死にたがりの魔物使いは異世界で生き抜くためにモンスターを合成します。

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

予選終了

「やったな、次元竜」
『フシュー……当たり前だ』
戻ってきた次元竜に声をかける。


「では続いて二番から五十番までの方、モンスターをリングに上げてください!」
男性のアナウンスが聞こえた。


「私です。頑張ってね、アップル」
『グルル!』
アップルエイプはドラミングをして気合いを入れるとリングへと上がっていく。
他のモンスターたちもリング上に集まった。


「では予選第三試合、始めっ!」


開始の合図を皮切りにそこかしこで戦いが始まる。
アップルエイプは怪力を生かして次々とモンスターを場外に投げ飛ばしていった。


「わあ、すごい。アップルその調子っ」
エイミが手を口に当て声を上げる。


「本選には俺たちみんな出られそうだな」
「……いや、それはわからないぞ」
「なんだよ? マジョルカ」
マジョルカは難しい顔をしていた。


「あそこを見ろ」
マジョルカがあごをしゃくる。
エイミと俺は注意深く人ごみの中を見た。


その視線の先にいたのは――。


「あ、あいつは……」
「あ、あの人って確か……」
「マコトだ」
マジョルカが口にする。


マコト。前にやり合ったことのある不気味な魔物使いの女だ。
マコトは俺と目が合うとにやりと口角を上げた。


あいつの主戦力のモンスターは全滅したはずだったが……。


「あいつも参加してるのか?」
「そうらしいな。ほら、エイミのアップルエイプが対峙しているブラッククロコダイルが奴のモンスターだろう」
とマジョルカ。


リング上に顔を向けるとアップルエイプとその倍は大きなワニのようなモンスターがにらみ合っていた。


「あのモンスター、かなりできるぞ」
「アップル、気を付けてっ」
エイミの声が飛ぶ。


他のモンスターたちは既に場外に落ちていてリングにはアップルエイプとブラッククロコダイルの二体だけ。


先に動いたのはアップルエイプだった。
口からリンゴを吐き出すとそれをブラッククロコダイルの目を狙って投げつける。
ブラッククロコダイルは大きな口を開けそれをがしゅっと砕いた。
その隙にアップルエイプは背後に回り込んでブラッククロコダイルの首を絞めた。


「よし、いいぞっ」
「アップルーっ」
『グルル!』
俺たちの応援の声が聞こえたのかアップルエイプは腕にさらに力をこめる。
アップルエイプの腕の筋肉が隆起した。
ブラッククロコダイルは苦しそうにもがいている。


「これ、いけるんじゃないのか?」
「そうだな」
マジョルカがそう返した時だった。
ブラッククロコダイルのしっぽが反り返りアップルエイプの体を突き刺した。


『グルルっ……』
「アップルっ!」


ブラッククロコダイルはしっぽを一振りして腕の力が抜けたアップルエイプを場外へと放り捨てる。
床に落ちたアップルエイプに駆け寄るエイミ。
すぐさま腕輪を押し当てて回復させた。


「し、勝者は受付番号四番のマコトさんのモンスターです!」
勝ち名乗りを上げる男性司会者。


するとマコトが近付いてきた。


「久しぶりやな、クウカイはん」
俺の目を見て話しかけてくる。


「お前も来てたのか」
「そらそうや。この町で待っていればまたクウカイはんらに会えると思うておったからなぁ。うちの勘もまんざらやないやろ」
マコトは嬉しそうに目を細めた。


「俺はお前には会いたくなかったがな」
「つれない返事やなぁ。まあそういうところもうちは好きやで」
そう言うと俺の頬をそっと撫でる。


「こら、やめろ」
「ほなまたな、クウカイはん」
ウインク一つマコトは去っていった。


「まったく、食えない奴だ。エイミ、アップルエイプは大丈夫か?」
「あ、はい。大丈夫です」
『グルル』
マジョルカの問いかけにエイミとアップルエイプが答える。


その後、予選第四試合はカティアスのスライムが勝ち残り本選出場枠はマジョルカのハイドラゴン、俺の次元竜、マコトのブラッククロコダイル、カティアスのスライムに決まったのだった。

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