異世界で魔王の配下になった件
トリプルアクセル
「これが身体能力強化の魔術、トリプルアクセルよ。試しにそこの大きな木をパンチで倒してみなさいよ」
アマナが言う。
俺は半信半疑ながらも巨木に向かってパンチを繰り出した。
手が痛くなるのは嫌なのでちょっと弱めに叩くくらいで。
ぐしゃあぁ!!
と、樹齢数千年はありそうな巨木がまるで豆腐のように粉々に崩れ散った。
散り散りになった巨木の破片が宙を舞う。
「……クルル、あんた何気にすごいわね。あたしが言ったのはそっちの木じゃなくてそこの木だったのに」
アマナが樹齢数十年程度の木を指差していた。
おそらくだが今の俺ならその木はデコピン一発でも充分倒せそうな気がする。
「あんた魔術の才能があるかもしれないわ。そうとわかれば今からびしばし鍛えるわよっ。覚悟しなさいっ」
アマナは楽しそうに笑った。
◇ ◇ ◇
二時間後。
「あんた全然才能ないわ。センスの欠片もない」
アマナが言い捨てる。
俺は二時間特訓してもらったが、結局使えた魔術はトリプルアクセルだけだった。
「一つでも使えたんだからそこまで言うことないだろ」
「まあ、ブルよりはましだけど……はぁ、期待して損したわ」
つまらなそうに言う。
「あたし疲れたからそろそろ自分の部屋に戻るけど、あんたはどうする?」
「そうだな。せっかくだから城の周りを見て回ってから戻るよ」
俺はこの世界に来てからずっと城にこもりっきりだったからこの機会に少しくらい城の周りを散策してみようと思い立った。
「あっそ。じゃあね」
城に戻るアマナを見送ってから俺は城をぐるりと回るように歩き出した。
城の周囲には堀があり水が張られている。
そこには元いた世界では見たこともないようなカラフルで大きな魚たちが泳いでいた。
俺が水の上に手をかざすと魚たちが一斉に群がってきて口をぱくぱくさせる。
俺は一瞬モレロを思い浮かべてしまった。
城の南側が正門で、北側にはさっきまでいた森がある。そして東側と西側には大きな山々があって城が山に挟まれる形になっていた。
俺は今城の東側にいてその大きく切り立った山に対峙していた。
手の届く距離に急こう配の山がある。
「ここら辺ならいいかな」
俺は右腕を大きく振り回す。
こんなところで何をしているのかというと、トリプルアクセル使用時にどれ程の力が出るのか試しておきたくなったのだ。
「さっきは手加減しちゃったからな」
俺は目を閉じて精神を集中させると、
「トリプルアクセル」
と唱えた。
黄色く輝く魔力のオーラが全身を覆う。
さっきよりもスムーズに一連の動作を行うことが出来た。
二時間の魔術の訓練は無駄じゃなかったのかもしれない。
俺は魔力を身に纏った状態のまま切り立った山めがけて力一杯パンチを放った。
「せーのっ……」
ドゴォォォーーーン!!!
「うおっ」
ものすごい衝撃で砂煙が嵐のように辺りを舞う。
目を開けていられない。
俺はとっさに腕で顔を隠し、目をつぶった。
「くっ……」
しばらくしてぱらぱらと砂が地面に落ちる音に変化した。
やっと暴風が治まってきたので俺はゆっくりと目を開けてみた。
すると目の前にあった山は地面からえぐり取られたかのようにきれいさっぱり消えてなくなっていた。
「……おおう……漫画かよ……」
自分でやったことながら俺はドン引きしていた。
アマナが言う。
俺は半信半疑ながらも巨木に向かってパンチを繰り出した。
手が痛くなるのは嫌なのでちょっと弱めに叩くくらいで。
ぐしゃあぁ!!
と、樹齢数千年はありそうな巨木がまるで豆腐のように粉々に崩れ散った。
散り散りになった巨木の破片が宙を舞う。
「……クルル、あんた何気にすごいわね。あたしが言ったのはそっちの木じゃなくてそこの木だったのに」
アマナが樹齢数十年程度の木を指差していた。
おそらくだが今の俺ならその木はデコピン一発でも充分倒せそうな気がする。
「あんた魔術の才能があるかもしれないわ。そうとわかれば今からびしばし鍛えるわよっ。覚悟しなさいっ」
アマナは楽しそうに笑った。
◇ ◇ ◇
二時間後。
「あんた全然才能ないわ。センスの欠片もない」
アマナが言い捨てる。
俺は二時間特訓してもらったが、結局使えた魔術はトリプルアクセルだけだった。
「一つでも使えたんだからそこまで言うことないだろ」
「まあ、ブルよりはましだけど……はぁ、期待して損したわ」
つまらなそうに言う。
「あたし疲れたからそろそろ自分の部屋に戻るけど、あんたはどうする?」
「そうだな。せっかくだから城の周りを見て回ってから戻るよ」
俺はこの世界に来てからずっと城にこもりっきりだったからこの機会に少しくらい城の周りを散策してみようと思い立った。
「あっそ。じゃあね」
城に戻るアマナを見送ってから俺は城をぐるりと回るように歩き出した。
城の周囲には堀があり水が張られている。
そこには元いた世界では見たこともないようなカラフルで大きな魚たちが泳いでいた。
俺が水の上に手をかざすと魚たちが一斉に群がってきて口をぱくぱくさせる。
俺は一瞬モレロを思い浮かべてしまった。
城の南側が正門で、北側にはさっきまでいた森がある。そして東側と西側には大きな山々があって城が山に挟まれる形になっていた。
俺は今城の東側にいてその大きく切り立った山に対峙していた。
手の届く距離に急こう配の山がある。
「ここら辺ならいいかな」
俺は右腕を大きく振り回す。
こんなところで何をしているのかというと、トリプルアクセル使用時にどれ程の力が出るのか試しておきたくなったのだ。
「さっきは手加減しちゃったからな」
俺は目を閉じて精神を集中させると、
「トリプルアクセル」
と唱えた。
黄色く輝く魔力のオーラが全身を覆う。
さっきよりもスムーズに一連の動作を行うことが出来た。
二時間の魔術の訓練は無駄じゃなかったのかもしれない。
俺は魔力を身に纏った状態のまま切り立った山めがけて力一杯パンチを放った。
「せーのっ……」
ドゴォォォーーーン!!!
「うおっ」
ものすごい衝撃で砂煙が嵐のように辺りを舞う。
目を開けていられない。
俺はとっさに腕で顔を隠し、目をつぶった。
「くっ……」
しばらくしてぱらぱらと砂が地面に落ちる音に変化した。
やっと暴風が治まってきたので俺はゆっくりと目を開けてみた。
すると目の前にあった山は地面からえぐり取られたかのようにきれいさっぱり消えてなくなっていた。
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