたんじゃねぇ。さっさと行くぞ…。」


アカニシが振り向くことなく鎧を鳴らしながら歩みを進め始めると、セイドもキョロキョロとしながらアカニシに続いた。


「ここが神獣さまが住む洞窟なんすねぇ。」

「ふん…神獣さまじゃねぇよ。ユニークモンスターだ。」


洞窟を進みながらアカニシは鼻を鳴らす。


「ユニークモンスターって強いんすかねぇ?俺、やったことないんすよね。」

「知らん…俺もやり合ったことはないからな。」

「そうなんすねぇ!会えたら戦ってみたいっすねぇ!」

「今日はそれが目的じゃねぇぞ!わかってんだろうな!?」


アカニシの言葉にセイドは兜の下でニヤリと笑った。


「わかってますよぉ!へへへ、奴らと戦っていいんでしょ!?」



嬉しそうに笑うセイドの声が洞窟内に響き渡った。





「なぁ〜んか洞窟の雰囲気が変わりましたね…副団長。」


セイドは辺りを見回しながらそうつぶやく。
周りは光苔で明るく照らされ、整えられた石材が一律に並んでいる。


「そろそろって事なんだろ?ここまで、まだあいつらに会ってねぇってことはここより奥にいるんだ…おい、いくぞ!」


子供のように楽しげに周りを見渡しているセイドを見て、イラつきながらアカニシは声を荒げた。


「へ〜い…」


面倒くさそうに後に続くセイド。
洞窟の角を曲がろうとした瞬間、突然アカニシの腕が目の前に出てきて立ち止まった。


「おっと…どうしたんです?副団…」
「シッ!」


振り向かず人差し指を口の前に立たせて、角から先の様子を伺うアカニシ。

セイドもその先を静かに覗き込んだ。



「ケンちゃん…本当にいいのかなミノ。」

「ん…いいんだよ。あいつら強ええからどうせ勝てないし、とりあえず言うこと聞いときゃ殺されないみたいだからな。それに…」

「それに…?」


ミノタウロスがケンタウロスの言葉に首を傾げる。
ケンタウロスはそれを見てニヤリと笑みを浮かべた。


「あいつらと一緒だと楽しそうだろ!!」


ミノタウロスもそれを見て興奮したように鼻息を吐き出した。



「あいつら…モンスターっすかね?」

「そのようだが…」

「なんかしゃべってません?」

「あぁ、しゃべってるな…」


洞窟の先で座り込んで向き合ってしゃべる2匹の異形の様子を、アカニシとセイドはこっそりと伺っている。


「しゃべるモンスターなんて見たことないっすね…てことはあれが…」


セイドの言葉にアカニシは舌打ちした。


「チッ!ユニークモンスターに先に会っちまったってことだ。めんどくせぇ…」

「ここは一本道…てことは、奴らを倒すかかわすかしないとあいつらに借りを返しにいかないってことっすね。」

「そうだな。しかし…」

「あっ!もしかして副団長、ロノス団長の言葉が気になってます!?」


悩むアカニシを見て茶化すセイド。
アカニシはそれにイラついて声を荒げた。


「うっ…うるせぇ!うちのクランは団長命令は絶対なことくらい知ってんだろうが!」

「そうですけど!でも〜ここには黙って来てるじゃないっすか〜!すでに背いてんだから、ほかに一つや二つ増えたって変わらないっすよ〜ハハハハ!」

「てめぇはなんで団長に許されてるのかわからねぇ…くそっ!」


アカニシはそう言うと角から飛び出して大声を上げた。


「そこの化け物ども!!てめぇらに聞きてぇことがある!」

「おっ!BOSSの言うとおり本当に来たぜ、ミノタ。」

「だね、ケンちゃん。でも、どっちもあまり強くなさそうだミノ。」

(BOSSの…言うとおり?あいつら何言ってんだ?)


アカニシの後ろに立つセイドは、こちらにに向き直りながら小さく話しているユニークモンスターたちの言葉に疑問を持った。


「てめぇら、ここに誰か来なかったか?!素直に言えば痛い目に合わずに済むぜ!!」

「ここにかぁ?誰も来てないよなぁ、ミノタ。」

「うんうん!誰も来てないミノ!!」

「嘘をついてもいいことねぇぞ!!誰か来ただろうが!こっちはここに来た奴らがいるってことがわかってんだ!!」


その言葉を聞いてケンタウロスはニヤリと笑う。


「ごちゃごちゃ言うなよ。俺はケンタウロスでこっちは…」

「ミノタウロスだミノ!!」

「…だ。知りたいことがあるなら俺とこいつを倒してみろよ!」


悪戯に笑いながら挑発した挑発した態度をとるケンタウロスを見て、アカニシは完全にキレた。


「…なめやがってぇ。おい、セイド!準備しろ!あいつらボコボコにして情報を聞き出すぞ!!」

「へいへい…でも、あいつら強いですからね。副団長、油断しちゃダメっすよ。」

「ごちゃごちゃ言うな!!続け!!ぶっ潰す!!」


笑っているケンタウロスたちに対して、赤い鎧を鳴らしてアカニシは飛びかかった。





「おー。ケンタウロスたち、やり始めたみたいだな。」

「どんな感じなの?あいつらは…。」


イノチが座って眺めるウィンドウを、エレナが上から覗き込む。


「相手の二人もけっこう強いみたいだな。今のところ互角にやり合ってるよ。」

「ふ〜ん…まぁ負けたらそれまでだしね。」

「そうですわ。負けたら即クビ!あいつらもよくわかってるでしょうから。」

「そうそう、負けたら必要ないって言ってるから、あいつら死に物狂いでやるんじゃない?」

「おっ…お前ら、いつの間にそんな事伝えてたんだよ…。」


ニヤニヤしているエレナとフレデリカを見て、苦笑いするイノチ。


「大丈夫だよ♪ミノタっちは頑張るって言ってたよ♪」

「アレックスも何か伝えたのか…?」

「うん♪」


アレックスは嬉しそうに大きく笑う。


「頑張ったらご飯一緒に食べようねって言ったら、ミノタっち鼻息荒くしてたもん♪」

「意外に純粋無垢だな…迷宮に閉じ込められていた怪物というレッテルは剥がしておこう…。」


イノチは気を取り直し、再びウィンドウに目を向けた。

青い点と赤い点が2組に分かれて近づいたり離れたりを繰り返している様子がうかがえる。

青はケンタウロスとミノタウロス、赤は迷宮に入り込んできたプレイヤーであるのだが、この状況はイノチが作り出したものだった。

イノチたちがケンタウロスたちとの話を終えた直後、探索機能をつけたマップにアラートが鳴った。

マップに付け加えた探索機能には、イノチが認識していない者が近づいた際にアラートがなる仕様もつけているのだが、それに気づいてウィンドウを見ると、知らないプレイヤーが二人、このラビリスの大空洞に入り込んできたことがわかった。

そこでイノチはケンタウロスたちにこう告げた。


「お前らの強さを確認させてくれ。」


ケンタウロスたちはそれを聞くや否や、「まかせろ!」と言って飛び上がったのだった。


「さてと…二人が簡単に勝てるようなら嬉しいけど…」


画面を注視するイノチはニヤリと笑う。


「よろしく頼むよ。二人とも…」

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