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最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第320話 一件落着

野次馬たちが去っていったあと気絶していたロイドにビアンキが回復魔法を使ってやった。


「……はっ。ぼ、ぼくは、負けたのか……?」
「ええ、あなたは負けましたよ。勇者様に」
「そ、そうか……」
がっくりと肩を落としうなだれるロイド。


「情けないよ、自分から決闘を申し込んでおいて負けるなんて……しかも卑怯にも召喚魔法まで使ってさ」
「まあ、それだけビアンキに対して本気だったってことだろ」
ロイドがあまりに不憫に見えたので俺は少しだけフォローする。


「きみ……」
「勇者様……」
ロイドとビアンキが俺を見上げた。


「ねえ、あんた。これでビアンキのこと諦めるんでしょうね」
「男に二言はないはずだぞ」
「うん、わかっている。ぼくの完敗だよ」
そう言うとロイドは立ち上がる。


そしてビアンキをじっとみつめて、
「ビアンキ……幸せになってくれ」
「ロイド……」
「ではぼくはこれで失礼するよ。三人ともビアンキのことよろしく頼んだよ」
口にすると立ち去っていった。


「ビアンキ、これでよかったのか?」
ロイドの弱々しい後ろ姿を眺めていたビアンキに声をかける。


「はい。いいんです、これで」
ビアンキは自分に言い聞かせるようにして小さくつぶやいた。




「さ~てと、変な奴もいなくなったことだし今からぱあーっと飲んでお祝いでもしましょうよっ」
ローレルが突然言い出す。


「そうだな。サクラも無事だったことだしな」
エライザもそれに続いた。


「おいおい、まだ昼だぞ。今から飲むのか?」
「いいじゃん、時間なんて別に。あたしたちは自由が好きだから冒険者やってるんだから。ねっ? ビアンキ」
ローレルはビアンキに話を振る。


「ふふっ……そうね。たまにはお昼から飲むのも悪くないかもね」
「なんだ、ビアンキもかよ」
「嫌ならお前はついてこなくてもいいんだぞ」
と不敵な笑みを浮かべるエライザ。


「待てって。俺も行くよ、一人で待っているのも退屈だからな」




こうして俺たち四人は翌日の朝までお酒を飲み交わしたのだった。




☆ ☆ ☆




一日置いて俺たちはゴンズの町の冒険者ギルドにやってきていた。
もちろん依頼を受けるためだ。


「何かいい依頼あるかしらね~」
ローレルの言ういい依頼とはすなわち報酬の高い依頼のことだ。


俺たちは依頼書の貼られた壁の前でA級の冒険者向けの依頼書を見比べる。


「これなんかどうだ?」
「ん、どれどれ……駄目、却下。報酬が安すぎるわっ」
ローレルは手をひらひらとさせ突っぱねた。
俺の意見は相変わらず通らない。


「ローレル、たまには報酬なんかより人のためになる依頼を選んだらどう?」
ビアンキは聖人君主じみたことを言うが、
「ビアンキは甘いわよ。世の中お金なのっ。お金がなきゃ生きていけないんだからねっ」
ローレルは声を大にして返す。


「まあ、ローレルの言うことも一理あるな」
エライザは言いながら上の方に貼られた一枚の依頼書を手に取った。


「貿易商を営んでいる男からの依頼だ。成功報酬は金貨百枚だそうだ」
「えっ、うそっ、金貨百枚っ!?」
「ああ」
「いえーい。だったらそれに決定よっ!」


ローレルの一声で次に受ける依頼が決まったのだった。




☆ ☆ ☆




ンゴボゴさんというゴンズの町では有名な貿易商が今回の依頼主。
依頼内容は荷馬車を襲う盗賊を捕まえてンゴボゴさんに引き渡すこと。


「ふーん。でもそのンゴボゴって人、お金持ちなんでしょ。自分で傭兵とか雇えばいいのに」
「傭兵だともっと高くつくと思ったんじゃないか。それに傭兵は荒っぽい奴が多いからな」
元傭兵であるエライザが口にする。


俺たちは今依頼主のンゴボゴさんの自宅へと向かっていた。


「っていうか依頼は荷馬車の護衛じゃなくって犯人を引き渡すことなんだ~。なんか変わってるわね」
「もしかしたらンゴボゴさんご自身で犯人に罪の重さを説いて聞かせるつもりかもしれないわよ」
「え~、ビアンキじゃないんだからそんな面倒なことしないよ」
「そう?」


しばらく歩いて俺たちはンゴボゴさんの家に到着した。


「うわ~、でっかいわね~。何この家」
ローレルは見上げながら声をもらす。


「たしかにすごいな、これは。あるところにはあるんだなぁ、お金って」
目を見張るほどの大豪邸に俺も思わずつぶやいた。
それほどにンゴボゴさんの家はとてつもなく立派で大きかった。


「どんな悪いことしたらこんな家が建てられるのよ、まったく~」
「ちょっとローレル、誰かに聞こえたらどうするの」
「大丈夫だってば。それよりさっさとンゴボゴって人に話を聞きに行こっ」
そう言うとローレルは大きな扉を開けて玄関へと向かっていく。
俺たちもローレルのあとに続いて広い庭を通り玄関へと進んだ。


「こんにちはーっ、ンゴボゴって人いるーっ?」
「おい、ローレル。チャイムがあるんだからそれ使えよ」
「う、うっさいわね。今使おうと思ってたのよっ」
俺に指摘されるまで絶対チャイムに気付いていなかったであろうローレルが俺をキッとにらむ。


ピンポーン! ピンポーン! ピンポーン!


何度も鳴らすなよな……。
注意しようかとした時だった。


「はい、ただいま出ますっ」
ドアの向こうから声がしたかと思うとメイド服姿の女性がドアを開け顔を覗かせた。


「あの、どちら様でしょうか?」
「私たちは冒険者ギルドから派遣された冒険者です。今回こちらのお宅のンゴボゴさんの依頼を引き受けてまいりました」
ビアンキが丁寧に説明するとメイドさんは、
「あ、旦那様から聞いています。ようこそいらっしゃいました。それではみなさんどうぞ中へ入ってください」
俺たちを迎え入れてくれる。


長い廊下を通って広いリビングに案内してから、
「今すぐ旦那様を呼んできますのでこちらでお待ちください」
メイドさんはいそいそと部屋を出ていった。




「メイドなんて雇ってるのね。やっぱりお金持ちは違うわ」
ローレルは部屋に置かれていた壺を手に取りながら品定めするように言う。


「ローレル、勝手に触らないの。はしたないわよ」
ビアンキがそれを注意した。
すると、
「とか言ってビアンキだってちらちら部屋の中盗み見してるじゃん」
「わ、私は別にそんなことっ……」
ローレルに言われ顔を赤くするビアンキ。
肌が白いのでわかりやすい。


とその時、


バァン!


とドアが開け放たれると小太りなおじさんが現れた。
そしてローレルが壺を触っているのを見るなり、
「こりゃ! わたしの壺に勝手に触るんじゃないっぽ!」
おかしな口調で声を張り上げるのだった。

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