第83話　秘密の暴露

「い、磯さん、いつからそこに……？」
俺はステータス画面を閉じるとおそるおそる磯さんに訊ねる。
「っていうか俺のステータスボード見ました……よね？」

「はい」
こくんとうなずく磯さん。

「佐倉さんのレベル、24912って書いてありましたけどぉ……あれってどういうことですかぁ？」
「え、えっと、それは……」
「パラメータもすごい数値でしたけどぉ」
「あー、だからそれはですね～……」
「それとスキルの欄に書いてあったレベルフリーってなんですかぁ？」
「え……それも見てたんですか……？」
磯さん。意外と抜け目がない。

「もしかしてぇ、佐倉さんわたしに嘘ついてましたぁ？」
磯さんは首をかしげながらくりんとした大きな瞳でみつめてくる。
ちょっと怖い。

「は……はい。すいません」
磯さんの妙な迫力に負け俺は思わず頭を下げた。

「俺の本当のレベルは磯さんの言う通り24912です」

すると磯さんは両手をパンッと合わせ、
「なぁんだ、やっぱりそうだったんですねぇ。動画サイトのコメント欄に本当はレベル99じゃないんじゃないかって疑うような書き込みもありましたからね～。わたしももしかしてって思ってたんですよぉ」
にこっと笑う。

「磯さん、俺が嘘ついてたこと怒らないんですか……？」
「怒る？　わたしが佐倉さんにですか？　ふふふっ、わたしが佐倉さんに怒るわけないじゃないですかぁ。佐倉さんはわたしの恩人さんですよ」
「はあ……それはどうも」
つかみどころのない人だ。

「むしろ佐倉さんの秘密を知ってしまってわたしの方こそすみません」
そう言うと磯さんはぺこりと頭を下げた。

さらに俺の手を取って両手で優しくきゅっと握ると、
「でも安心してくださいね佐倉さん、わたし誰にも言いませんから」
俺を見上げる。

「本当ですか？　それは大いに助かります」
世間に知られて大騒ぎにでもなったりしたら平穏な生活が送れなくなる。
そんな事態はなんとしてでも避けたい。

「はい、信じてください。わたし口だけは堅いんですぅ」
にへら～と緩みきった笑顔を見せる磯さんは正直言ってあまり口が堅そうには見えないがこればっかりは本人の言うことを信じるしかないだろう。

「あっそうだ。佐倉さんの秘密を教えてもらったのでわたしも一つだけ秘密を教えてあげますよ。何か訊きたいことがあったらなんでも訊いてくださぁい」
「いえ特にないです」
「ええぇ～、そんなぁ～」
そう言うと磯さんはものすごいショックを受けたようにうなだれてしまった。

自分に興味を持ってほしかったのかな？
がっくりと落ち込む磯さんを前に俺は本当はどうでもいいのだが仕方なく質問をしてみることに。

「えっと、じゃあ……さっき借金がどうとかって言ってましたけどあれってなんのことなんですか？」
プライベートに立ち入りすぎかとも思ったがほかに訊くことも思いつかなかったのでそう磯さんに訊ねた。

「そのことですかぁ。う～ん、どうしようかなぁ～……」
と磯さんは人差し指をあごに当てもったいつける。

「どうしても聞きたいですかぁ～？」
「いえ、全然」と言ったらまたへこむんだろうな。
そう思い、
「はい、聞きたいです」
と返事をした。

「えへへ、じゃあ教えてあげますね。わたし実はぁ……借金が一億あるんです」

「…………はい？」