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最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第331話 力の差

「ねえ、ビアンキ、エライザ。こんな奴ほっといてさっさと行きましょ」
「え、ええ……」
「そうだな。実に不愉快な奴だ」


道の真ん中で土下座を続けているサイチョウを見下ろしながら三人が口にする。


少しだけだが哀れな気もする。
……仕方ない。


「な、なぁローレルたち、ちょっと待ってくれ。こいつサイチョウっていうんだ。三十秒でいいからこいつの話を聞いてやってくれないか?」
「サクラ……」
サイチョウが土下座しながら小動物のような目で俺を見上げた。


「なんでよ。そんなことしてやる義理はないわよ。大体あたしそいつあんまり好きじゃないわ」
「同感だな。わたしも見てくれでしか人を判断しない奴は好かん」
「ビアンキはっ?」
「え、えーっと……私は勇者様がどうしてもと言うなら三十秒だけでしたらお話をうかがいます」
「本当か。ありがとなビアンキ」
「え~、ビアンキ本気なの~?」
ローレルがビアンキに抱きつく。


「え、ええ。さすがに土下座している方を放ってはおけないわ」
「優しすぎるのよ、ビアンキは~」


とりあえず話がまとまったようなので俺はサイチョウに三十秒だけ時間をくれてやることにした。
サイチョウは立ち上がるとビアンキの前に歩み出る。


「ビアンキさん。さっきも言ったがおれはサイチョウだ。今はまだB級だがいずれはS級になってみせる。だからおれを是非あんたたちのチームに入れてほしいっ。頼むっ」
「え、そ、それは……」
ビアンキは困った様子で俺やローレルやエライザの顔を見回した。


「断る」
エライザがビアンキの代わりに答えた。


さらに、
「あたしもいやだわっ」
ローレルも続く。


「はいっ。三十秒経ったわよ、おしまいねっ。行こっビアンキ、エライザ」


三人が歩き出そうとすると、
「ま、待ってくれっ。なぜ駄目なんだっ、理由を教えてくれっ」
サイチョウはしつこくくらいついた。


「あたし男、好きじゃないの」
「わたしもだ。自分より弱い男と旅をする趣味はない」
「わ、私も神官ですから男性と一緒にというのはあまり好ましくないので……」
「でもサクラは同じチームなんだろっ?」
とサイチョウ。


「そいつは仕方ないのよ」
「ああ。そいつはお前より圧倒的に強いしな」
「その人は私の勇者様なので……」
ローレルとエライザとビアンキが答える。


「だ、だったらおれがサクラに勝ったらチームに入れてくれっ」
サイチョウはそんなことを言い出した。


おいおい、マジかこいつ。
そこまでしてこんな奴らと同じチームに入りたいのか?
わけがわからん。


「あたしはそれで別にいいわよ」
「その代わりサクラに負けたら二度と私たちの前に顔を見せるなよ」
「ああ、わかった。それでいい」
自信満々な様子のサイチョウ。
あれ? こいつB級のくせしてやけに自信ありげだな。


サイチョウは俺に向き直ると、
「あんたには悪いが手加減なしだ。B級とF級の差を見せてやるぜっ」
言い放つ。


あー、そっか。
こいつ俺のことF級の冒険者だと思っているのか。


「じゃあ、あたしが合図するわねっ。よーい、始めっ」


ローレルの合図を受けてサイチョウが俺に向かってきた。
動きが遅い。
パンチが止まって見える。


俺は、
「スキル、峰打ちっ」
と小さく唱えるとサイチョウのお腹にこぶしを打ち込む。


「ごぶぅっ……!?」


サイチョウがコンクリートの地面に崩れ落ちた。


「はい。サクラの勝ちっ」
「ふっ。やはり勝負にならなかったな」
「勇者様、この方どうしますか? 回復して差し上げましょうか?」
「いいんじゃないか別に。自分でなんとかするさ」


目覚めたらまたしつこそうだしな。
死にはしないだろうから放っておくに限る。


「じゃああたしたち買い物の続きしてくるから、ばいばーい」
「もう変な知り合いを作るなよ」
「では勇者様、失礼しますね」
「ああ」


ローレルたち三人と別れた俺はこのあとエルムンドの町をぐるっと回ってから宿屋に戻るのだった。




ちなみにもう一度俺がこの場所に戻ってきた時サイチョウはいなくなっていた。
おそらく約束通り町を出たのだろう。

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