ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

42話 ファイア オブ 顔面

「あいかわらず活気があるなぁ…」


イノチが立ち直った次の日。
メイに館の仕事を任せて、イノチたち三人はギルド総館を訪れた。

もちろん、ギルマスであるアキルドからの依頼の結果報告をするためだ。

ギルド総館のドアを開けて中に入ると、イノチたちに気づいたタラクが足早に近づいてくる。


「イノチさま!ようこそです。今日は何の御用でしょうか!!」

「えっ…あ…タラク…さんですっけ。」


突然、声をかけられ動揺するイノチ。
前回とまったく違うタラクの態度を不審に思ったが、次にタラクから発せられた言葉に納得する。


「そうです!この前はすみませんでした…あの後、ギルマスにこっぴどく叱られまして…」

「…あぁ、なるほど。それはご愁傷様さまです…ハハハ…ところで、今日はそのギルマスはいます?」

「ギルマスにご用事で?それでしたら、リンさんに伝えましょう!こちらへ!」


タラクはそう言うと、イノチたちをリンの元へ案内する。


「リンさん!お客さま…イノチさまです!」

「あら…イノチさん!一昨日ぶりかしらね!今日は…もしかして報告かしら?」


タラクの声に振り向き、イノチたちを見て、リンは笑顔で声をかけた。

ちなみにリンにもアキルドにも「様」付けはやめるようにお願いしている。理由はイノチがやりにくいためだ。

そんな呼ばれ方、今までした事ないし…

二人とも察して、快く了承してくれたが、アキンドだけはなぜかやめてくれなかった。

命の恩人にそんな真似はできないと、頑なに拒否されたのだ。


「そうです。とりあえずこれを納品したくて…あと、他の4つの依頼も全て終わりました。」


イノチはリンの前にあるカウンターに、ソフトボールほどの大きさに膨らんだ布袋と、アキルドが特別に斡旋してくれた依頼の品を並べた。


「さすがの早さですね!えぇっと…この布袋はギルマスに直接お渡しください。先にこちらの4品目を納品させてもらいますね。」


リンはそう言うと、布袋以外の品を引き取り、報酬のゴールドを赤い紐のついた皮袋に入れて、イノチの前に差し出した。


「はい!報酬は合計で26,500ゴールドです。仕事が早くて、本当に助かります!」


イノチはなんとなく変な気分になる。
リンに会うのは2回目なのに、この信頼度は何なのだろうか。

まぁ、原因はアキンドで、彼に何か吹き込まれたことは容易に想像できるのだが…

お礼を言って皮袋を受け取ると、リンが奥へと案内してくれる。


「ギルマスは今、来客中なんです。応接の間で少しお待ちいただけますか?」

「全然構いません。こちらもアポなしですから、待たせていただきます。」


そのままリンに案内され、応接の間に入ると、イノチは中心にあるイスに腰掛けた。

エレナとフレデリカも、思い思いの場所に座る。リンが部屋のドアを閉めていなくなると、エレナが口を開いた。


「来客って誰かしら…」

「誰かしらって言われても…俺にはわかんないよ。なんか気になるの?」

「いぇ…ちょっと気になっただけ…」

「それよりも報酬ですわ!『ダリア』は全部で600近くあります…これを換金したらいったいいくらになるのでしょう…クフフフ!」


フレデリカは目を輝かせて、鼻息を荒くする。彼女が興奮する理由は、金額ではないことをイノチは知っているため、敢えて何も言わないようにする。

少しするとリンが飲み物を持ってきてくれた。


「ごめんなさいね…話がまだ終わらないみたいで。」

「気にしないでください!俺らも別に急いでいるわけじゃないし…でも、もし差し支えなければ教えてもらいたいんですけど、誰がきてるんですか?」


その問いに、リンは少し考えるように顎に手を置いたが、すぐに笑顔になって教えてくれた。


「まぁ、イノチさんたちになら教えても大丈夫か…実は今、国都からの使者がきてるんです。」

(だから何なんだよ、その信頼感は…やりにくいなぁ。まぁ、聞いた俺も俺だけどさ…)


心の中でひとりツッコミつつ、リンに問いかける。


「国都…?からの使者ですか。」

「はい…私も詳しくは知りませんが、なんでも最近、商人の行路で野盗による強奪が多発しているみたいで…そのことで国都から使者が来たと、ギルマスからは聞いております。」

「ふ〜ん…国都から…ねぇ…」


イノチが首を傾げる横で、エレナが何やら考えにふけっている。


「なんだよ、エレナ…なんか気になってるみたいだけど…」


イノチがそこまで言うと、部屋のドアが開かれた。そして、アキルドが入ってくる。

その後ろには、全身鎧姿の人物が金属の擦れる音とともに姿を現した。

イノチは少し怪訝な表情を浮かべた。


「イノチさん…待たせてしまって申し訳ない。」

「いや…気にしないでください…というかその後ろの方は…」

「あぁ、彼は国都からやってきた使者で…」

「お初にお目にかかります。私はジパン国軍第一師団特別遊撃部隊所属シャシイ=コウセツと申します。以後お見知りおきを。」


その全身鎧姿は、兜をゆっくりと外すとそう名乗った。その兜の下から現れたのは、金色に輝く髪と淡い蒼色の瞳であった。


「あら…」

「イケメンですわ…」


エレナとフレデリカが後ろで女の声になったのを、イノチは少し引き気味に聞いていた。

これはデジャブだ…どこかでも同じようなことがあったな…。

イノチはため息をつく。

そんな中、アキルドがイノチの前に歩いてきて、目の前のイスに座ると、それに続いてシャシイも隣に座る。

イノチの頭に嫌な予感が走る。

なんとなく…直感だが…だって、アキルドの横に国都の使者が座ったし…

明らかに…フラグ立ってるよね…これ。

アキルドさん…絶対一言目は「実はですね…」だよね…


「実はですね…今回、イノチ殿にお願いがあるのです。」


はい…フラグ回収いただきました!
はぁ〜また指名依頼って…このギルドで変な地位を確立してるな、俺。

『ダリア』の換金に来ただけなのに…

んで、次はたぶん「最近、周辺で野盗が出没しているのは」的な話がくるんだろ…さっきリンさんが話してたしな。


「最近、ここ『イセ』の周辺で、野盗の被害が多発しておりましてな…物流が滞ることを懸念した国都から、討伐の依頼が届いたのです。」


ほらきた…そして最後は「野盗の討伐を俺に依頼したい」だろ…

なんか少しイライラしてきたな…なんで俺がめんどくさいことばかり受けなきゃなんないんだ?この際、バシッと言ってやるか!バシッと!!


「先ほどまで、このシャシイ殿と討伐に関する策を練っていたのですが、イノチ殿にはひとつお願いがあるのです。」

「要はその野盗の討伐ですね…はぁ…」

「あっ…いや…そうでは…」


イノチの言葉に、アキルドは訂正しようとするが、イノチは話し続ける。


「いいんですけどね…そもそも今日は『ダリア』の換金に来たんです。これはアキルドさんからの依頼なんだから、まずはそちらが先じゃないんですか?」


ふぅ、言ってやったぜ…アキルドさんには少し悪い気もするけど、こう毎回、ギルドに来るたびに依頼を押し付けられちゃたまんないからな!申し訳ないが、言いたいことは言わせてもらったぜ!


「…いや、ごもっとも…」


アキルドは頭をかいて申し訳なさそうにしている。それを見たエレナが後ろからイノチに声をかけてきた。


「BOSS、たぶん勘違いしてるわよ。」

「え…何がだよ…」

「アキルドのお願いはそれじゃないわ。」


その横でフレデリカも頷いている。
なんで二人にそんなことがわかるんだと言った表情のイノチに、アキルドが苦笑いを浮かべ、再び口を開いた。


「いやいや、イノチ殿のおっしゃる通りですな…まずはそちらの話が先でした。」


そう言って深々と頭を下げた。

え…なにこれ…俺の勘違いってこと?
何が?何を勘違いしたの、俺…うわぁ、恥ずかしい!!やばい、顔から火が出るってこう言うことか!!

イノチの顔から炎系魔法が放たれた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品