異世界で魔王の配下になった件

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

研究室

「ここですニャ」
階段を下りて突き当たりに研究室はあった。


ミケが器用に前足でドアをノックする。
「入ってもよろしいですかニャ?」
「……どうぞ」
消え入りそうな声がドアの向こうから返ってきた。


「では失礼しますニャ」
ドアを開けるとミケに続いて俺も部屋の中に入る。


「おおー」
俺は思わず声をもらした。
研究室の中には見たこともないような大小さまざまな機械が置かれていた。
どれもメタリックで近未来的なものばかりだ。


俺は近くにあった冷蔵庫のようなものに触ろうとして、
「あっ触っちゃ駄目です」
長い前髪を垂らし白衣を着た少女に止められた。


「あ、ごめん。えーと……」
「……わたしはヨミです」
「ヨミか。俺は……クルルでいいや」
「ボクはミケといいますニャ。よろしくお願いしますニャ」
「こちらこそ」
差し出されたミケの前足を申し訳程度にそっと掴むヨミ。
さっきの消え入りそうな声の主はこの子だな。


ていうかこの子よく見ると……。
「なあ、ヨミってもしかして人間か?」
「……そうですけど」
やっぱりそうだ。
この城には人間は俺一人だと思っていたけど違ったようだ。


「……あなたもどこかから連れてこられたんですか?」
「いや、俺はなんていうか……説明が難しいんだ。きみはそうなのか?」
「はい。でもどうせ町には家族も友人もいなかったしここでの生活の方が過ごしやすいんですけどね……」
なんか暗い奴だな。
前髪が邪魔であまり表情も読めないし。


「ヨミ様、ボクとクルル様の魔力を測りたいんですがニャ」
「……ヨミ様?」
顔を上げるヨミ。


「ああ、気にしないでくれ。こいつ誰にでも様をつけて呼ぶ癖があるんだ」
「はぁ、そうですか」


ヨミは大きな体重計のような装置のスイッチを入れ起動させる。


「……それではこの魔力測定装置を使って測ります」
「クルル様、先にボクが測ってもらってもよろしいですかニャ? ボクも実は計ったことがないのですニャ」
「ああ、好きにしろよ」
「ありがとうございますニャ」
そう言うとミケは出来るだけ体を小さくして装置の上に乗った。


「……そのままじっとしていてください」
「わかりましたニャ」


しばらくすると、


ピー! ピー!


と装置から音が鳴る。
見ると装置の液晶画面には【346】という数字が出ていた。
それを見てヨミは、
「……すごいです、ミケさん。平均的な蟻の十倍は魔力があります」
「ありがとうございますニャ。でもまだまだですニャ。では次はクルル様お願いしますニャ」
「ああ」
今度は俺が装置に乗った。


一体どんな数字が出るんだろう。
内心どきどきしながら待つ。


ピー! ピー!


一分ほどで結果が出た。


「……え?」
「ニャニャ!?」
一人と一匹が声を失う。


俺は顔を上げ液晶画面を見た。


っ!?


なんとそこには、


【100000000】


一億という数字がはじき出されていた。

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