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最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第339話 エルフ秘伝の飲み薬

俺たちがエルムンドの町に着いたのは辺りが暗くなり始めた頃だった。


俺は自分の泊まる宿屋に向かおうとビアンキたち三人に「じゃあ、また明日な」と言おうとした。
だがその時、
「んっ!」
ローレルがエルフ秘伝の飲み薬を俺に差し出してきた。
エルフ秘伝の飲み薬とはエルフ族から貰ったどんな病も治してしまうというとても貴重なアイテムだった。


「なんだローレル?」
「これ、あんたにやるわっ」
「えっ!?」
俺は驚きの声を上げる。
それもそのはずローレルはそのエルフ秘伝の飲み薬を高値で売りさばこうとしていたはずだからだ。


「どういうことだよ」
「……あんた記憶喪失なんでしょ。それってもしかしたら病気かもしれないじゃない。だったらこれ飲んだら治るのかな~って」
ローレルは俺の顔を見ずに言った。


「いや、そうかもしれないけどさ……」
だからといってローレルがそんな大事なものを俺にただでくれるなんて……何か裏でもあるのか?


俺が疑惑の眼差しをローレルの横顔に向けていると、
「素直に受け取ったらどうだ」
エライザが口を開く。
さらにビアンキも「よかったですね、勇者様」と微笑みを浮かべた。


「あ、ああ」


うーん……もしかしたら俺も少しはローレルたちに仲間として認められてきたのだろうか。


「じゃあ、ありがたくいただくよ。サンキュー、ローレル」
俺はローレルの手からエルフ秘伝の飲み薬を受け取ると早速瓶の蓋を開けて一気に飲み干す。


「ぷはーっ……」


「どう? なんか記憶戻ってきた?」
「勇者様っ……」
「どうだ? サクラ」
ローレルもビアンキもエライザも食い入るように俺をみつめていた。




エルフ秘伝の飲み薬を飲んだ結果、俺の記憶は――


「……駄目だ、戻ってない」


戻らなかった。


「どうやって俺がこっちの世界に来たのか、元の世界はどんなところだったのか、やっぱり全然思い出せない……悪い、みんな」


すると、
「あ~あ、せっかく苦労して手に入れたっていうのにそれじゃドブに捨てたのと同じじゃない」
ローレルが「バッカみたい」と声を出す。


「大損だわ、大損っ。結局タダ働きになっちゃったじゃないのっ」
俺の胸を指で突きながらローレルが言った。


「悪かったよ」
さすがに申し訳なく思いもう一度ローレルに謝る俺。




「はあ~……これはもう飲むしかないわねっ。ビアンキ、エライザ、今日はとことん飲み明かしましょ!」
「ええ、そうねローレル」
「ああ、わたしも飲み足りないと思っていたところだ」


エルフの村でさんざん飲んだのにまだ飲むのか、この三人は。


「そっか。じゃあ、俺は宿屋に戻るから」
辟易しつつ帰ろうとすると、
「はあ? 何言ってんの。あんたも来るのよっ」
ローレルが俺の服を後ろから引っ張った。
服が喉に突っかかり「ぐえっ」となる。


「おい、ローレル」
振り返るとローレルが、
「大事なアイテムを無駄にした罰として今晩はあんたのおごりで飲むからねっ」
俺の顔を指差して発した。


「えっ……俺のおごり?」
「それはいい考えだな」
「たまにはいいわね」
エライザとビアンキも乗り気な様子。


「いや、ちょっと待ってくれ。なんで俺――」
「さーて、そうと決まったらじゃんじゃん高いお酒注文してやるんだからっ」
「勇者様、ご馳走になります」
ローレルは高々と腕を上げ宣言し、ビアンキは楽しそうに俺にお辞儀をしてからそれぞれ酒場に向かって歩き出す。


「おい、待てって……」
「お前も早く来い」
言うとエライザがあごをしゃくってから歩き出した。


三人は振り返ることなく歩いていく。
俺は無視してやろうかとも思ったが、エルフ秘伝の飲み薬を無駄にしてしまったことは事実なので仕方なく三人のあとを追うのだった。




結局この日はローレルの言う通り酒場で朝まで飲み明かした。
お酒に弱い俺はほとんど飲まなかったがそれでも当然のごとく俺が全支払いを持った。


三人の酒豪のせいで俺の残金はたったの金貨三枚になってしまった。

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