死にたがりの魔物使いは異世界で生き抜くためにモンスターを合成します。

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

瞬間移動

何……?
今なんて言った、こいつ?
俺は鉄格子越しに不敵に笑うキリートを見て固まった。


「以前からガンツさんの行動には目に余るものがありました。そこにきて昨日の一件です。なのでガンツさんには僕が罰を与えました」
「……お前が、殺したのか……?」
「ああいう人種は口で言ってもわかってくれませんから」
悪びれた様子は一切見せずキリートは涼しい顔で佇んでいる。


確かにガンツの行動にはむかついたが、だからって殺すなんて……。


「……なんで俺の部屋にガンツの死体を置いたんだ?」
「だってあなたは仲間の女性が絡まれているのに何もしようとしなかったじゃありませんか。僕はそういう人間も嫌いなのですよ」
「いや、それは俺が魔物使いだからやり合っても勝てないし……ってそうだ! 俺は魔物使いなんだからガンツみたいな大男殺せるはずないだろっ」
そうだ。
そう主張すれば誰だって俺が犯人じゃないとわかってくれるはずだ。


「でしたらクウカイさん、あなたのモンスターも殺人の共犯として捕まえましょう」
「なっ……!」
「ではこれから僕が直々に捕獲してきます。といっても抵抗されたら殺してしまうかもしれませんけどね」
涼やかな笑みを見せながらキリートは去っていった。


まずいぞ。
ハピネスキングは今どこにいるんだ。
マジョルカたちと一緒にいるのか?
とにかくキリートが真犯人だってことを伝えないと。
……いやその前にハピネスキングをどうにかしないと殺されてしまう。


「ハピネスキングっ……」


と、
『呼んだかな? 主よ』
ふいに背後から声がした。


後ろを振り返ると暗がりの中からハピネスキングが姿を見せた。


「なっ、お前!? なんでこんなとこにいるんだっ?」
『忘れたか。吾輩には瞬間移動があることを』
ハピネスキングが悠然と語る。
『主がガンツとやらを殺していないことはわかっている。そもそも非力で臆病な主に人は殺せまい。よって助けに来た』
非力で臆病って……。


「マジョルカたちには俺が捕まってること伝えてくれたのか?」
『もちろんだとも。みな吾輩と同じ考えだ』
仰々しく親指で自分を指差すハピネスキング。


『さあ吾輩の手を取るのだ、主よ。瞬間移動で脱出する』
ハピネスキングは手を差し出してくるが、
「……いや、ちょっと待ってくれ」
このまま脱獄なんかしたら取り返しのつかないことになるんじゃないか……?
俺はこの世界で殺人を犯した逃亡犯として逃げ回ることになってしまうのでは。


「ハピネスキング。頼みがあるんだが……」

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