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最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第54話 帰還

「ではそろそろ戻りましょうか」


神代の号令で俺たちは地上に引き返すことにしたのだが真っ先に部屋を出ていこうとする海道に俺は待ったをかける。


「なんだよ佐倉。早く帰ろうぜっ」
「実はマリアとダンジョン探索していた時にこれをみつけていたんだ」
俺は不思議な袋の中から赤色の石を取り出してみせた。


「あっ、それ帰還石じゃないっ」
「ああ、そうだ」
それは長澤の言う通り帰還石だった。
帰還石とは割ると半径一メートル以内の者を地上へと帰還させるアイテムだ。


「佐倉いいもの持ってるじゃん」
「だろ。地下二十階から歩いて帰るより断然楽だぞ」
「でもそれを使ってもよろしいのですか? みつけたのは佐倉さんとマリアさんですよ。それに帰還石は結構レアなアイテムですが」
と神代。


「いいよなマリア?」
「もちろんですわっ。わたくし閃光の紅蓮団の皆様と一緒に帰還したいですわっ」
「ほら、マリアもこう言っていることだしこいつを使ってみんなで帰ろう。な?」
「ふっ、あなたという人は……ではお言葉に甘えるとしましょう」
リーダーの神代が首を縦に振ったことでほかのメンバーもこれに同意した。




「じゃあみんな、俺の一メートル以内に集まってくれ」
みんなを周りに呼び寄せると、
「これで赤い影のダンジョンともお別れだ。それっ」
俺は帰還石を地面に叩きつけ割った。


直後赤く半透明な球体が現れ俺たちを包み込むと次の瞬間目の前が真っ白になり気付けば地上へと戻っていたのだった。




☆ ☆ ☆




地上には未だダンジョンの入り口前で大勢のプレイヤーたちがひしめき合っていたが閃光の紅蓮団が帰還石で戻った姿を見るなり、
「「「おおーっ!」」」
と歓声が上がった。


大勢が周りを取り囲みプレイヤーたちからは矢継ぎ早に質問が投げかけられる。


「神代さん、ダンジョン攻略したんですかっ?」
「海道さん、ボスは強かったですかっ?」
「紅子さん、レアアイテムみつけましたかっ?」
「蓮華ちゃん、今日も可愛い~っ」


「はい。赤い影のダンジョンは僕たち閃光の紅蓮団とこちらのマリアさんとで攻略してきました」
神代が代表して答えた。


「マリアさん? ってそこの金髪の美少女のことですかっ?」
「っていうかマリアちゃんってあのマリアちゃんじゃん!」
「本当だっ。モデルのマリアだっ!」
「マリアちゃんこっち向いて~っ」


気付けば神代たちもマリアも大勢のプレイヤーからスマホを向けられ写真や動画を撮られている。
俺だけが蚊帳の外。


とその時一人の男性が俺を見て声を上げた。
「なあ、マリアちゃんの隣の奴は誰だ?」


その声を皮切りに、
「誰だあいつっ?」
「さあ? お前知ってるか?」
「いや。誰だろうな」
「なんで閃光の紅蓮団と一緒にいるんだ?」
とプレイヤーたちは口々にささやき合う。


さてとそろそろ俺は退散した方がいいかな。


「神代、俺もう行くよ。金はあとでここに振り込んでおいてくれ」
「あ、はい。わかりました。ありがとうございました」
口座番号の書いた紙を渡すと神代が俺に一礼した。


するとそれを見ていたプレイヤーたちの態度が豹変。


「あっ、あいつ今神代様を呼び捨てにしたわよっ!」
「神代様に謝りなさいよっ!」
「あいつ金貰う気だぜっ!」
「何もしてないのに図々しいぞっ!」


「恥ずかしくねぇのかっお前っ!」
「卑怯者っ!」
「金返せっ!」


俺に向かって罵声が飛んできた。


ふぅ~……これだから実社会は面倒なんだ。
やっぱりダンジョンに潜っていた方がずっと気が楽だ。


金返せはさすがに違うだろと思いながら俺は飛び交う罵声の中その場を立ち去ろうとした。


とその時だった。
「黙れぇっ!!!」
海道が声を荒らげたのだ。


「よく聞けお前らっ! こいつはおれたちの仲間だ、おれの命の恩人だっ! いいか、次一言でもこいつの悪口言ってみろ、おれがそいつをぶん殴って地球の果てまで吹っ飛ばしてやるからなっ! 覚えとけっ!!」


海道の怒号を目の当たりにして大勢のプレイヤーたちは顔を見合わせ静まり返ってしまう。


「海道、お前……」
「ふんっ。別に佐倉のために言ったわけじゃねぇぞ。おれはああいうのが大っ嫌いなだけだからなっ」
「そっか……じゃあまたな、海道」


俺が帰ろうとすると海道の啖呵がよほど効いたのだろう、周りに出来ていた人の波が自然と割れていった。
そのまっすぐに開いた道を俺は海道に感謝しつつも悠然と立ち去るのだった。

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