死にたがりの魔物使いは異世界で生き抜くためにモンスターを合成します。

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

ハピネスキング

翌朝、マジョルカの両親の墓に「行ってきます」と伝えて家を出ると、宿屋から出てきたシルキーとともに俺たちはオージョレの町をあとにした。


「マジョルカさん、お料理上手でしたよ」
「ほんと? 信じられないわ」
エイミとシルキーが話している。


「シルキーさんもマジョルカさんのおうちに泊まれば食べられたのに……」
「嫌よ、あんないつ崩れるかわかんないボロい家。あたしは宿屋で正解だったわ」
「マジョルカさん。今日の晩ご飯マジョルカさんが作ってくださいよ。シルキーさんに食べさせてあげましょう」
「断る。昨日は特別に作ってやっただけだからな。それより次はカムラの町に向かうぞ。ここからならキンシャザよりカムラの方が近いからな」
とマジョルカが言う。


「そこにはクウカイさんの体を治せそうな人がいるんですか?」
「さあな。それはわからないが大きな町だから何かしら情報が聞けるかもしれないぞ」
最近俺の体を治すことがおざなりになっている気がするのは気のせいだろうか。
こんな行き当たりばったりで本当に治せるのか?


「あたしカムラの町って一度行ってみたかったのよね。あの有名な銀の旅団の本拠地なんでしょ」
「ああ、うちとは違ってかなり大所帯なクランだそうだ」
「なあ、銀の旅団ってそんな有名なのか?」
俺は訊いてみた。


「クウカイさんは異世界から来たから知らないんですね。銀の旅団はレベル100以上ないと入れない精鋭揃いのクランなんですよ」
「レベル100以上か……だったらマジョルカなら入れるんじゃないか?」
マジョルカのレベルは200以上あったはずだ。


「わたしか? わたしは銀の旅団なんかに興味はないよ。昔一度オファーはあったが団体行動が苦手だからな、断ったんだ」
「ええ!? そうだったんですか?」 
「もったいないことするわねー。銀の旅団てスポンサーがついてるから働かなくても報酬が入ってくるらしいじゃない。あたしなら喜んで引き受けるわ」
お前はレベル100もないからオファーなんて来るわけないがな。




カムラに向かう道中襲ってきたホーンクロコダイルとやらに俺のモンスターでは手も足も出なかった。
運のよさだけしか取り柄のないラッキースライムと極端に小さいベビークイーンではやはり話にならない。
そこで俺はこの二体を合成することにした。


同じクランの者が倒した経験値は分配されるのでマジョルカたちに戦闘は任せて二体のレベルが10になるまで待った。


そして、
【ラッキースライム レベル10とベビークイーン レベル10を合成しますか? はい いいえ】
の文字。
俺は迷わず【はい】を押す。


すると、二体が光に包まれて重なり合う。
強い光が辺りを覆って……。


誕生したのは全身うろこのような鎧を纏った人型のモンスターだった。




【ハピネスキング ランクO 特技 ヒール みね打ち 呪い 火の玉】
【ハピネスキング レベル1 HP 192 MP 35 力 101 守り 75 素早さ 60 運 118】


【覚えられる特技は四つまでです。瞬間移動を覚えさせたい場合はどれか一つ消してください】


「なあ、マジョルカ。瞬間移動ってどんな特技だ?」
「知らん。初めて聞く技だ」


マジョルカも知らない特技か……。
まあ多分瞬間的に移動する技なんだろうが。
一応覚えさせておくか。


呪いを消してっと……。


【ハピネスキング ランクO 特技 ヒール みね打ち 瞬間移動 火の玉】


「ランクOのモンスターか、順調に進んでいるな。これならランクZのモンスターも時間の問題だな」
「それはいいけど俺の体の方も頼むぞ」
「それならあの町で訊けばいいさ」
マジョルカが指を差す方向には大きな町が見えていた。

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