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最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第315話 女心と秋の空

俺の頭の中にレベルアップを告げる機械音が響く中、
「どういうつもりだっ! お前が出る幕ではなかった、わたし一人で充分倒せたんだっ!」
エライザが俺の胸ぐらを掴んできた。


「ちょっとエライザっ!?」
「エライザっ」
ローレルとビアンキが口を開く。


「いや、つい体が動いてたんだよ」
「わたしでは勝てないと思ったのかっ! わたしが女だからかっ!」
「そんなことないって、お節介だったなら謝るからとりあえず手を放してくれないか」


エライザは殺意のこもった目で俺をにらみつけていた。


「エライザ、さっきのはあたしも不注意だったわ。ごめん」
「エライザ、勇者様から手を放してあげて」
「……くっ……」
エライザは俺の服から手を放すと俺たちから距離をとった。
そして折れた剣を投げ捨てる。


するとローレルが俺に近寄ってきて、
「エライザって昔傭兵だったみたいなんだけど自分より弱い男が部隊のリーダーになってたんだって。そのリーダーに口答えしたら最終的には女だからって理由で解雇されたらしいのよ」
こそっと俺に耳打ちしてきた。


「だからエライザのこと怒んないでよね」
「ああ、別に気にしてないさ」


なぜか前にも似たようなことがあったような気がする。


「あと、このことは内緒だからね。喋ったら殺すから」
「あ、ああ」
ローレルに強く念押しされた俺は「わかったよ」とうなずく。


「さ~てと、じゃあ宝箱を開けちゃいましょっ」
ローレルが声を弾ませ宝箱のもとに駆けていった。
そして宝箱を開け放つ。


すると、
「……え、何よこれ」
さっきまでとは打って変わって声のトーンが低くなった。


「ローレル、何が入っていたの?」
ビアンキが寄っていく。


「ビアンキ見てよこれ~」
「あら、これは……?」
「エライザも来てよ~」
「なんだ? 何が入っていたんだ?」


呼ばれてエライザも二人のもとへ行くと宝箱を見下ろした。


「これは……とんだお宝だな」
「まったくよ」
「ふふふっ」


俺も近寄って宝箱を覗き込む。
と宝箱の中には二体の土偶が入っていた。


「これがお宝か?」
「ハズレよハズレっ、今回の依頼は大ハズレだわっ。あ~あ、こんなことならもっと手堅い依頼を受けとけばよかったわ」
肩をすくめもと来た道を戻ろうとするローレル。
ビアンキもエライザもそれに続く。


「おい、この土偶はどうするんだ? マックスさんのために持って帰らないのか?」
「そう思うならんならあんたが持って帰りなさいよ。あたしはパスよっ」
「わたしもパスだ」
「勇者様、お願いしますね」
そう言って三人はさっさと行ってしまった。


「まったく、そろいもそろって……よいしょっと」


俺は腰をかがめて宝箱の中から二体の土偶を取り出すと不思議な袋の中にそっとしまい三人のあとを追うのだった。




☆ ☆ ☆




ゴンズの町への帰り道エライザにちょっとした変化が見られた。
というのはホブゴブリンの群れが現れた時のことだった。


例によってエライザがホブゴブリンたちに向かっていくのを俺とビアンキとローレルが後ろで見守っていると、
「おい、サクラっ。何してるっ?」
エライザは振り返り俺に声を飛ばしてきた。


「何って、別に何もしてないけど」
「魔物が出たんだっ、ボケっと突っ立ってないでお前も戦えっ」
「え、だって戦闘はエライザの役目だったんじゃ……」
「いいから戦えっ」
言うとエライザはホブゴブリンを素手でぶん殴る。


俺はビアンキとローレルに顔を向け「どういうことだ?」とジェスチャーをしてみせるがビアンキは微笑み、ローレルはにかっと笑うだけ。


なんだよそれ……?


「おい、サクラっ。新入りのくせにわたしばかりに働かせるなっ」
「はいはい、今行くよっ」


俺は三人の心境をまったく理解できないままホブゴブリンの群れに飛び込んでいった。


そのあと出てきた魔物たちも俺とエライザの二人で協力し合って撃退していった。




☆ ☆ ☆




ゴンズの町に戻った俺たちをマックスさんは笑顔で出迎えてくれた。


「いやあ、お疲れ様でした~。それで遺跡の方はどうでしたか?」
「えっと土偶を二つみつけることが出来ました」
俺は不思議な袋の中から土偶を取り出してマックスさんに差し出す。


「おお~っ、これはすごいお宝ですよっ」
「何よ、そんなのただのがらくたじゃない」
ローレルの言葉も耳に入らない様子でマックスさんは「これいただけるんですよねっ?」と嬉しそうに訊いてきた。


「はい、もちろんです」
「いやあ、ありがとうございます。やっぱりみなさんにお願いしてよかったですよ~。いやあ、嬉しいな~」
「ふふふ、あなたったら」
それを見て奥さんであるカーラさんも嬉しそうに笑っている。


「じゃあ俺たちはこれで失礼しますね」
「はい、ありがとうございましたっ」


こうして俺たちはマックスさんの家をあとにした。




「あ~あ、タダ働きなんてついてないわ」
「まあ、そう言うなよローレル。マックスさんたちが喜んでくれたんだからいいだろ」
「はぁ? 何その優等生な発言。お金にならなきゃ意味ないのよっ」
お金に執着心のあるローレルは親の仇であるかのように俺を見上げる。


「それじゃあベスパの町に戻るとするか?」
俺が三人に声をかけると、
「なぜそうなる?」
エライザが逆に訊き返してきた。


「は? だってもう依頼は済んだだろ」
「ああ。だからといってわざわざベスパに戻る必要はないだろ。冒険者ギルドはこの町にだってあるんだからな」
「え、そうなのか?」
「そうですよ、勇者様。私たち三人は依頼をこなしながら旅をしてきました。別に一つの場所にとどまることはないのです」
「なるほどな。わかったよ」


まあ、それならそれで別にいい。
というよりむしろベスパの町までまた歩くのもだるいと思っていたところだから好都合だ。


「じゃあそろそろ暗くなってきたし宿屋を探すんだな」
「なにあんた、まさかあたしたちと一緒のところに泊まろうってんじゃないわよね?」
とローレル。


「え、違うのか?」
「勇者様。それは構いませんけど私たちの泊まる旅館は多分勇者様には手が出ないのではないかと……」
言いにくそうにビアンキが口にした。


「ん、それってどういう……?」
「つまりわたしたちの泊まる旅館は一泊金貨十枚以上するような高級旅館なんだよ。寝床には金に糸目はつけないというのがわたしたちのモットーだからな。お前では払えないだろ?」
エライザが口角を上げつつ言う。


一泊金貨十枚以上だと……。
俺の今の所持金なら払えないことはないが三日で破産してしまう。


「そういうわけだからあたしたちはもう行くわっ」
「ここで一旦お別れだな」
「では勇者様、また明日冒険者ギルドでお会いしましょう」


ローレルとエライザとビアンキはそう言うと俺を置いて立ち去っていった。

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