ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

番外編 回転戦隊 アンリミテッド


ちょっとした間話です。
楽しんでいただけたら幸いです。

これは物語とは少し違った時間軸でのお話。




「みんな、揃ってるな!」


イノチはテーブルに両手を置くと、イスに座っている顔ぶれをぐるりと見回した。
食堂のテーブルには、ミコト、タケル、トヌス、ゲンサイの四人が座っている。


「いったい何なんだ!突然呼び出しやがって!」


テーブルに載せた足を組んで、ゲンサイが悪態をついてくる。


「ごめんごめん。実はさ、今日はみんなにお願いがあって集まってもらったんだ。」

「お願い?」


首を傾げるミコト。
その横で頬杖をつくタケルが口を開く。


「イノチくんが頼みごとって…なんかありそう。」

「確かにだぜ。だんなの頼みごとってのは、いつも変なことばかりだからな!」

「おいおい!変なことって…別におかしなことを頼んでるつもりはないんだけどなぁ。」


タケルに同調するトヌス。
それに対して一度は首を傾げたイノチだが、気にすることなく話を進めていく。


「まぁ、それは置いといて…まずみんなに聞きたいんだけど、子供の頃に憧れたヒーローってなに?」

「ねぇ。」
「ないよ。」
「ねぇな!」
「ない。」


イノチの言葉に、皆は興味なさげにさらりと答える。
一人でずっこけているイノチのことなど、まったく見ていない。


「ちょ…ちょっと待って?みんな少しくらい覚えてたりするよね?男の子だったら◯◯ライダーとか、◯◯◯ジャーとか、◯◯◯マンとか、宇宙刑事◯◯ンとか!ミコトだって、◯◯キュアとか、◯◯ムーンとか!いっぱいあるじゃん!興味くらい持ったことあるだろ?!」


必死になるイノチを見て、他のメンバーは顔を見合わせた。

今の会話からわかるように、イノチは子供の頃からヒーローが大好きで、単独ヒーローから戦隊モノ、はたまた宇宙からきた巨人など、有りとあらゆる特撮ヒーローシリーズを嗜んできた。

特撮を語らせたら右に出るものはいないと、自分で思っているくらい大好きなのである。


「ゲンサイ!どうだ?一つくらいあるだろ?」

「ちっ!なんで俺に振んだよ。はぁ…ヒーローねぇ。まぁ強いて言うなら、俺はあれだ。◯◯ライダーの剣のやつ。」

「剣を持った◯◯ライダーはいくつかあるけど…どれだよ。」

「んなもん、覚えてねぇよ。」

「そっか…まぁいいけど。タケルとトヌスは?」


ゲンサイが答えたことで、イノチは瞳を輝かせている。
そんなキラキラした瞳で問いかけてくるイノチに、ため息をつくタケル。


「はいはい…答えないと終わらなさそうだね、これは。僕は◯◯◯ジャーの忍者のやつかな。それを見て、日本刀とかに憧れたんだよね。」

「俺も◯◯◯ジャーだな。俺の時は列車をモチーフにしてた気がするぜ。子供の頃は列車が好きだったからな。」

「なるほどなるほど!タケルとトヌスは◯◯◯ジャー系ね!わかるよ、わかる!戦隊モノって、それぞれに特色があるキャラ設定が魅力なんだよな!赤とか黄色とかの基本色から、戦隊によっては黒とか金とかバラエティに富んでいて、ワクワクさせられるんだよ!!」

「…あぁ…そうなんだ。」
「おっ…おう。」


鼻息を荒くするイノチを見て、若干…いやかなり引いているタケルとトヌス。

そんなことには構わず、イノチはその瞳をミコトに向ける。


「ひっ…!」


小さく悲鳴をあげるミコトだが、イノチの溢れる想いはとどまる事を知らない。


「ミコトは!?◯◯キュア?!◯◯ムーン?おじゃ◯ド◯◯!?何が好きなの!?ハァハァ…」

「イッ…イノチくん、怖いよ…」


息荒く、ミコトにゆっくりと詰め寄るイノチ。


「とぉぉぉぉぉ!!」

「ウギャッ!!」


もはや変態の域に達していたイノチを止めたのは、突然現れたアレックスだった。

首筋に手刀をお見舞いされたイノチは、白目を剥いて倒れ込んだが、アレックスはそんなことはお構いなしにイノチに向けて言い放つ。


「BOSSってば興奮しすぎだよ♪ミコトが怖がってるじゃないか♪もう!」


プンスカと腕を組み、仁王立ちで胸を張るアレックス。


「アレックス…イノチくんには聞こえてないよ…ほら、白目剥いてるし。」

「えぇっ!?」


タケルがイノチを指差してそう告げると、アレックスは焦ったようにイノチの肩を掴み、ブンブンと揺さぶって呼び覚まそうとする。


「BOSS…!起きてよぉ!!ねぇってばぁぁぁ!!!」

「アレックス…そのままだとイノチくんの首が飛ぶよ…」





「イテテテテ…えらい目にあったよ、まったく。」

「ごめんよ、BOSS…」


イノチは首を押さえながら、しょんぼりとするアレックスに手をあげて答える。


「ふぅ…さて!話はそれたけど、みんなの好きなヒーローは把握できた!」

「いや…ミコトのは聞けてないぜ、だんな…」

「そこで、今回の本題!俺は先日ガチャであるアイテムを入手したんだ!」

「ダメだ、トヌスさん…今の彼には都合の悪いことは一切聞こえないらしい。」


あきれるタケルとトヌスに構わず話を進めるイノチに対し、ゲンサイがアイテムと聞いてか、興味ありげな反応を示す。


「ほう…いったい何のアイテムなんだ?」

「おっ!ゲンサイ、興味でてきた?他のみんなはどうかな?」


プププッと口を抑えながら、ちょっとおかしなテンションで他のメンバーにも問いかけるイノチ。


「はっ…話が全然見えないけど、役に立つアイテムなら聞きたいかな。」

「ミコトのいう通りだね。よくわからないけど、とりあえず聞かせてくれよ、イノチくん。」


タケルの言葉にうなずいたトヌスまで見ると、イノチは嬉しそうな笑みを浮かべて、携帯端末を触り始めた。

そして、アイテムボックスからあるものを取り出すと、皆の前に並べていく。


「おっ…おい…こりゃなんだ?」

「…ん?ヒーローマスクだよ!見りゃわかんじゃん!」

「いや…そういうことじゃなくてだな…」


自分の目の前に置かれたヘルメット。
緑を基調としたそのヘルメットは、誰が見ても満場一致で戦隊モノのヒーローマスクだと言うだろう。

ゲンサイは混乱した表情を浮かべていたが、イノチは気にすることなく、タケルは青色の、トヌスには黄色の、ミコトには桃色のヘルメットを配っていった。


「最後に…俺はこれで…よしっ…と!」

「ちょ…ちょっと待って…イノチくん!」


自分の前に赤いヘルメットを置いて、満足げな表情を浮かべているイノチに向かって、タケルが声を上げた。


「こっ…これは…いったい?」

「これはって…ヒーローマスクだよ!見たらわかるだろ?」

「そ…それは見たらわかるよ。そうじゃなくて…これで何をする気なんだい?」


イノチは肩をすくめて大きくため息をつく。


「何する気って…ヒーローになるんだよ、これで!俺らは五人!アイテムはちょうど五つ!なら、やることは一つだろ!」


自慢げにそう言い放つイノチを見て、他のメンバーは何も言えなかった。


「使い方は簡単だよ!こうやって被って…と…そしたらこう叫ぶんだ。『変身!』って!」


するとどうであろう。
イノチの体が光に包まれたかと思えば、首から下に赤い戦闘スーツを身にまとった姿で登場したのだ。


「炎の回転アンリミテッド!ガチャレッド!!」

「「「「………」」」」


決め台詞とともにかっこよくポーズを決めるイノチを、他の四人は言葉にならない思いで見つめている。

アレックスだけは、両手で頬杖をつき、笑顔でその様子を眺めている。


「あれ…?みんなどうしたの?」

「どうしたのって…君のお願いってこれかい?」

「そう!ガチャを引こうとしたら、こんなキャンペーンが始まっててさ!思わず引いちゃったんだよ!そしたらまさかの五色ゲット!!」


イノチがかざす携帯端末を見れば、ガチャの特設キャンペーンページが開かれており、そこにはこう記載されていた。


『新番組開始に併せて、ヒーローキャンペーンを開催します。今なら戦隊ヒーローのヘルメットが五色揃って排出率アップ!!』


「これを使って、みんなで戦隊モノをやってみたいんだ!」

「…なんの新番組かわからないけど。こんなキャンペーンやるかな普通…しかし、引く方も引く方だよ、まったく…」


ヒーローらしく右手を体の前でギュッと握り、そう告げるイノチに、タケルはあきれたように肩を落とした。

少しの沈黙…

皆がどうするか戸惑っていると、突然イノチの後ろから重い声色が聞こえてきた。


「BOぉぉぉSSぅぅぅ…今、ガチャ引いたって聞こえたんだけどぉぉぉ!?」


振り返れば、腕を組んで恐ろしげな表情を浮かべるエレナと、その後ろには怒った顔のメイもいる。


「出たな!怪人ガチャヒクナン!!俺が相手だ!!トォォォ!!」


そう言って調子に乗って飛びかかってきたイノチを、エレナは一撃ではたき落とし、そのままズルズルとどこかへ引きずって行ってしまった。

いったい何なんだ…
そんな心の声が聞こえてきそうなほど、唖然としているメンバーたち。

そこでアレックスがパンと手を鳴らした。


「はい!カットだよ♪みなさん、お疲れ様でしたぁ♪」


つづく?

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