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最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第286話 地下牢

「なんで俺が地下牢なんかに閉じ込められなくちゃならないんだ……」


俺は酒場で喧嘩をしたとしてベスパの町の地下牢に入れられていた。


「おーい、看守さん。誤解なんですって。俺は巻き込まれただけなんですよ」
「うるさいっ、黙って寝ろっ」
看守が持っていた警棒で鉄格子をガンガンと叩く。


「はぁ~、まいった……こんなことになるならあんな奴らなんか無視すればよかった」


あんな奴らというのは三人の男たちと三人の女たちのこと。
酔っ払った男たちが女たちにちょっかいを出す場面に偶然居合わせてしまったこととちょっとした正義感から手を出してしまったことが原因で俺はこんな状況に陥っているのだった。




……多分、俺が覚えている転移魔法を使えばここから逃げ出すことは出来るだろう。
いや、そんな魔法を使わずともその気になれば鉄格子くらい簡単に折り曲げられるはずだ。


だがそんなことをしたら俺は地下牢から脱獄した逃亡者としてさっきの警備隊とやらに追われかねない。
せっかく冒険者になれてこれからだって時に逃亡生活なんかしたくはない。


「はぁ~……まいったなぁ」


結局俺はこの日は宿屋に戻ることはかなわずひんやりと冷たい地下牢の中で夜を明かしたのだった。




☆ ☆ ☆




「おい、起きろっ!」
「んぁっ……」


朝から鉄格子を警棒でガンガンと叩いて俺を起こす看守。


「よく眠れたかっ」
「いえ、全然……」


寒さのせいで夜中に何度も目が覚めてしまった。


「お前に朗報だっ。身元引受人が現れたから釈放だ、よかったな!」
「えっ?」


身元引受人? 誰だろう。
……あっ、もしかしてブライドさんかなっ。


ブライドさんとは俺が記憶喪失になってから初めて出会った旅の行商人のことだ。
ベスパの町に入った時に別れたきりだったがもしかしたらどこかで話を聞きつけて俺を助けに来てくれたのかもしれない。


「これはお前が持っていた金だ。昨日の猫猫亭での飯代と壊したテーブルの代金は差し引いておいたからな」
「えっ……」
食事代はともかくテーブルを壊したのは俺じゃないんだけど……。


腑に落ちない感情のまま金貨三枚と銀貨五枚を看守から受け取ると、
「ほら、出るんだ。ついてこいっ」
「あ、はい」
俺は看守に付き従って地下牢をあとにする。


そして地下からの階段を上って朝日に照らされたベスパの町に顔を出すとそこにいたのはブライドさん……ではなく昨日酒場で会ったローレル、ビアンキ、エライザの女三人組だった。




「え……あ、あんたたちが身元引受人?」
「はい」
口を開いたのはビアンキ。
神官のような恰好をして手には金属製の杖を持っている。
金色の髪が太陽光できらめいて神々しく見える。


「な、なんであんたたちが……?」


酒場で相席だったという以外接点は何もない。
それどころかローレルは男が嫌いだと言っていたはずだし、エライザにいたっては俺の命など微塵も気にしてはいなかったはずだ。
それなのに……。


「あんた、助けてもらっといて何か言うことはないのっ?」
小柄でボーイッシュなローレルが腰に手を当てて俺を見やった。


「あ、ああ、そうだな。ありがとう、助かったよ」
俺がローレルを見て答えると、
「礼ならローレルじゃなくビアンキに言うんだな」
大柄で大剣を背中につけたエライザが話し出す。


「わたしはお前のことなんかどうでもよかったんだがビアンキがお前を見捨てることは出来ないっていうから仕方なくな」
「あたしも無視しようって言ったんだけどね。ビアンキは神に仕える身だから放っとけなかったみたいよ。ラッキーだったわね、あんた」


「そうだったのか。ありがとうビアンキ」
俺はビアンキに向き直ると少しだけ頭を下げた。


「いえ、気にしないでください。私は私の信じる神の教えに従ったまでですから」
ビアンキはどこか突き放すような冷たい口調で言う。


「それでは私たちはこれで失礼します」
「じゃあそういうことだからあんたはこれからもF級の依頼、せいぜい頑張んなよっ」
「わたしたちはこの町を出るから二度と会うことはないだろうが達者でな」


ビアンキたち三人はそう言うと俺の前からそうそうに立ち去っていった。




☆ ☆ ☆




「あら、お帰りお客さん。昨日はどうしたんだい?」


宿屋に戻ると宿屋の女主人が声をかけてくる。


「ちょっといろいろありまして……」
「いろいろあって朝帰りかい?」
女主人は「むふふ」とにやけた顔で俺を見た。


「いや、朝帰りっていうか……あ、そうだ。これ、昨日の宿代です」
俺は金貨一枚を取り出して渡そうとすると、
「いいよー、そんなの。昨日は泊まってないんだからさ」
女主人は笑顔で手を横に振る。


「え、でも――」
「その代わりこれからもひいきにしてちょうだいねっ」
「あ、はい。ありがとうございますっ」
「それに今日こそは泊まっていってくれるんだろ?」
「はい。お世話になります」


女主人のご厚意で一泊分お金が浮いた。
経済的にあまり余裕のない俺にとってはそれはとてもありがたいことだった。

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