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最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第56話 父倒れる

「父さんが倒れた!?」


義母さんの言葉に思わず声が裏返る。


「どういうこと?」
『私もさっき連絡があって和真さんが会社で突然倒れたらしいの……すぐに救急車で病院に搬送されて今は緊急手術中よ。私はタクシーに乗って今病院に着いたところなのっ』
受話器の向こうで義母さんが懸命に話す。


「父さんが……」
『真琴くん、今どこにいるの? お願いだから帰ってきてちょうだい。ねっ?』
「……ごめん。今友達といるから、もう切るよ……」
『え、ちょっと。真琴くんっ!? 真琴く――』


プツッ。


俺は一方的に電話を切った。


「真琴様、何があったんですの? お父様がどうかされましたのっ?」
とマリアが心配そうな顔で俺を見上げる。


「父さんが倒れたらしい。今緊急手術中だってさ」
「えぇー! そ、それは一大事ですわっ! そういうことでしたら今すぐわたくし専用のジェット機で真琴様を病院にお連れいたしますわっ!」
「いや……いいよ別に」
「なんでですのっ!? お父様が大変なんですのよっ!」
マリアは自分の父親のことのように必死に声を上げた。


「俺、父さんとは喧嘩別れしてるから」
八か月前に大喧嘩をしてから父さんとはお互いに一度も連絡を取り合ってはいない。


「それに義母さんがついているはずだし、俺が行ったところでどうなるものでもないし……」
俺がいない方が二人にとっても気を遣わずに済むだろう。


「だからってそんなのおかしいですわっ、間違っていますわっ」
「いいんだよこれで」
「よくありませんわっ。もしわたくしのお父様が倒れたらわたくし何をおいても真っ先に駆けつけますわよっ。それが家族ってものではなくってっ」


真正面からの正論に俺はたまらずマリアを冷たく突き放す。
「うちの家族の話だ、マリアには関係ないだろっ!」
言ったあとにすぐ後悔したが時すでに遅く、
「んんーっ!」
マリアは顔をぶんぶんと横に振って、


「わたくしそんな真琴様は大大大っ嫌いですわっ!!」


涙ながらに大声で叫ぶと、きびすを返し走り去っていってしまった。
黒服たちも慌ててそのあとを追っていく。




だがマヤさんだけはマリアについてはいかなかった。
直立不動のまま無表情な顔で俺をじっとみつめている。


「……なんですか?」
「差し出がましいようですが、マリア様は養女なのです」
「はい……?」
マヤさんは唐突にそんなことを言い出した。


「マリアという名前ものちに付けられたものなのです」
「あの、一体何を……」
「マリア様は五歳までスラム街で孤児として暮らしていました。そんなマリア様を七年前当主様ご夫妻がお引き取りになられたのです。ですからマリア様はファインゴールド家の名に恥じぬよう精一杯頑張っていらっしゃるのです……当主様ご夫妻に喜んでもらおうと必死で」
「……」
……あのマリアにそんな過去があったのか……。
笑顔のマリアを思い返しながら思う。




「無礼を承知で申し上げますが家族を大切になさらないあなた様はファッキンくそ野郎です」
表情を変えず淡々とした口調で言うマヤさん。
だがその眼差しだけは鋭く強いものだった。




「ではわたしもマリア様のあとを追いますのでこれで失礼いたします」
そう言うと深々と一礼したマヤさんは長い髪をなびかせくるりと反転した。


「……ま、待ってくださいっ」
「なんでしょうか」


俺はマヤさんを引き留めた。
マヤさんが立ち止まりこちらを振り向く。


「……なんでそんな話を俺にしたんですか?」


俺の問いに一瞬宙に目線を飛ばしてからマヤさんが口を開いた。
「あなた様にネックレスを貰った時のマリア様のとても嬉しそうなお顔、わたしははじめて見ました。そしてあなた様に怒鳴った時の悲しげなお顔もはじめて見ました」


「……」
「わたしはマリア様にはいつも笑っていてほしい、ただそれだけです」
「……」
「申し訳ありません。これでは理由になっていませんね」
「……いえ」


マヤさんの言葉は俺の幼稚な考えをあらためさせるには充分だった。


「マヤさん」
「はい」


俺はマヤさんの目をしっかりと見据える。


「マリアに謝っておいてもらえますか。俺はこれから父さんのいる病院に向かいます」
「ご自分で謝られてはどうですか。そしてそのまま自家用ジェットで病院に向かわれては」
「今はマリアに合わす顔がありませんから。それにあんなこと言っておいてさすがに俺もそこまで図々しくはないですよ……今度マリアに会った時はきちんとおわびと感謝の気持ちを伝えるつもりです」
「……そうですか。かしこまりました」


かすかな笑みを浮かべてみせたマヤさんに別れを告げると俺はその足で青森へと引き返すのだった。

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