ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

40話 自業自得


朝から食堂は、殺伐とした雰囲気だ。


エレナ、めっちゃこわっ!なにその顔!鬼ですやん!
ミコトとメイは…冷たい視線が痛い…

フレデリカは…相変わらずウォタとゼンと朝飯をバクバクと食いやがって…少しはこっちに興味持てって!

バンッと目の前のテーブルが叩かれ、身体がビクッと縮こまる。


「で、BOSS。これはいったいどういうことなのかしら?」

「あ…あの〜エレナさん?まずは落ち着いて…」


バンッと再びテーブルが叩かれ、エレナが鬼の形相でこちらを見ている。


「あたしはいたって冷静よ…それよりも!なぜこうなったかを知りたいんだけど…教えてくれない?BOSS。」

「う…それは…」


どこが冷静だよ!めちゃくちゃキレてんじゃん!
怖いんだよ、その顔が…


俺は顔をそらし、横に座って朝ご飯のサンドイッチを頬張っているアレックスに目を向ける。

美味しそうにもぐもぐと口を動かすアレックスを見て、心がほっこり、表情が緩んでしまう。


バンッとテーブルが叩かれる。


「BOぉぉぉ〜SSぅぅぅぅぅ〜!?」

「わっ…わかった!説明する!全部白状します!!」


すごむエレナに圧倒され、俺は全てを洗いざらい白状した。





「なるほどね…。あたしたちに嘘ついて、ガチャをこっそり引いてたってわけね。」

「…はい。」

「しかも、こっそりといかがわしい部屋まで作って。」

「いっ…いかがわしくなんかないぞ!隠し部屋は男のロマ…ごめんなさい…」


しまった…調子に乗りすぎた…

エレナの視線に、無意識に体が小さくなる。
それを見ていたミコトが、大きくため息をついて口を開いた。


「まさか『黄金石』を偽造するなんて…私も少しショックだな。戦力強化が目的なら、ちゃんとみんなを集めて説明すればいいのに。」


はい…ぐうの音も出ません。
正論でございます…論破。


「…私もショックです。イノチさまがどんどん良くない方へと…私がもっと注意していないから…」


顔を覆い、肩を震わせるメイ。
メイにそんなに悲しまれると、本当に罪悪感に苛まれる。

そんな重苦しい空気の中でも、フレデリカとウォタとゼンは、もしゃもしゃとサンドイッチを頬張っていく。

マジで空気読めよ、お前ら…って俺が言えた口ではないな。


「まぁ、いいわ。BOSSの処分は後ほど考えましょう。それよりも新しい仲間が増えたことについて、純粋に喜ばなくちゃね。」

「そうだね。アレックス…くんだったっけ?」


処分って…そこまでのことしたっけ、俺。


「ふぁい♪ほうでふ♪っんぐんぐ…んっくん。僕の名前はアレックス=アンダーソン、職業は『盾士』です♪よろしくお願いしまぁす!っはむ!んぐんぐ…」


まるで小動物が食事をしているような可愛らしさに、エレナとミコトはキュンとして、頬を赤らめている。

その気持ち、わかるぞ。二人とも。


「ん…?今『盾士』というたか?」


朝ご飯に夢中だったウォタが、突然こちらを向いた。

本当にマイペースなやつだな!食うのかしゃべるのか、どっちかにしろよ!ったく。


「はぁい♪僕『盾士』です♪」

「おぉ、その職業は久しく見ておらんかったが、またそれを担う者が現れたか!」

「え…?ウォタ、『盾士』ってそんなにレアな職業なの?」

「ある意味で、レア中のレアであるな。なにせ、攻撃をいっさい捨てて防御に徹する職業だ。確かにものすごい防御力を持つが、まったく攻撃できんというのは、バランスが悪すぎて成り手がおらん…仮になったとしても、一人で活動などできんから、パーティを組むしかないが…そのパーティからも、使い勝手が悪く敬遠される職業だからな。」

「へぇ〜、この世界って職業で個々のステータスが決まるのか?初めて知った。」

「あぁ、皆が皆、というわけではないがな。人気な職業は剣士や魔法使いといったところだな。バランスがいい。昔は各職業にマスターと呼ばれる極めた者がいてな…そいつらに弟子入りし、技を習得すれば免許皆伝。晴れてその職業を名乗れるというわけだな。まぁ、今ではマスターになるほどの者はおらんようだが…」

「なるほどなぁ…」


さすが最古の竜種、物知りだな。
しかし、各職業にマスターか…
マスターと言えば、ゲンサイが『ソードマスター』という職業だった気がするな…あいつ、やっぱりすげぇんだな。

とまぁ、それは置いといてだ。
選んでおいてこういうのもなんだが、やっぱり俺だったら選ばないなぁ…『盾士』。

なんでアレックスは『盾士』になったんだろう。
というか、職業にすらそんな背景があるって方が驚きだな。

ガチャで排出されたキャラにも、過去の記憶があるんだし…

フレデリカの件…
『ドラゴンヘッド』に、故郷を滅ぼされたって言う話もそうだ。

ガチャとこの世界…ウンエイの存在…
はぁ〜、まだまだわかんないことだらけだ!

この世界は現実だというタケルの言葉。
この現実世界とガチャ魔法、何か関係があるんだろうか。

ガチャから排出されるキャラって、もしかして…


「…確かに『盾士』は珍しいわね。アレックス、あなたはなんで『盾士』になったの?もしよければ教えてくれない?自己紹介も兼ねて。」

「僕が『盾士』になった理由ですか♪」

「そうよ。攻撃がまったくできない職業を選ぶなんて、それなりの理由があるんじゃないの?」


エレナの言葉に、アレックスはあごに指を置いて悩む仕草をしている。

その仕草も可愛らしいなぁ…
…はっ!いかんいかん!俺はBLとショタ属性を兼ね備える気はないぞ!!

しかし…エレナもミコトも、アレックスにだいぶやられてるな。頬を赤らめてアレックス見てるし…二人とも、もしやショタ属性持ちか?

ミコトはともかく、エレナは意外だな。

うんうんとうなずいていると、アレックスが口を開いた。


「う〜ん、理由ですかぁ…え〜と…」


その悩ましげな表情も可愛すぎる!
俺とエレナ、ミコトは固唾を飲んでアレックスを見守っている。


「う〜ん…え〜と…そのぉ〜…」

「……」

「えぇ〜あれかな…いやぁ違う…じゃあ、あの時?う〜ん、それも違うなぁ…」

「アッ…アレックス?」

「あ〜そうだ!あれあれ…いや、でも違うか…う〜ん…あっ!そうだ!!」


ポンっと手のひらに拳を合わせるアレックス。


「そうそう…そうだったそうだった!…特にないです♪」


その瞬間、俺とエレナとミコトはずっこけた。


「え?ないの?」

「はい♪強いて言うなら防御極振りとか、かっこいいなぁって思ったことですかね♪」

「ぼっ…防御極振りがかっこいい…から?でも攻撃できないんだよ!」

「僕、相手を傷つけるのは苦手で…だから、なおさらこの職業があってると思ってます♪」


ニコリと笑うその笑顔。

まっ…まぶしい!!
その笑顔が眩しすぎる!!なんて純粋無垢な笑顔なんだ!
俺みたいな汚れた人間には、直視できない神々しさすら感じる!!

そして、その理由もなんてすばらしいんだ!
爪の垢を煎じて、エレナやフレデリカに飲ましてやりたい!


「まっ…まぁ、いいんじゃない?どんな職業につくのかは人それぞれだし、理由もさまざまよね。」

「うん…そうだね。じゃあ、私たちも朝ご飯にしようよ!アレックスくんの食べっぷり見てたら、お腹空いてきちゃった。」

「そうね!メイにお願いしましょうか!」

「このサンドイッチ、とってもおいしいですね♪」


三人がそう話していると、タイミングを見計らったようにメイがサンドイッチを持ってくる。

俺はそれに少しの違和感を感じた。


「はい!エレナさま、ミコトさま、どうぞ召し上がってください。」

「…あれ?メイ、俺の分は?」

「イノチさまは、朝食は抜きでございます。」

「へっ?」


メイの言葉の意味が、一瞬わからなかった。

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