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最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第324話 エーデルワイスさん

「迷いの森にはわたしと彼とで行くからあなたたち三人はここに残っててちょうだいねっ」
エーデルワイスさんは俺の腕に抱きつきながらビアンキたちに向かって言う。


「え、それはどういうことなのですか? なぜ勇者様だけを連れていかれるのですか?」
ビアンキが当然の質問をした。


「どういうことってこれからクリムゾンデッドウルフを倒しに行くんだから男の冒険者を連れていった方が安心でしょ」
「その言い方だとまるで女の冒険者では役に立たないと言われているようで癇に障るんだがな」
エーデルワイスさんをにらみつけるエライザ。


「そんなこと言ってないじゃない。いやね~」
「ていうかあんた、病気のお母さんをほっぽって出かける気なのっ?」
ローレルの問いかけには、
「ええ。そのためにあなたたちにはこの家に残っててほしいのよ。奥の部屋には病気の母が眠ってるから静かにね」
とエーデルワイスさんはそのように淡々と答えた。


そして、
「じゃあ母のことは起こさないようにしてねっ」
言うなり俺を引き連れて家を出る。
俺はその間エーデルワイスさんにただされるがまま。
ドアを閉める直前のビアンキとローレルとエライザの俺を見る冷たい目がとても印象的だった。




☆ ☆ ☆




「あの、本当に二人で迷いの森とやらに行くんですか?」
「そうよ。それともわたしと二人っきりは嫌?」
扇情的な眼差しで俺をみつめるエーデルワイスさん。


「いえ、別に嫌ではないですけど……」
「ほんとっ? よかった~っ」
と言いながら腕に豊満な胸を当ててくる。


俺は変な居心地の悪さと若干の歩きづらさを感じながらもエーデルワイスさんとともにエルムンドの町をあとにした。




☆ ☆ ☆




夜空の下、しばらく歩いた俺とエーデルワイスさんは迷いの森の入り口までやってきていた。


「ここですね」
「そう、ここよ。緊張してる?」
「いや、別にしてないです」
エーデルワイスさんは俺の胸に手を当てて「ふ~ん、本当みたいね……」とつぶやく。


エーデルワイスさんはやたらとスキンシップが多い。
悪い人ではないのだろうがあまりこの状況は好ましくない。
さっさとクリムゾンデッドウルフとやらの角を手に入れて帰ろう。


そんなことを思いながら俺はエーデルワイスさんと二人で森の中を歩く。


迷いの森というだけあって森の中は似たような景色がずっと続いていて目印も何もなく俺一人では本当に迷子になってしまいそうなほどだった。
だがエーデルワイスさんは自分の家の庭のようにすいすいと進んでいく。


「エーデルワイスさん、あまり奥の方まで入っていかない方がいいんじゃないですかね。迷ったら大変ですし」
「大丈夫よ。わたし何度も来たことあるから。それよりもっと早く歩いてよ」
「は、はあ」
エーデルワイスさんが俺の腕に抱きついているから歩きにくいのだけれど……。




――それから歩くこと二十分。


「だいぶ森の奥の方まで来ちゃいましたけどクリムゾンデッドウルフが全然出てきませんね」
「そうね~」
クリムゾンデッドウルフどころか魔物一匹姿を見せてはいない。
にもかかわらず他人事のように能天気に返すエーデルワイスさん。
病気の母親のことが心配じゃないのだろうか。


とその時だった。


「もうここら辺でいいかしら」
エーデルワイスさんはそう口にしたかと思うと急に立ち止まった。
そして、
「みんな、出てきていいわよっ!」
大声で叫んだ。


「え? なんですか?」
わけがわからずエーデルワイスさんに顔を向けた俺に、
「ごめんね~。わたし人間じゃないの」
と妖艶な笑みを浮かべてみせるエーデルワイスさん。


その笑みはだんだんと口元が裂けていきエーデルワイスさんの口の中から鋭い牙が伸び出てきた。
その直後ずざざざっとやはり口から牙を生やした若い女性が三人俺を取り囲むようにして木の上から下りてきた。


「え……?」


見るとエーデルワイスさんを含めた四人ともが半裸状態でいる。
さらに頭には二本の角、背中にはコウモリのような羽がついていた。
紅い瞳を光らせて四人とも俺にゆっくりと近付いてくる。


「わたしたちはサキュバスなの」
エーデルワイスさんが言った。


「サキュバス?」




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サキュバス――淫靡な夢を見せその代わりに男の精と命を吸収する女性型の魔物。弱点は聖光魔法。


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「強い男がわたしたちの食糧ってわけ」
「この男が今度の得物? なんだかあまり強そうじゃないわよ」
「それに一人だけってどういうこと?」
「大丈夫よ。これでもA級の冒険者だから、充分わたしたちの欲は満たせるわ」


ここで俺はローレルが言っていた言葉を思い出す。


「ん? もしかして最近男の冒険者ばかりが失踪しているっていうのはお前ら、サキュバスの仕業か?」
「ふふん、なんだもうそんな噂が広まっていたのね」
「じゃあこの町もそろそろ引き上げ時ね」
「まあ、二十人くらいの命はいただいたからいいわ」
「最後にきみの命を貰ってからこの町を離れるとするわっ」


サキュバスたちが一斉に、
「「「「スキル、催眠魔法ランク10っ!」」」」
と唱えた。


……。


だが俺は【状態異常無効】のスキルがあるため眠くはならない。


「な、なにこれ、どういうことっ!」
「全然眠らないんだけどこいつっ……」
「わたしたちの催眠魔法が効かないっ……?」
「きみ、一体何者よっ!」
慌てふためくサキュバスたち。


「お前ら、人を殺してる魔物ってことだよな。ってことは退治しても構わないよな」


俺と目が合った一体のサキュバスが、
「ひっ!?」
背中の羽をばたつかせて飛び立った。


逃げようとする背中に向けて俺は、
「スキル、火炎魔法ランク10っ」
手を伸ばすと特大の炎の玉を放つ。


「た、助けきゃあぁっ――」
炎の玉に飲み込まれたサキュバスが灰も残さず消失した。


《佐倉真琴のレベルが5上がりました》


「あ、レベル上がった……」


次の瞬間だった。
三体のサキュバスがそれぞれ別々の方向に飛び立って逃げ出した。


俺は天高く手を上げると、
「スキル、電撃魔法ランク10っ!」
三体のサキュバスに超電撃を浴びせるのだった。


地面に落下し消滅していくサキュバスたち。


《佐倉真琴のレベルが15上がりました》




「うーん……っていうかこれってまた依頼失敗ってことになるのかなぁ……?」


今回のことをローレルたちにどう説明したらいいか悩む俺だった。

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