異世界で魔王の配下になった件
魔王
俺たち幹部の部屋のある四階からさらにその上に続く階段。
そこを上った先に魔王はいる。
「失礼のないようにな。私語は慎めよ」
モレロが緊張した顔で俺を見てくる。
「わかってる」
「では行くぞ」
モレロが階段に足をかけ一歩一歩踏みしめるように上がっていく。
俺もその後に続いた。
階段を上りきると廊下が一つの部屋にだけ通じていた。
魔王城自体がわりかし不気味な造りをしているが魔王のいる最上階は一段と気味が悪く壁面には人間の恐怖に満ちた顔を模したようなレリーフが施されていた。悪趣味だ。
最上階に上がってからは空気もなんだかよどんでいて重たい感じがする。
俺たちは廊下の先の部屋へと進み大きな扉の前に立った。
そしてモレロが扉をノックして声を上げた。
「魔王様、モレロです! ご報告があって参りました!」
いつも以上に背筋を伸ばして声を発するモレロ。
「今日は新しい幹部であるクルルも同行しております! よろしいでしょうか!」
「……」
返事はない。
「失礼します!」
モレロは扉に手をかけた。
「おい、モレロ。返事がないのに勝手に入っていいのか?」
「しっ。私語は慎めと言っただろう」
そんなこと言ったって勝手に部屋に入る方が失礼じゃないのか。
「魔王様がお返事をなさらないのはいつも通りのことだ」
「なんだ、そうなのか。だったら先にそう言っておいてくれよ」
「言わなかったオレも悪いが今は黙っててくれ」
顔をぐっと近づけてくる。
うっ……半魚人の顔のドアップはきつい。
モレロが扉を開け中に入る。
オレも部屋に入ると視界に入ってきたのは一段高い場所に薄い布が垂れ下がっている光景だった。
なんだ?
よく目を凝らすとぼんやりとだがシルエットが薄布に映っていた。
向こう側に魔王がいるのか?
頭から羊の角のような物が生えている人物が椅子に座っているように見える。
「クルル、頭が高いぞ。しゃがめ」
「お、おう」
俺はモレロの真似をして立て膝をつきしゃがむ。
「……」
「……」
『……モレロ。なんの用だ?』
魔王が喋った。
薄布越しの魔王の声はライオンの咆哮に似て地の底から腹にずしんと響くような低い声だった。
「はっ。魔王様、先程の城外での大きな音はお聞きになられましたでしょうか?」
『……それがどうした?』
「はっ。実は確認しに行ってみたところ山が丸々消えていたのです」
『……』
沈黙。
『……それで終いか?』
「はっ」
殿様を前にした大名のようにかしこまるモレロ。
『……隣にいる者はクルルといったか』
「はっ。こちらがブルの代わりに新しく幹部になったクルルでございます」
モレロが俺を紹介する。
『……クルルよ。幹部になったばかりですまぬが一つ我の頼みを聞いてくれるか?』
「はぁ、なんでしょうか?」
「こら、クルル。はいとだけ答えればよいのだ」
『……モレロ、お主は少し黙っていろ』
「はっ。失礼しました」
深く頭を下げるモレロ。
『……最近エスペラードの町に現れた勇者がなかなか強者だと聞く。クルル、お主にはその者を殺してきてもらいたいのだ』
そこを上った先に魔王はいる。
「失礼のないようにな。私語は慎めよ」
モレロが緊張した顔で俺を見てくる。
「わかってる」
「では行くぞ」
モレロが階段に足をかけ一歩一歩踏みしめるように上がっていく。
俺もその後に続いた。
階段を上りきると廊下が一つの部屋にだけ通じていた。
魔王城自体がわりかし不気味な造りをしているが魔王のいる最上階は一段と気味が悪く壁面には人間の恐怖に満ちた顔を模したようなレリーフが施されていた。悪趣味だ。
最上階に上がってからは空気もなんだかよどんでいて重たい感じがする。
俺たちは廊下の先の部屋へと進み大きな扉の前に立った。
そしてモレロが扉をノックして声を上げた。
「魔王様、モレロです! ご報告があって参りました!」
いつも以上に背筋を伸ばして声を発するモレロ。
「今日は新しい幹部であるクルルも同行しております! よろしいでしょうか!」
「……」
返事はない。
「失礼します!」
モレロは扉に手をかけた。
「おい、モレロ。返事がないのに勝手に入っていいのか?」
「しっ。私語は慎めと言っただろう」
そんなこと言ったって勝手に部屋に入る方が失礼じゃないのか。
「魔王様がお返事をなさらないのはいつも通りのことだ」
「なんだ、そうなのか。だったら先にそう言っておいてくれよ」
「言わなかったオレも悪いが今は黙っててくれ」
顔をぐっと近づけてくる。
うっ……半魚人の顔のドアップはきつい。
モレロが扉を開け中に入る。
オレも部屋に入ると視界に入ってきたのは一段高い場所に薄い布が垂れ下がっている光景だった。
なんだ?
よく目を凝らすとぼんやりとだがシルエットが薄布に映っていた。
向こう側に魔王がいるのか?
頭から羊の角のような物が生えている人物が椅子に座っているように見える。
「クルル、頭が高いぞ。しゃがめ」
「お、おう」
俺はモレロの真似をして立て膝をつきしゃがむ。
「……」
「……」
『……モレロ。なんの用だ?』
魔王が喋った。
薄布越しの魔王の声はライオンの咆哮に似て地の底から腹にずしんと響くような低い声だった。
「はっ。魔王様、先程の城外での大きな音はお聞きになられましたでしょうか?」
『……それがどうした?』
「はっ。実は確認しに行ってみたところ山が丸々消えていたのです」
『……』
沈黙。
『……それで終いか?』
「はっ」
殿様を前にした大名のようにかしこまるモレロ。
『……隣にいる者はクルルといったか』
「はっ。こちらがブルの代わりに新しく幹部になったクルルでございます」
モレロが俺を紹介する。
『……クルルよ。幹部になったばかりですまぬが一つ我の頼みを聞いてくれるか?』
「はぁ、なんでしょうか?」
「こら、クルル。はいとだけ答えればよいのだ」
『……モレロ、お主は少し黙っていろ』
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