ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜
57話 真の目的?
「なんなのよ、今の…」
「おっ…おじいちゃんが、ロキくんに雷落としてたね…♪」
エレナたちは唖然としてその老人を見ていた。
老人の気が収まったことで、馬たちも落ち着きを取り戻し、今はその歩をゆっくりと進めている。
「話が逸れてしまったな、すまんすまん。」
両手をパンパンとはたいて、老人は笑いながらそうつぶやく。
その横では、ロキが大きなたんこぶを作って、うつ伏せで大の字になっている。
そのたんこぶからは、シューッと湯気が上がり、熱量を感じさせるほどだ。
「そいつ…だっ…大丈夫か?」
「大丈夫じゃ!こんなんで死ぬたまでもないからのぉ。ほっとけばすぐ起きる。それよりも話の続きじゃ…」
老人は再び地図を指す。
「ランク戦は各国で行われる。プレイヤー同士だけで争い合うのが基本ではあるのだが…最近、各国で不穏な動きがあるでな。」
「不穏な動き…?」
老人は、ひげをさすりながらうなずいた。
「国とプレイヤーが手を組んで、国盗りを目論見始めとるんじゃ。」
「国とプレイヤーが手を組む?でも、ジパンの王様からはそんな話されなかったぞ!」
「それが問題なんだよ…痛てて。」
頭をさすりながらロキが起きてきた。
「じいさん、ちょっとは手加減しろよな。」
「お主は口の悪さをなおさんか。」
老人は、フンっと鼻を鳴らす。
「また喧嘩しないでくれよ!馬たちが怖がってる!」
「はいはいっと。えっと、他の国ではね、プレイヤーたちが国の中枢に入り込んでいるんだ。王やその側近たちをそそのかして、他国に攻め込ませようとしてるわけさ。だけど、ここジパンではそんな動きはない…」
「…?それはなんで?」
「理由は簡単さ。一つ目は、ジパンは最近まで国を統一するために現王が奮闘していたからね。今は外のことより、国を安定させることに意識が向いている。二つ目に、ジパンを拠点に選ぶプレイヤーは少ないから、君たちみたいに国と関係を持つ者はほとんどいない。」
「さっきも言ったが、本来ランク戦とはプレイヤー同士が争うだけのものだが、国を巻き込むことで自分たちに有利に事を進めようとしとる奴らがいるのじゃ。」
「それに、ジパン国以外はみな安定した国だからね。世界のハブとなっているこのジパンを、欲しがる国の連中もいるというわけさ。」
「なるほどな…この国は世界の中心、そして、貿易の中心でもある。それを手にすれば、全ての主導権を握れるってわけか。そして、プレイヤーが国と連携していないから、1番に攻める格好の標的ってわけだ。」
「そういや、あのキンシャって奴は、ジプトのプレイヤーだったぜ。帰るとかなんとか言ってたからな。」
「てことは、偵察ってことかな。」
「それだけじゃないな。奴はあの財務庁長官とつるんでいた。あわよくば、こっそり乗っ取ろうとしてたんじゃないのか?」
考えを巡らせるイノチとゲンサイを見て、ロキも老人も顔を見合わせると、ニヤリと笑い合う。
「やっぱり君たちは気が合いそうだね!」
「見込んだ通りじゃな。」
「あ"ぁ"っ!?いきなり何言ってやがる!」
「そうだ!誰がこんな奴と気なんか合うかよ!」
声を上げ、否定し合う二人を見て、さらに笑い合うロキと老人。
「それだけ仲が良ければ少しは安心だ。君たちは今から仲間なんだからね!」
「はぁ…それなんだけどさ。結局、なんでこいつと組まなきゃならないんだ?今の話からするに、こいつと組んでジパンの国を守れってことなのか?」
「まぁ、それもあるが…ランク戦が始まるからといって、国同士の戦争がいきなり始まるわけではないだろうな。」
そのとぼけた態度に、イノチはこれまでのイラ立ちを爆発させた。まるで溜め込んでいた想いを全てぶつけるように。
「じゃあ、何のために…!そもそもだけど、あんたらなんなんだよ!突然現れて、正体も明かさずに好き勝手言いやがって!!」
老人とロキは、明らかにイラ立っているイノチを見て、顔を見合わせた。
「こんな世界に俺を引きこんだのもあんたらなんだろ!?ウンエイの奴もそうだけど、大事なことは何一つ言わないじゃないか!!それなのにあれやれこれやれって…いったいなんなんだ!!」
「それはじゃな…」
「こんな…死んだら終わりなんて世界に連れてこられて、訳もわからずモンスターと戦わされて!!あんたたちの目的はなんなんだ!!」
「まぁまぁ、イノチくん落ち着いてよ。」
「落ち着いてられるか!!あんたらの正体を教えろよ!別に俺にはこの国がどうなろうが関係ない!この国が攻め入られて困るのはあんたらなんだろ?なら交換条件だ!あんたらの正体と目的を教えろ!!」
そこまで言い切って、肩で息をしながら二人を睨むイノチ。ロキと老人もそうだが、エレナたちも驚いてイノチを見ている。
「ハハ、なかなか言うじゃねぇか。」
ゲンサイだけは、それを面白そうに見ている。
そんな中で、自分を睨むイノチに老人が口を開いた。
「お主のその疑問はもっともじゃな…わかった、いいじゃろ。我々の正体と目的を教えよう。」
「じいさん、いいのか?」
「あぁ…彼が望んでおるからな。」
老人は体をイノチに向ける。
そして被っていたフードを外して、まっすぐとイノチを見る。
「…あれ?あんたの顔、どこかで…」
「フォッフォッフォッ、そうかもしれんな。わしとロキはこの世界を管理する者、すなわち、この世界の神の使いなのじゃ。君らと接触した理由は、この世界の乱れを防ぐこと。他国に入り込むプレイヤーをそそのかす邪神たちを倒すことじゃ。」
「かっ…神の使いだって!?邪神を倒す…?」
「さよう…そして、ウンエイという女性は我らの部下じゃ。わしの指示で、先にお主に接触してもらったというわけじゃ。」
イノチは驚きで言葉が出なかった。
確かにタケルからこの世界の真実を聞いた時、そういった存在がいるのかもしれないと考えたこともあった。
こんな異世界に自分を引き込んだ元凶が、もしかしたらいるはずだと。
しかし、それは想像の域を逸することはなく、まさか本当にいるなんて思ってもいなかったのだ。
「…なら。この世界に俺らプレイヤーが引き込まれている理由は?」
「さっきも言ったが、邪神らはプレイヤーを利用して、この世界を荒らそうとしておる。しかし、この世界の者たちはプレイヤーには勝てん。プレイヤーに対抗できるのはプレイヤーしかおらんのじゃ。だから、君たちの世界から勇士を募り、奴らに対抗しようと考えたのじゃ。」
「勇士を募りって…ほとんど拉致みたいなもんじゃないか。あんなVR機みたいなもんを勝手に送りつけてきて。」
「急を要したのでな。それについては謝る。」
「だけど、それならなんで最初のチュートリアルで、ジパン国以外にも選べたんだ?この国しか選べないようにすればもっとプレイヤーが集まるんじゃ…」
(よく気づく子じゃな…)
老人はすまなさそうにひげをさすり、イノチの問いに答える。
「それに関しては、我が主人である神が設定していてな。我らではどうすることもできないんじゃ。だから、ジパン国を選んでくれたプレイヤーたちに、こうしてサポートをしておるわけじゃよ。お主、ウンエイから受け取ったじゃろ?」
それを聞いてイノチは思い出した。
ウンエイから受け取った『Z』の文字が刻まれた丸い球。
『ハンドコントローラー』の強化素材であると言われたそのアイテムのことを。
「まだ試しとらんじゃろ?どうじゃ、試してみんか?」
老人はニカッと笑うと、イノチへそう促してきたのである。
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