異世界で魔王の配下になった件
魔王からの褒美
ゼウス王が殺されたというニュースは瞬く間に世界に広がった。
それを受け魔王城に乗りこもうと意気込む血気盛んな勇者たちも現れたがそのほとんどが蟻相手に敗れ、なんとか魔王城にたどり着けた者たちも城にいる魔族たちの返り討ちに合った。
そんなことがあって人間たちは魔族たちに勝利することを半ば諦め始めていた。
時を同じくして魔王城では盛大な祝賀パーティーが開かれていた。
というのもエルザさんが一人で大国バスキアを攻め落としたからだ。
「エルザ様ばんざーい!」
「素敵ですエルザ様ー!」
「エルザ様、結婚してくださーい」
大広間に集まった魔族たちが口々に声を上げる。
エルザさんはグラス片手にステージ上のマイクの前に立った。
「みんなありがとうね。そしてこんな盛大な会を開いてくださった魔王様にも感謝します。ありがとうございます」
ここにはいない魔王にも感謝の言葉を述べるエルザさん。
俺はその様子を遠くから眺めていた。
「何よ、エルザばっかり。あたしだって人間の王を殺したっていうのに」
近くにいたアマナがふくれっ面で口を尖らす。
「まあまあ姉さん。バスキアは鉄壁の守りで有名な国だったから魔王様もお喜びなんだよきっと」
「魔王様が命令してくれてればあたしもバスキアくらい一人で壊滅させられたわよ」
「そうむくれるな、アマナ。今日の会はお前らへのねぎらいの意味もあるんだぞ」
モレロが続ける。
「その証拠にお前たちに魔王様から褒美があるそうだ」
「えっ、褒美ってなんか貰えるの?」
モレロの言葉に目の色を変えるアマナ。
「この会が一段落したら魔王様のもとへ行くといい。お前もだぞクルル」
そう言って俺に目線を移す。
「お前は行かないのか?」
「ああ。オレは呼ばれてはいないからな」
モレロはそれだけ言うとその場を立ち去った。
宴もたけなわ、俺とアマナとゲッティは大広間を抜け出て魔王のいる最上階へと向かった。
魔王の部屋の前に着くと後方から声がかけられた。
「みんな待って」
振り返るとエルザさんが小走りで近付いてくるのが見えた。
「エルザさん?」
「どうしたのよ、エルザ。パーティーの主役がこんなところで何してるの?」
アマナが問いかける。
「ふふっ。私も魔王様に呼ばれているの」
「え、あんたもなの?」
「うん。だからアマナちゃんたちと一緒に行こうと思って追ってきたの」
そう言ってアマナに抱きつくエルザさん。
エルザさんはほんのり顔が赤い。
酔っ払っているのかな……?
「ちょっとエルザ、暑苦しいから離れなさいよ」
「可愛いわね~、アマナちゃんは」
嫌がるそぶりを見せるアマナだがエルザさんは意に介さず頬を寄せる。
そんな二人を無視してゲッティが魔王の部屋の扉をノックをした。
「魔王様、モレロを除いた幹部四名集まりました。入らせていただきます」
扉を開けるゲッティ。
魔王はお決まりの定位置で俺たちを待っていた。
もちろん薄布が邪魔でシルエットしか見えないのだが。
『……よく来た』
俺たちは立て膝をつき魔王の声に耳を傾ける。
『……お主たちの此度の働きにより人間どもは戦意を喪失しておる。そこでお主たちには暇を取らせようと思う』
重低音の声が腹に響いてくる。
「魔王様、このチャンスに総攻撃をかけたりしないんですか?」
アマナが訊く。
『……九分九厘我らの勝利は揺るぎないものだが、それでも人間どもを下手に追い詰めると何が起こるかわからん』
「どういうことかよくわかりません、魔王様」
とアマナ。
「窮鼠猫を嚙む、みたいなことだろ」
「きゅうそ? 何よそれ」
「つまり弱い者でもピンチになると意外な力を発揮して反撃してくるってことだ」
「……ふーん。なるほどね」
眼鏡に手をやるアマナ。
恰好だけは才女っぽいが本当に理解したのか疑わしい。
「あの~魔王様。私たちにご褒美があるって聞いたんですけどお休みを貰えることがご褒美なんですか?」
控えめに手を上げるエルザさん。
「そういえばそうだったわね、忘れてたわ。ナイスよエルザ」
「ふふっ。ありがと~」
「姉さんたち、私語は慎んで」
ゲッティは二人を小声で注意する。
『……ゲッティよ、構わん。それより褒美の件だがもちろん他に用意しておる』
魔王は威厳のある声で続けて話す。
『……お主たちへの褒美はカザフ村への視察旅行だ』
それを受け魔王城に乗りこもうと意気込む血気盛んな勇者たちも現れたがそのほとんどが蟻相手に敗れ、なんとか魔王城にたどり着けた者たちも城にいる魔族たちの返り討ちに合った。
そんなことがあって人間たちは魔族たちに勝利することを半ば諦め始めていた。
時を同じくして魔王城では盛大な祝賀パーティーが開かれていた。
というのもエルザさんが一人で大国バスキアを攻め落としたからだ。
「エルザ様ばんざーい!」
「素敵ですエルザ様ー!」
「エルザ様、結婚してくださーい」
大広間に集まった魔族たちが口々に声を上げる。
エルザさんはグラス片手にステージ上のマイクの前に立った。
「みんなありがとうね。そしてこんな盛大な会を開いてくださった魔王様にも感謝します。ありがとうございます」
ここにはいない魔王にも感謝の言葉を述べるエルザさん。
俺はその様子を遠くから眺めていた。
「何よ、エルザばっかり。あたしだって人間の王を殺したっていうのに」
近くにいたアマナがふくれっ面で口を尖らす。
「まあまあ姉さん。バスキアは鉄壁の守りで有名な国だったから魔王様もお喜びなんだよきっと」
「魔王様が命令してくれてればあたしもバスキアくらい一人で壊滅させられたわよ」
「そうむくれるな、アマナ。今日の会はお前らへのねぎらいの意味もあるんだぞ」
モレロが続ける。
「その証拠にお前たちに魔王様から褒美があるそうだ」
「えっ、褒美ってなんか貰えるの?」
モレロの言葉に目の色を変えるアマナ。
「この会が一段落したら魔王様のもとへ行くといい。お前もだぞクルル」
そう言って俺に目線を移す。
「お前は行かないのか?」
「ああ。オレは呼ばれてはいないからな」
モレロはそれだけ言うとその場を立ち去った。
宴もたけなわ、俺とアマナとゲッティは大広間を抜け出て魔王のいる最上階へと向かった。
魔王の部屋の前に着くと後方から声がかけられた。
「みんな待って」
振り返るとエルザさんが小走りで近付いてくるのが見えた。
「エルザさん?」
「どうしたのよ、エルザ。パーティーの主役がこんなところで何してるの?」
アマナが問いかける。
「ふふっ。私も魔王様に呼ばれているの」
「え、あんたもなの?」
「うん。だからアマナちゃんたちと一緒に行こうと思って追ってきたの」
そう言ってアマナに抱きつくエルザさん。
エルザさんはほんのり顔が赤い。
酔っ払っているのかな……?
「ちょっとエルザ、暑苦しいから離れなさいよ」
「可愛いわね~、アマナちゃんは」
嫌がるそぶりを見せるアマナだがエルザさんは意に介さず頬を寄せる。
そんな二人を無視してゲッティが魔王の部屋の扉をノックをした。
「魔王様、モレロを除いた幹部四名集まりました。入らせていただきます」
扉を開けるゲッティ。
魔王はお決まりの定位置で俺たちを待っていた。
もちろん薄布が邪魔でシルエットしか見えないのだが。
『……よく来た』
俺たちは立て膝をつき魔王の声に耳を傾ける。
『……お主たちの此度の働きにより人間どもは戦意を喪失しておる。そこでお主たちには暇を取らせようと思う』
重低音の声が腹に響いてくる。
「魔王様、このチャンスに総攻撃をかけたりしないんですか?」
アマナが訊く。
『……九分九厘我らの勝利は揺るぎないものだが、それでも人間どもを下手に追い詰めると何が起こるかわからん』
「どういうことかよくわかりません、魔王様」
とアマナ。
「窮鼠猫を嚙む、みたいなことだろ」
「きゅうそ? 何よそれ」
「つまり弱い者でもピンチになると意外な力を発揮して反撃してくるってことだ」
「……ふーん。なるほどね」
眼鏡に手をやるアマナ。
恰好だけは才女っぽいが本当に理解したのか疑わしい。
「あの~魔王様。私たちにご褒美があるって聞いたんですけどお休みを貰えることがご褒美なんですか?」
控えめに手を上げるエルザさん。
「そういえばそうだったわね、忘れてたわ。ナイスよエルザ」
「ふふっ。ありがと~」
「姉さんたち、私語は慎んで」
ゲッティは二人を小声で注意する。
『……ゲッティよ、構わん。それより褒美の件だがもちろん他に用意しておる』
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