話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

追憶のピアニスト

望月海里

卒業式


3月の初旬、ついに卒業式の日がやってきた。

私はあの日以来、歌の練習に明け暮れていた。『ジョージアオンマイマインド』と、『スリルイズゴーン』をひたすら練習し続けた。あの神社ではなく、寮の部屋でひたすら歌っていた。

卒業式に、私たち一回生は関係ない。だが、あの日の別れ際に、西村が「またね。」と言った事が気になっていた。会うのはこれが最後のチャンスかも知れない。私は意を決して学校に行った。2回生のユウジ先輩達も卒業だ。賑やかな卒業式が終わったようで、学食はごった返していた。
私はいつも西村達が集っていた辺りを探した。

「ちよちゃん。」
肩を叩かれた。アキラ先輩だ。

「アキラ先輩、あれ?卒業じゃないですよね?」
「違うよ。でも式の途中の演奏頼まれてね。ユウジ達も卒業だから。」
「そんなこともあるんですね。」
「ちよちゃんは?ユウジ達の追い出し会に参加?」
「えっと、まあ・・・はい・・追い出し会は、今日の夜ですけど。」
「あ、じゃあ、ひょっとして、西村先輩探してた?」
「・・・まあ、はい。」
「今日、西村先輩来てないよ。俺、実は西村先輩に、お願いされてた事があって・・・。ちよちゃんにもし卒業式の日に会えたら、これ、渡して欲しいって渡されたんだけど。」
「・・・、そうなんですか・・・先輩来られてないんですね・・・。」
「はい、これ。あと、なんかごめんって言っておいてって言ってたけど・・・なんかあったの?」
「いえ。なんでもないですよ。」
そんな会話をしながら、私はきっと泣きそうな顔をしていたはずだ。

「とりあえず、これ渡しておくね。ちよちゃん、何かあったら相談乗るからね。」
そう言いながら、アキラ先輩は私に白い封筒を渡した。

その日の夜のユウジ先輩達2回生の追い出し会が近くの居酒屋で開かれた。
代々ジャズ科では卒業生をこうやって追い出す飲み会が開かれていた。

「ちよちゃん、一年ありがとうね〜。」
シズカ先輩だ。

「たった一年だったけど、楽しかったよ。また、学校遊びに行くからね〜。また、ライブもするし、その時にはコーラスとかしてよ。」
気さくな先輩だ。

「はい、シズカ先輩、ライブ活動するんなら、必ず言ってください。コーラスでもなんでもお手伝いしますよ。」
「ほんと、ちよちゃん、音楽好きだもんね〜。必ず声かけるから。卒業してからも宜しくね。」
そんな会話をしながら、この日の飲み会は過ぎて行った。

その帰り道、私は偶然、ユウジ先輩と帰り道が同じになった。
「ちよちゃん、きいた?西村先輩、やっぱり留学するんだってさ〜。だから今日の卒業式来てなかったんだよね〜。俺、会えると思って楽しみにしてたんだけどさ〜。」
「そうなんですか?留学・・・ヨーロッパですか?」
「ん〜。そこまではわかんないや。俺としては、ジュリアードとか、バークリーとか行って欲しいけどな〜。まあ、あの人なら、どこでもいけるっしょ。才能すごいもん。」
「そうですね。才能光ってますもんね」
「俺、なんか寂しいわ〜。」
そんな会話の中、3月の肌寒い夜道を歩いて帰った。

「追憶のピアニスト」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く