第141話　斎藤春子VS小野寺祐樹

「では続いて第三試合は斎藤選手と小野寺選手の戦いです！　両者リングに上がってください！」
川尻さんのアナウンスで二人ともリングに上がる。

相対する二人。
斎藤はフード付きの白いローブを身にまとい手には指揮棒のような小さな杖を持っている。
一方の小野寺さんは三十代くらいの大柄な男性で黒いロングコートを羽織っていた。
ロングコートのポケットに両手を突っ込み不気味な眼差しで斎藤を見下ろしている。

「それではお二人とも準備はよろしいですね……では第三試合、始めっ！」

川尻さんの宣言で試合が始まった……が両者ともにお互いをみつめたまま動かない。

「ど、どうしましたかっ？　試合は始まっていますよっ」
マイクを通さず川尻さんが二人に声をかけると、
「春子ちゃんでしたっけ？　こちらからいってもいいですか？」
「……いい」
二人ともようやく口を動き出した。

すると、
「スキル、粉塵魔法ランク10っ」
小野寺さんが唱える。

その瞬間リングの周りを覆うように塵が舞い視界が悪くなってしまった。
塵の中に身をひそませる小野寺さん。
「ふふふ……」

だが斎藤は至って冷静だった。
斎藤は杖を掲げて、
「……スキル、召喚魔法ランク10」
予選で見せた魔法を発動させる。

直後、ぼんっという爆発音とともに斎藤の頭上に巨竜が出現した。
――エンシェントドラゴンだ。

エンシェントドラゴンは、

『グオオォォーッ！！』

と鳴き声を上げると両方合わせて十メートルはあろうかという翼を大きく羽ばたかせる。
それによって巻き起こる突風が粉塵を吹き飛ばした。
さらにその突風が小野寺さんをも襲う。

びゅおおぉぉーっ。
「あぁ～っ……」
どんっ。

あっけなく小野寺さんは場外に落ちてしまった。

「じょ、場外っ！　斎藤選手の勝利ですっ！」

こうして三人目の準決勝進出者が斎藤に決まったのだった。