追憶のピアニスト

望月海里

序章


その日は寒い夜だった。
湯船に湯を張り、久しぶりにゆっくりお風呂タイムを楽しんだ。
クナイプのグーテナハトという入浴剤を入れ、ハーブの香りに包まれた。
風呂から上がると香りの良い、中国茶を楽しんだ。
こんな夜には、ジャズピアノのアルバムを聴くことにしている。
幸い、マンション暮らしの割に、壁が厚く、隣の音も全く聞こえてこない。
部屋の明かりも間接照明に落とし、久しぶりにゆったりした夜を過ごしていた。

携帯が光った。
友人のインスタグラムの投稿通知だ。
開いてみてみる。
そこには、友人が、とあるピアニストの凱旋ライブに行ったという内容の投稿だった。
私はそこに記されたピアニストの名前、
「西村真一」の字に動揺した。

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