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最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第271話 スタンピード

「きゃああぁぁーっ!」


その日は女性の悲鳴で目が覚めた。
俺は家の外から聞こえた女性の甲高い声で飛び起きると窓を開ける。


二階の窓から道路を見下ろすとそこには口元に手を当て叫び声を上げる若い女性の姿があった。
そしてその女性の視線の先にはスライムがいて道路上をぴょんぴょんと飛び跳ねているではないか。


「えっ!?」


俺は目を疑った。
なぜなら魔物が地上にいるなどあり得ないことだったからだ。


「キューンっ」
『ぅん? なあに……マスタ~?』
「ちょっと来てくれっ」


俺は隣で寝ていたキューンを起こすと一緒に外へと向かう。
するとさっき部屋から見た女性とスライムが道の真ん中で牽制し合っていた。


「すいません、どうしたんですかっ?」
俺が女性に声をかけると、
「あれ見てよっ! スライムって言うんでしょあれっ、なんでダンジョンの魔物がこんなところにいるわけっ!」
女性は取り乱したように叫ぶ。


やはり目の前のスライムは女性が召喚した魔物とかそういうことではなく野生の野良スライムということか。
しかしなんでスライムが地上にいるんだ……?


『キーキー!』


スライムが俺を見て跳びかかってきたので俺はばしっとひっぱたいた。
水風船のように破裂するスライム。


「あ、ありがとう――ってちょっときみっ! その浮かんでいる奴も魔物じゃないのっ!?」
女性はキューンを指差しうろたえる。


「あ、いやこいつは敵じゃないですよ」
と手を振り否定するも女性は「なんなのよ一体~っ!」と言って走り去ってしまった。


『なんだよも~、感じ悪いな~』
「なあキューン、これどうなっているんだ? なんでスライムが地上に?」
『う~ん……あっマスターあっちからも魔物が来てるよっ』
キューンが逆方向を指差す。


振り返ると、
『ウゴオオオオーッ!!』
ベヒーモスが俺たちの方へ向かってきていた。


「げっ、ベヒーモスもいるのかよっ」
『マスター、おいらがやるよっ』
そう言うとキューンは巨大な白竜に姿を変える。
そして灼熱の炎をベヒーモスに浴びせた。


ベヒーモスが消失していく。


「なんなんだ一体?」




そんなことがあってから約一時間後――地上はダンジョンにいるはずの魔物たちであふれかえることとなる。




☆ ☆ ☆




<……緊急事態宣言が発令されましたっ。繰り返します、緊急事態宣言が発令されましたっ。国民の皆さんはすみやかに近くの建物に避難してくださいっ。外には魔物があふれています、決して外には出ないでくださいっ。外には魔物があふれています、決して外には出ないでくださいっ。現在自衛隊とSST隊員によって魔物を駆除しています、ですので国民の皆さんは屋内に入って鍵をかけてくださいっ。繰り返します、決して外には出ないでくださいっ。現在自衛隊とSST隊員によって魔物を駆除しています、ですので決して外には出ないでくださいっ>


ラジオから流れる声も幾分焦った様子で語りかけてくる。


「どうなってるんだ、こりゃあ?」
「怖いわねぇ」
リビングにいた父さんと義母さんが立ち上がって窓に近付いていく。


「父さん、義母さん、窓から離れてて。危ないから」
「ん、そうか?」
「真琴くん、家の中なら平気なんでしょ?」
「そう言われてもわからないよ」


今のところ俺が見たのはスライムとベヒーモスだけだがもっと強い魔物が外をうろついているかもしれない。
それこそ高ランクダンジョンの魔物が現れだしたらいくら自衛隊とSSTが動いているからといって安心はできない。
俺はいいが父さんと義母さんはダンジョンに潜ったことがないのでレベルは1のままのはずだ。
魔物に襲われたらひとたまりもない。


とにかく俺が守ってやらなくては。


俺が二人を見ながら意気込んでいるとキューンが思い出したように口を開いた。


『あっ、マスター。これもしかしたら邪神バアラのせいかもしれないっ!』
「邪神バアラ? なんだそれ? どういうことだ?」
『うん、あのね、そもそもこの世界にダンジョンが出来たのは邪神バアラがこっちの世界を乗っ取ろうとしてやったことなんだ。こっちの世界のことを向こうではエデンっていうんだけどダンジョンによって向こうの世界とエデンをつなげたんだよ』


キューンは小難しいことを続ける。


『でもおいらとおいらのかたわれのブラックドラゴンがいることで魔物は地上には出てこれないしこっちからも向こうの世界には行けないようになっていたんだ』
「ブラックドラゴン?」
『おいらと同じようにブラックドラゴンは卵として向こうの世界に転生していたはずなんだ。でもそのブラックドラゴンが邪神バアラに倒されちゃったのかもしれない』
「いやいや、言ってることがよくわからないぞキューン」


俺は高校にもまともに通っていないんだ。
俺の読解力をなめるなよ。


『だからねマスター、簡単に言うと向こうの世界でゲートキーパーの役目を果たしていたブラックドラゴンがやられちゃったんだよ。だから魔物が地上に出てこられるようになっちゃんたんだ』
「ブラックドラゴンっていうのはキューンの知り合いか?」
『ブラックドラゴンはおいらの親戚みたいなものだよ』
「親戚?」


初耳の情報ばかりで頭がパンクしそうなんだが……。


「じゃあこの状況はキューンの親戚のブラックドラゴンとやらが邪神バアラって奴に倒されたせいだってのか?」
『きっとそうだよ。それしか考えられないもん』
「キューンもゲートキーパーなのか?」
『そうだよっ』
「そうだよって……じゃあもしキューンもやられたらどうなるんだ?」
『おいらは最強だからやられないよっ』
キューンは自信満々に言い放つ。


「いや、まあそうだろうけど、仮にだよっ」
『うーん、仮にだけどもしおいらがやられたら邪神バアラがエデンに来れるようになると思う』
「邪神バアラって強いのか?」
『さあ? 会ったことないからわかんないや』
頭をぽりぽりかきながら能天気に言うキューン。こういうところはやはり魔物だな。
頭に付けたピンクのリボンがそのたびに揺れる。


「じゃあ魔物が地上に出てこなくなるようにするにはどうしたらいいんだ?」


このままでも俺は全然問題ないが父さんと義母さんが心配だ。
そう思い俺はキューンに訊ねた。


『それは簡単だよ。この青森県の恐山にあるランクAのダンジョンの最深階から向こうの世界に行って邪神バアラを倒しちゃえばいいんだよ』
「向こうの世界に行けるのか?」
っていうか向こうの世界ってなんだ?


『行けるよ。たしかエデンでは恐れる山のダンジョンって名前だったと思うけど、そこのボスを倒せばエデンから向こうの世界には行けるはずだから』
「そ、そうか」
相槌を打ちながら俺は父さんと義母さんを見た。


二人ともレベル1だからこの状況が二人にとって危険であることは否めない。
出来ることならすぐにでもこの状況をなんとかしたい。


「キューン」
『なあに、マスター?』
「俺はこれからその恐れる山のダンジョンに行ってくるよ」
父さんと義母さんのためだ。
背に腹は代えられない。


『じゃあ、おいらも行くよっ』
「駄目だ。キューンにはここに残って父さんと義母さんのことを守ってあげてほしいんだ」
『え~……』
「頼む。これはキューンにしか頼めないんだ」


自称最強のホワイトドラゴンであるキューン。
父さんと義母さんを任せられるのはこいつしかいない。


『う~ん……わかったよ。おいらここに残る』
「ありがとうキューン。ってことだから父さんも義母さんも外には絶対に出ないでくれよ。キューンと一緒にいてくれ」
「おう。よくわからんけど真琴も無理するなよ」
「私たちは大丈夫だから、真琴くんも気をつけてね」
「うん」


こうして俺は一人で恐山のふもとにあるランクAのダンジョン、通称恐れる山のダンジョンへと向かった。

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