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最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第344話 黒幕

俺たちは今馬車に揺られながらライコウ大帝国の首都であるアナスイに向かっていた。
それというのもローレルが「アントワネットを殺したい奴ってライコウ大帝国の誰かなんでしょ。だったらこんなところにいないでこっちから出向いてやりましょうよ、その方が手っ取り早いわっ」と言ったからだ。


暴論のような気もしたがローレルの言うことも一理ある。
アントワネットがいなくなったら得をする人物を洗い出していけばおのずと黒幕がわかるというものだ。


それに聞いたところによるとアントワネットの予知魔法はローアドス共和国よりライコウ大帝国にいる時の方が精度が高かったらしい。
それならば俺たちが護衛をしつつライコウ大帝国に戻った方が早く黒幕をみつけられるのではないかと考えたわけだ。


「実は怪しい人物に一人心当たりがあります」
セバスさんは馬車に乗る前にそう言っていた。
その人物とはライコウ大帝国の右大臣であるカポエラという男だそうだ。


「カポエラってどんな奴なの?」
ローレルが目の前に座るアントワネットに話しかける。


「カポエラか? カポエラは金に汚くずる賢い奴じゃ。自分の出世のためになることならなんだってするじゃろうな」
「だったらそいつが犯人なんじゃないの?」
「かもしれんが証拠がない。さっき襲ってきた奴らをお主らが逃さなければ雇った人物の名前を吐かせることも出来たというのに」
恨みがましい目で俺たちを見てくるアントワネット。


馬車の中に微妙な空気が流れたので俺は話題を変える。


「なあ、アントワネット。お前の予知魔法って具体的にはどんな感じなんだ? お告げみたいなものが降ってくるのか?」
「いいや。わらわの予知魔法は唱えてから眠ることで予知夢としてこれから先に起こるであろう未来を見ることが出来るのじゃ」
「へー、そうなのか。予知夢ね~……ほかにはどんな魔法が使えるんだ? もしかして記憶喪失を治す魔法とか使えないか?」
「なんじゃそれは。そんな魔法あるわけないじゃろ」
一蹴された。


まあ、駄目もとで訊いてみただけだから別に気にしないけどな。




☆ ☆ ☆




馬車を走らせること二日。
その間襲撃者が現れることもなく俺たちはライコウ大帝国へと無事入国を果たしていた。


「……はっ!」
すると止まった馬車の中で寝ていたアントワネットが突然がばっと起き上がった。
そして、
「予知夢を見たぞっ!」
そう口にする。


「どんな予知夢を見たのですか?」
ビアンキの問いかけに、
「セバスはどこじゃ!」
取り乱したように叫んだ。


「セバスさんならローレルと一緒にお昼ご飯を買いに行っていますけど……」
「セバスが危ないのじゃっ! 今すぐ追いかけるのじゃっ!」
アントワネットが馬車を降りようとする。


「おい、落ち着け。どうした?」
「セバスが一昨日の男たちに取り囲まれている夢を見たのじゃっ!」
「えっ!?」




☆ ☆ ☆




アントワネットを一人にするわけにはいかないので馬車にはアントワネットとビアンキとエライザが残り俺がセバスさんとローレルを追いかける。


しばらく走ると道端に倒れているローレルの姿を発見した。


「おい、どうしたっ? ローレル」
「……くっ。油断したわ……セバスさんを早く助けてあげて……」
ローレルが指を差す。
俺はすぐにその方向へと駆け出した。




☆ ☆ ☆




商店が並ぶ通りを駆け抜けたところでセバスさんが目に入った。
その周りには一昨日襲ってきた男たちもいる。


俺は「セバスさんっ!」と声をかけようとしたがどこか様子がおかしいことに気付き立ち止まった。


セバスさんは男たちにお金を払っていたのだった。


どういうことだ?
カツアゲされているのか……?
一瞬そう思うも次の瞬間セバスさんと男たちが握手を交わした。


「え……?」
思わず俺は声をもらす。


すると俺の存在に気付いたセバスさんがぎょっとした顔を見せた。
そしてあろうことか、
「あの男を始末しろっ!」
男たちに命令をしたのだった。


それを受け男たちが剣を握り締め俺に向かってきた。
「うおおーっ!」
「死ねこらぁっ!」
「はぁあっ!」


だがもちろんこんな奴ら俺の敵ではない。
俺はあっという間に返り討ちにしてみせる。


「な、なんだとっ!?」
セバスさんがたじろいだ。
とその時、
「ど、どういうことじゃ……?」
後ろからアントワネットの声がした。


振り返るとエライザたちとともにアントワネットがそこにいた。


「なんだあんたたち、ついてきてたのか?」
「はい。アントワネットさんがどうしてもと言うので……」
「それにしてもこれは一体どういうことなんだ?」
ローレルの肩を抱き支えながらエライザがつぶやく。


「セバス……ど、どういうことじゃ? お主がこの男たちをわらわに差し向けたのか? お主が黒幕じゃったのか……?」
「くっ……」
セバスさんは俺たちの知っている優しい顔を捨て鬼気迫る表情でアントワネットをにらみつけていた。


「姫、お前がわたしをお付きなんかに選ぶからこうなるんだっ。わたしは長年ライコウ大帝国のために働いてきた。それはわたしがライコウ大帝国の議員となり、いずれは大統領となるためだったのだっ。そのための根回しも着々と進んでいた。金も沢山配った。それなのに姫の思い付きのたった一言でわたしは姫付きの召使いのような存在にされてしまったのだっ。わたしがいなくなればせいせいすると思ったのだろうこれまで金を配ってきた議員たちはわたしの金を受け取っておきながらお前の馬鹿な提案に賛成する始末だっ」
「セバス……わらわに仕えることは名誉なことじゃと言っておったではないか……」
「そんなわけないだろっ! わがままなガキにこき使われて一生を終えるなんてごめんだっ。だからお前を殺そうとしたんだよっ」
セバスさんは唾をまき散らしながら大声を張り上げた。


「そ、そんなっ……」
「こうなったらわたしがお前をやってやるっ! スキル、召喚魔法ランク9っ!」
セバスさんが叫んだ直後、
『ギャアアァァオ!!』
銀色の巨大なドラゴンが出現する。




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メタルドラゴン――圧倒的な守備力を誇るドラゴンタイプの魔物。身にまとった銀色のうろこはあらゆる魔法を跳ね返す。弱点はない。


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「いけぇ、メタルドラゴン! 姫を踏みつぶせぇっ!」
『ギャアアァァオ!!』
メタルドラゴンが前足を上げてアントワネットを踏みつぶそうとしてきた。


俺は瞬時にアントワネットを安全な場所へ移動させるとメタルドラゴンめがけて跳び上がる。


「このやろっ」


そして俺はメタルドラゴンの頭部を殴り飛ばした。


大爆発したかのようにメタルドラゴンの頭部が破裂して血しぶきが雨のごとく降り注ぐ。


俺はそれを浴びながらセバスさんをみやった。


するとセバスさんは諦めたのだろう「う、う、うぅ……」とがっくり肩を落とすのだった。

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