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最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第92話 ダークマター

気付くと俺は巨大ロボット、ガルガンチュアとともに亜空間から抜け出ていた。


「佐倉さぁ~ん! よかったぁ~っ」


俺の姿を見て磯さんが駆けつける。


「本当に生きていたんですねっ」
「ええまあ。さっきまでダークライガーの腹の中というか亜空間というか、そんな場所にいました」
「あくうかん? よくわからないですぅ……でもそれならなんですぐに出てこなかったんですか? わたし死んじゃったと思ったんですからねっ」
怒っているのか少しだけ頬を膨らませてみせる磯さん。


「いや、出ようとは思ったんですけどなかなか上手くいかなくて……」
亜空間に閉じ込められた時の対処法なんて知らないし……。


「え? 転移魔法を使えばよかったんじゃないんですか? 佐倉さんて転移魔法を覚えているはずですよね、わたし佐倉さんのステータスボードで見ましたよ」
「あっ! そういえば……」
トラップボタンを利用してレベル上げをしていた時に転移魔法とやらを覚えていたんだった。


「……すっかり忘れてました」
転移魔法のことは失念していた。
そうでなければさっさと転移魔法を使って亜空間から抜け出ていたところだ。
磯さんは抜けているのかしっかりしているのかやはりよくわからない人だ。




「あ、それより俺のためにガルガンチュアとエクゾディアを使わせてしまってすいませんでした」
ガルガンチュアはともかくエクゾディアは激レアアイテムだったに違いない。
どこまでの願いを叶えられたかは今となっては謎だがもしかしたら磯さんの借金一億円を完済できるくらいの価値があったかもしれないのに……。


「いいんですよぉ。エクゾディアさんのおかげでわたしついさっきレベル99になりましたからぁ」
磯さんはにこにこと微笑みながら体を揺らす。


「えっ本当ですか?」
「はい。それにほら、これ見てください」
磯さんは背中に隠していた手を前に出した。
その手には漆黒の丸い玉が握られていた。


「なんですか、それ?」
「さっきの魔物さんのドロップアイテムですぅ。識別魔法で調べたらダークマターっていう名前でしたぁ」
「ダークマター……ですか」
「わたしの識別魔法では名前しかわからなかったのできっとこれもすごいレアなアイテムですよぉ」
と磯さんは言う。


レベルが上がった磯さんの現在の識別魔法のランクがどれほどかはわからないが、たしかにダークマターというこのアイテムはレアなにおいがぷんぷんする。


「はい、どうぞぉ」
すると磯さんがダークマターを俺に差し出してきた。


「え……な、なんですか?」
まさかこのアイテムを俺にくれる気なのか……いやいや、そんなまさかな。


「このアイテムは佐倉さんに差し上げますぅ」
そのまさかだった。


「いやそんな、受け取れませんよ。それは磯さんがダークライガーを倒して手に入れたものなんですから、磯さんのものですよ」
「でもでもぉ、佐倉さんのおかげでわたしのレベルは99になったんですからこれはそのお礼ですぅ」
ぐいぐいっと俺の胸にダークマターを押しつけてくる。


「駄目ですって。それは磯さんのものですっ。俺絶対に受け取りませんからねっ」
俺は手を後ろに回しこれを拒否した。


「むぅ~……佐倉さん頑固ですぅ」
「お互い様ですよ。俺はすでにエクスマキナを貰ってるんですからね……とにかくそれはもうしまってください」
「佐倉さんってばぁ……」


借金が一億円もある人からこれ以上レアアイテムを譲ってもらうわけにはいかない。
俺は磯さんから顔をそむけると心を鬼にして磯さんの言葉を無視し続けたのだった。




☆ ☆ ☆




「もう~……わかりましたよぉ。じゃあこのアイテムはわたしが貰っちゃいますからね。いいんですね?」
俺の無視作戦が功を奏し磯さんは渋々ながらダークマターを肩にかけたバッグの中にしまい込む。


「もしすっごく高く買い取ってもらえても知りませんからね」
「いいですよ」
俺は俺でエクスマキナというおそらくレアであろうアイテムを手にしているから金銭的な問題はない。
そのほかにもこのダンジョンでは合計三十以上ものアイテムを拾っているし充分な額になるだろう。


「じゃあそろそろ地上へ戻りましょうか」
「はい、佐倉さん」




二人で大部屋をあとにしてからふと振り返りみると俺とともに亜空間から出てきていたガルガンチュアの姿はもうどこにもなかった。

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