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最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第275話 ベスパの町

「サクラ、そこでパンチだっ!」
「はいっ!」


俺はブライドさんの掛け声を受けてゴブリンにパンチを浴びせた。
豆腐を殴ったような感触とともにゴブリンがはじけ飛ぶ。


「うひゃあ、すげぇ威力だなぁ。さすがレベル十一万ともなるとちからも半端じゃねぇな」


ブライドさんと一緒にベスパの町を目指し歩いていたところゴブリンに出くわした俺は戦い方も忘れてしまっていたのでブライドさんに師事してゴブリンを撃退したところだった。


「よし、次に魔物が出てきたら魔法を使って倒してみろ」
「はい、やってみます」
言いつつ俺は不思議な袋の中からタオルを取り出すと手についたゴブリンの血を拭う。


不思議な袋とは俺の腰の部分にぶら下がっていた白い布袋のことで、ついさっき識別魔法を使ってこれがアイテムというものであることを知った。


中には沢山の衣類や缶詰めやミネラルウォーター、薬草や魔草、テントなどが入っていた。
カニの缶詰めがやたらと入っていたのでもしかしたら俺はカニが大好物だったのかもしれない。




☆ ☆ ☆




その後二時間ほど歩いてベスパの町にたどり着いた。
道中、下級ゾンビの群れが襲ってきたが火炎魔法や電撃魔法などで返り討ちにしてやった。
そのおかげで俺のレベルは2上がっていた。




「おれはここまでだ。あとは自分でなんとかしろよ」
「はい、いろいろありがとうございました」
俺はブライドさんにお礼を言って頭を下げる。


「なあに、お前くらい強けりゃたとえ記憶が戻らなくても生きていけるさっ。じゃあなっ!」
そう言うと背中のカゴを揺らしながらブライドさんは立ち去っていった。
俺は感謝の気持ちを込めてブライドさんの後ろ姿にもう一度頭を下げた。




「さて、これからどうするか……」


ブライドさんもいなくなり頼れる人はもう誰もいない。
お金も持っていないので医者に行ったところで診てもらえるかどうか……。


「とりあえずブライドさんに教えてもらった冒険者ギルドってところに顔を出してみるか。もしかしたら俺のことを知っている人がいるかもしれないしな」
そう考えて俺は道行く人に冒険者ギルドの場所を訊ねてそこへと向かうのだった。




☆ ☆ ☆




「へー、ここが冒険者ギルドかぁ」
大きな建物を見上げながら感嘆の声を上げる。
未だに冒険者ギルドとギルドの違いがよくわかっていない俺だったがそれでも立派なたたずまいに思わず声が出てしまった。


すると杖を腰に差した冒険者らしき女性二人組が俺を見てくすくすと笑い通りすぎていく。
おのぼりさんだと思われたのかもしれない。


「……」
恥ずかしい気持ちを押し殺して俺は建物の中へと入っていった。




「いらっしゃいませ」
中に入ると扉付近にいた女性が話しかけてくる。


「あ、どうも」
軽く会釈を返す俺。


すると女性は、
「もしかして冒険者ギルドに来られたのは初めてですか?」
微笑みながら訊ねてきた。


「えーっとですね……実は俺、ちょっと記憶喪失になってしまったみたいで初めてなのかどうか自分でもわからないんですけど」
「え? 記憶喪失、ですか?」
「はい。なので俺のこと見覚えありませんか?」
我ながら変な質問だとは思うがほかに訊きようがないので仕方がない。


「そうですね、おそらく初めましてだと思うのですが……もしよろしければお名前を教えていただけましたらこちらで登録されているかどうか確かめることは出来ますけれど」
「あ、じゃあお願いします。佐倉真琴です」
「サクラ・マコト様ですね、少々お待ちください」
そう言うと女性は奥のカウンターの向かい側に座っていた受付嬢のもとに駆け寄っていき何やら話しかける。


しばらくやり取りをしてから女性が戻ってきた。
「すみませんサクラ様、サクラ様のお名前で登録はされていないようですのでやはりサクラ様は初めていらっしゃったのだと思います」
申し訳なさそうに言う。


「あ~、そうですか……」
相槌を打ちつつ俺は頭の中でこれからどうしたらいいかを考えていた。


記憶がない。
知り合いもいない。
お金もない。
これでは八方ふさがりではないか。




途方に暮れていると女性が、
「サクラ様、大丈夫ですか?」
心配そうに顔を覗き込んでくる。


「あ、はい、すみません」
本当は全然大丈夫などではないのだが初対面のこの女性に弱音を吐いても仕方がない。
まさかお金を貸してくれとも言えないしな。


「えっと、冒険者になったらお金って稼げるんですよね?」
「はい。いろいろな依頼を受けてその成功報酬としてお金を受け取ることが出来ますよ。冒険者としての登録をされていきますか?」
と女性は提案してきた。


「そう……ですね」
何をするにもまず先立つものが必要か……。
そう判断して、
「じゃあお願いします」
「はい、ではこちらへどうぞ」
言って女性は笑顔で俺を奥のカウンターに案内してくれる。


「ではここからは受付のリムルがお受けいたしますのでなんなりとお申し付けください」
「はい……どうも」


女性が去っていくとカウンターの向かいに座るリムルさんという受付嬢が口を開いた。


「ではこれから冒険者としての登録をさせていただきますね。お名前をフルネームでどうぞ」
「佐倉真琴です」
「サクラ・マコト様ですね。それでは金貨一枚いただけますか」
「え、金貨……ってお金ですよね?」
「え? そうですけど」
リムルさんは顔を上げ俺を見る。


「登録するのにお金がいるんですか?」
「はい。金貨一枚となっております」


マジかよ……。
金貨なんて持ってないぞ。


俺が目を泳がせていることに気付いたのだろう、
「もしかしてお金をもっていらっしゃらないのですか?」
リムルさんが優しく声をかけてきた。


「はい……」
「そうでしたか。それではちょっと」
「はい。そうですよね、すみません」
俺はなすすべなく椅子から立ち上がる。


もしかしたらまだこのベスパの町で商売をしているブライドさんをみつけられればお金を貸してもらえるかも。
そんな淡い期待を胸に俺は冒険者ギルドをあとにしようときびすを返した。


とその時、
「あっ、待ってくださいサクラ様っ」
リムルさんが俺を呼び止める。


「はい? なんですか」
「サクラ様のお腰についているものは不思議な袋ではありませんか?」
驚いた様子でリムルさんが俺の腰に手を向けた。


「はい、そうですけど……」
「そちら非常に人気のあるアイテムでして今なら金貨百枚で買い取りさせていただいておりますが」
「えっ、本当ですかっ?」
「はい。もしよろしければ買い取らせていただきますよ」


冒険者ギルドではアイテムの買い取りもしてくれているのか。
知らなかった。


「じゃあこれを――」
俺は不思議な袋を腰から外そうとしてあることを思い出す。
それはベスパの町に来る途中でブライドさんが俺に放った言葉。
「その不思議な袋は手放すなよっ。おれだって金さえあれば欲しいくらいの激レアアイテムなんだからなっ」


「サクラ様? どうかされましたか?」
「いや、あの……ちょっと待ってくださいねっ」


リムルさんに断ってから俺は不思議な袋の中に手を突っ込んだ。
そして透明テントを取り出すとカウンターに置いてみせる。


「すみません、このアイテムって買い取ってもらえますか?」
「こちらは透明テントですか? ちょっと見せてもらってもいいですか」
そう言うとリムルさんは透明テントを手に取って広げてみた。


「はい。大丈夫ですよ。こちらは金貨五枚ですがそれでよろしいですか?」
「はい、もちろんですっ」


金貨五枚。
その価値がどれくらいかはわからないがとりあえずギルドに登録できるだけのお金は手に入る。
俺はそう思い二つ返事でオーケーしていた。

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