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最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第334話 あっけない幕切れ

「バスケスっ。こっちの代表者はこの男に任せる。これで貴様は逃げずに戦うんだよなっ」
「は、ははっ。そんな弱っちそうな奴が相手か。オレは手加減なんか出来ねぇからな、死んじまっても知らねぇぞ!」
エライザと戦わなくて済んだとわかったからかバスケスは余裕の表情で笑う。


「あ~あ。あいつ、あんたがエライザより強いって知ったら腰抜かすわよ」
ローレルが楽しそうに俺を見上げて言った。


「勇者様、ちゃんと手加減してあげてくださいね」
「わかってるよ」
ビアンキにそう返すと俺はバスケスとイバラマさんのもとに歩みを進める。


「代表者、俺に交代してもいいんですか?」
訊くと、
「ああ、構わねぇぜ」
バスケスが答えた。


「よいのかバスケスよ。あっちの女が相手の方がよかったのではないか?」
「いや、あの大女はバケモンなんでね。でもこっちのガキなら楽勝っすよ」
イバラマさんとバスケスが小声で内緒話をしているが俺に丸聞こえだ。


「頑張ってください」
「はい、任せてください」
ドゴールさんの期待を背に受けて俺はバスケスと対峙する。




「死ぬ準備は出来てるか? ガキ」
バスケスが挑発的な顔で俺を見下ろしてきた。


「なあ、あんた。俺が勝ったらエライザに昔のことを謝ってくれないか?」
「昔のこと? なんだ昔のことっていうのは」
「傭兵だったエライザを追い出したんだろ、あんた」
「あー、そのことか。女が傭兵なんて目障りだったのさ。そのくせオレに意見なんかしやがって」
昔のことを思い出してかエライザをにらみつけるバスケス。


「で、俺が勝ったら謝ってくれるか?」
「別に負けるはずはねぇから構わねぇがオレにメリットがねぇな」
「ハンデで俺は左手の小指一本で戦ってやるよ。それでいいだろ」
「はっ。はははっ……」
「なんだ、面白いか?」
「なめんなっ! くそガキっ!」
バスケスは剣を抜くと俺に向かって力強く振り下ろした。


ガンッ。


「なっ!?」


俺は小指でバスケスの剣を受け止める。
それを見てバスケスが後ずさりをした。


「な、な、なんだ、てめぇはっ……なにもんだっ!?」
「さあ? 記憶がないから自分でもよくわからないんだ」
「ふ、ふ、ふざけたこと言ってんじゃねぇっ!!」
気持ちを奮い立たせたバスケスがもう一度剣を振り上げる。
そして俺めがけ飛び込んできた。


ひゅん。


俺はバスケスの剣撃をしゃがんでかわすとバスケスのひたいに小指でデコピンを放つ。


ぴしっ!


バスケスのひたいが割れて血がぶしゅぅっと噴き出た。
「がはぁっ……!」
そのまま後ろに倒れるバスケス。




「ドゴールさん、イバラマさん、俺の勝ちみたいですけど」
ぴくぴくと痙攣しているバスケスを見下ろしながら俺は二人に申し出る。


「な、なんと……」
「バスケスがあっさり負けおった……!?」


こうして貴族の代理戦争は俺の勝利であっけなく終わったのだった。




☆ ☆ ☆




「スキル、回復魔法ランク10っ」
「……はっ!」


俺は回復魔法でバスケスを全回復させてやった。


「じゃあ約束通りエライザに謝ってくれ」
「……くっ、ふ、ふざけるなっ。オレは女になど謝ったりはしないっ」
「あっ、おい……」


回復してやった恩も忘れ約束も反故にして立ち去っていくバスケス。


「ちょっと待てって――」
「サクラ、もういい」
俺が呼び止めようとするもそんな俺を制するエライザ。


「エライザ……」
「今回のことで完全に吹っ切れた。もうあんな奴のことなど忘れたよ」
「……そっか。まあ、エライザがそう言うのなら俺は別にいいんだけどさ」
「ありがとな、サクラ」
そう言って俺の肩にぽんと手を置くとエライザはビアンキとローレルのもとに歩いていく。
ビアンキとローレルの顔を見ると二人とも笑顔で微笑んでいた。




「ドゴール、お前が勝ったんだ。望みを言えっ」
イバラマさんが悔しそうに下唇を噛みながらドゴールさんに話しかける。


「イバラマさん、わたしの願いは一つです。今回の勝負で我々のいざこざに終止符を打ちましょう」
「それはどういう……?」
「うちのエルシーとそちらのエッジャの結婚を認めてほしい。そしてこれからは我々も仲たがいせずに同じ貴族同士協力していきましょう。ね? イバラマさん」
ドゴールさんはイバラマさんの手を取り両手で握った。


「そ、それは……」
「なに、渋ってんのよっ。あんた負けたんだからちゃんと言うこと聞きなさいよねっ。貴族でしょっ」
「おい、ローレル」
ややこしいから入ってくるな。


「……ふっ。そうだな。きみの言う通りだな……わかった。ドゴールさんの言う通りにしようじゃないか」
「ほ、本当ですか? イバラマさん」
「ええ」


ローレルがほら見なさいと言わんばかりのドヤ顔で俺を見てくる。
そんな顔で俺を見るな。


まあ、とにかくだ。
こうしてドゴールさんからの依頼を俺たちは見事に果たしたというわけだった。

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