異世界で魔王の配下になった件

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

魔力

魔王の配下になった俺だがやることは特になかった。
勇者たちはこの世界に大勢いるらしいが一番強い勇者でも魔王はおろか魔王直属の配下である幹部連中にも歯が立たないという。
勇者に魔王を倒してもらって一刻も早くこんなところおさらばしようという俺の当ては外れてしまった。


「蟻にも勝てない勇者もごろごろいますニャ」
ミケが言う蟻とは二足歩行の人間大の蟻のことでこいつらが前線に立って勇者たちと戦っている。
魔王城のなかにもうじゃうじゃいる。


「ふ~ん。じゃあいよいよ俺たちのやることは何もないんだな」


ここは俺とミケの部屋。
昨日までは蛇人間の部屋だったのだがもういないので俺たちが使わせてもらえることになった。


「そんなことはないですニャ、クルル様。ボクたちの目標は魔王様直属の配下の幹部になることですニャ」
ミケは続ける。
「昨日お会いしたエルザ様をはじめ幹部の方たちは魔王様に直接お会いすることが出来るんですニャ。だからボクたちも魔王軍に貢献して幹部に上り詰めますニャ」
「お前、そんなに魔王に会いたいのか」
「もちろんですニャ。それがボクたち魔族の夢ですニャ」
俺は魔族じゃないけどな。


「ところでクルル様はいくつくらい魔術を使えるんですかニャ? 人間とはいえ魔王様の配下になりたいというくらいですからきっと二、三十は使えるんでしょうニャー」
「魔術? 使えないけど」
「ニャニャ!? 本当ですかニャ」
俺はただの高校生だぞ。魔術なんて使える訳ないだろうが。


「ニャ~、でもおかしいですニャ。クルル様の魔力は今でもビンビン感じますニャ」
そう言ってミケは黒く長い尻尾を見せてくる。
ミケの尻尾は逆立っていた。


「ボクの尻尾は魔力に敏感ですニャ。クルル様はエルザ様と同等かそれ以上の魔力を秘めている気がしますのニャ」
「マジで?」
あのとんでもなく強そうだったエルザって奴と互角以上の魔力が本当に俺なんかにあるのか?


「そうですニャ。一度魔力を計測してもらうといいですニャ。」


そしてミケは俺を城の地下にある研究室に連れていくと言い出した。


「このお城にはいろいろな設備が完備されているんですニャ。研究室ならクルル様の魔力も測れますニャ。ついでにボクも測りたいですニャ」
部屋を出ると猫独特のしなやかな動きで俺の前を進むミケ。もちろん四足歩行だ。


「ミケ、お前この城来るの初めてなんだろ。なのになんでそんなに詳しいんだ?」
「ボクは魔王様の大ファンですニャ。魔王城のこともちゃんと予習してきましたニャ」
振り返りながら答える。
俺の目の前でミケの尻尾がぴょんぴょんと跳ねている。
楽しいってことかな?

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